初演から100年を祝して取り組まれたビシュコフ&ウィーン・フィルの手練を聴く
フランツ・シュミットの交響曲第2番が初演から100年を迎えた2014年、ビシュコフは各地で集中してこの作品に取り組み、さらにその翌年にもウィーン・フィルとのツアーに本作を選んだ。当録音はその合間に制作されたものである。ミトロプーロス、ラインスドルフ、ライテル、ネーメ・ヤルヴィ、ルイジらに次ぐCDリリースで、ウィーン・フィルにとっては3度目、セッションでは初となる。
交響曲第2番の魅力は、細やかに書き込まれたテクスチャーと楽想の多様な展開にある。R.シュトラウス風な第1楽章、ヴァラエティ豊かに容貌を変転する第2楽章、バッハ風に始まり、次第に濃厚・壮麗に拡大するフィナーレ。主題の明快さやブルックナーにも匹敵するブラスの輝かしい力感などを考えると、もっと人気が出てよさそうなものだ。
ビシュコフの演奏は、全体としては恰幅よく鳴らしつつノーブルさをキープしたもので、16分音符のさざ波のような音型が絡み合う第1楽章冒頭では、落ち着いたテンポで緩やかな流れを表し、ウィーン・フィル持ち前の美観を活かしている。その少し先、トゥッティのユニゾンに突入する際に置かれた16分休符のゲネラル・パウゼをここまでたっぷりと明確に扱ったのはこれが初めてだろう。6'41"辺りからのシュトラウスばりの甘美な歌の部分などウィーン・フィルの独擅場でもある。
変奏曲スタイルで書かれた第2楽章は、一層の注目ポイント。素朴な主題の後に繰り広げられる10の変奏の多彩さと進取性、またそれらの個性を巧みに描き分けてゆくビシュコフ&ウィーン・フィルの手練は大きな聴きどころである。
最後に、当盤のブックレットの充実を指摘しておきたい。作品についての知識と分析力をしっかりと持った書き手による解説と、シュミットの主要作品の演奏史を掲載して資料的価値を何倍にもいや増す制作者の姿勢は高く評価されるべきだ。録音データすらあやふやなダウンロード音源など、このように丁寧に作られた国内盤には未だ足元にも及ばないと思う。