長年連れ添ったあの人の元を離れ、4人は新たなパートナーと共に次のステージをめざして歩を進めた。悲哀や苦悩やバカ騒ぎ――〈Getaway〉の果てにはさらなる成功が待っているのか、それとも……
レッド・ホット・チリ・ペッパーズの新作『The Getaway』がついに完成した。ジョン・フルシアンテの脱退後、ジョシュ・クリングホッファー(ギター)を迎えて新たなスタートを切った『I’m With You』から5年ぶりのアルバムとなる。この間、彼らは2011年の〈サマソニ〉出演も含めて世界中をツアーで回っただけでなく、フリー(ベース)は初のソロEP『Helen Burns』を発表し、ロケット・ジュース・アンド・ザ・ムーンやアトムス・フォー・ピースの一員として活動。さらに、ブライアン・フェリーやデイム・ファンクの作品にも顔を出した。また、チャド・スミス(ドラムス)は自身の率いるチキンフットをはじめ、サミー・ヘイガーやジェイク・バグなどのアルバムに参加し、ジョシュもティナリウェンやエミール・ヘイニーらと共演している。

酷かったらやめてやる!
もっとも、前作から5年もかかったのは、そうした課外活動が理由ではない。彼らは2014年の時点ですでにアルバムの準備を進め、20~30曲もの新曲を書き上げていたという。そんな折、デンジャー・マウスから〈一緒にレコーディングしたい〉というオファーが舞い込む。そこでメンバーは過去5枚のアルバムを共に制作したリック・ルービンと袂を分かち、デンジャー・マウスをプロデューサーに起用。先日LA郊外のマリブで取材に応じてくれたフリーはこう振り返る。
「新曲はすでにたくさんあったのに、デンジャー・マウスは〈それも少しは使うけど、スタジオで新しく曲を作ろう〉って言ったんだ。彼と一緒に演奏してみるまでは、上手くいくかも、どんなサウンドになるかもわからなかった。〈とりあえず1週間スタジオに通って、酷かったらやめてやる!〉と思っていた。彼が優秀なのは知っていたけど、俺たちがやりたいことをやれるように彼が歩み寄り、俺たちのほうも彼に歩み寄ったりしたら、互いの実力を失って弱い音になってしまうんじゃないかと不安だったんだよ。でも実際は彼も俺たちも持ち味を発揮し、2倍強力なアルバムを作ることができた。俺たちがずっと持ち続けてきたパワーや温かさ、即興性、4人の演奏の相互作用といった魔力はすべて維持できて、そこに彼がより新しい要素を足してくれたんだな」。
レッチリの作曲方法は、83年にLAで結成された時から基本的にはずっと同じだ。まずはリハーサル・スタジオに集まって全員でジャム・セッション。そこで曲を書き上げてからレコーディング・スタジオに入り、ライヴ形式で録音する。ジャムから生まれる自然発生的な展開や現場のノリがそのまま音源になっている、というのが彼らの魅力であった。だが、今回はやり方を変え、レコーディング・スタジオで曲を築いていったのだとか。
「スタジオでの曲作りは制作過程がスロウダウンするから、各パートをじっくり考える時間が取れた。そのおかげでいままでにない発想が沸いたよ。例えば、“The Hunter”っていう曲があるんだけど、俺は前作からピアノでも作曲するようになったんだ。ピアノはずっと弾いていたけどな。ピアノで曲を作った時は、大抵みんなに弾いて聴かせる。〈バビデバビデバビデバー!〉ってね。それで〈いいね。バンドで演奏を試してみよう〉ってことになったら、今度はそれをベースで弾いて、ジョシュが俺のベースに合わせてギターを演奏し、良い曲になるかどうかいろいろ試すんだよ。でも、ピアノから離れたことで、その要素は失われてしまう。だけど今回は最初に俺がピアノを演奏したら、それがもうレコーディングされていて、そこに各パートを重ねていったんだ。だから当初のアイデアのエッセンスが失われなかったんだよ。それによって、昔から俺たちのなかにあったのに、曲にすることがなかったような新しい部分を引き出せたと思う。こうしたプロセスを踏んだ後、全員揃ってライヴで演奏したのさ」。