サンプリング音楽の可能性を広げんと、日々研究を続ける変態たちはどのような報告を上げているのか!?

MATMOS Ultimate Care II Thrill Jockey/Pヴァイン(2016)

ジョボジョボと水を溜めるところから、洗濯槽の中で何が跳ね回っているのかソワソワしてしまうようなトライバル・ビート、シュコッ! タプンッ! ギュインッ!とイコライジングされた音の粒、物悲しい脱水音の後にふたたび躍動する謎の瞬間――マトモスがハウシーに紡いだ洗濯完了までの実況盤!

 

ONEOHTRIX POINT NEVER Replica Software(2011)

大企業のCMを大量にサンプリングした怪作。かねてよりDJプレミアからの影響を公言してきたOPNではあるが、各パーツに新たな意味やグルーヴを与えるのではなく、その機能を剥奪して亡骸を展示。富の集中をヴェイパーウェイヴ時代の手法で批判し、ロビンフッド・セオリーを披露してみせた。

 

HORROR INC. Briefly Eternal Perlon(2013)

マイクロ・サンプリングで鳴らしたアクフェンは、このオルター・エゴでジャズ・バンドやオーケストラの素材を十二分に活かしながら、コシのあるストレートなカットアップ・ハウスを振る舞って見事に復活! なのだが、アイスホッケーの音に硬質なディレイを塗したりしていて……やっぱり好きなのね。

 

MICACHU Jewellery Rough Trade(2009)

ハーバート博士もプロデュースで参加した一枚。日用品を片っ端から叩いてローファイなアフロビート(風)を構築し、そこに電動歯ブラシでピッキングしたようなズグォゴゴというエグいリフを乗せ……レディオ・ボーイ期の博士をも凌ぐ暴れぶりだ。パッと聴きはポップでカラフルだけど、毒気たっぷり。

 

Yosi Horikawa Vapor First Word(2013)

日常の音をアートに変える日本代表のサンプリング研究家。水滴のポチョンという響きがエンドレスに並んでいたり、微細で非音楽的なプチプチ音が不規則な軌道を描いてビートをガイドしたり。特に鉛筆で書き殴った音や紙の摩擦音の余韻を夢見心地のエレクトロニカに溶かし込んだ“手紙”は圧巻。

 

THE WEEKND Kiss Land X.O./Republic/ユニバーサル(2013)

ジョージ・ベンソンシカゴ・ハウスの諸作など、研究素材として長年愛されてきた〈喘ぎ声〉。本作収録の“Pretty”で使われたのは日本のAVだ。ディストピアな世界観のなか、〈ん~、イク~〉と言わせておいて、ほくそ笑みながら淡々と歌い続ける性癖の悪さたるや。それでも博士の“Is Coming”よりは健康的!?