©古溪 一道

メジャーへの挑戦を叩き付ける!? 新曲含む、新作への楽しいヒント

 ハイエイタス・カイヨーテは来日公演の中では常に新曲を披露している。その中には、これまでの作品とはまた違ったアプローチのものがあり、傑作『Choose Your Weapon』でさえ、通過点であったように思わせてくれるものばかりだ。ツアーが終わったら、メルボルンに帰ってじっくりと制作に取り掛かりたいという彼らだが、作曲は意外と進んでいて、すでに動き出している感さえある。その中から2曲だけ、新作のヒントとして教えてくれた。

2016年のライヴ映像

ネイ・パーム「“Chivalry Is Not dead”という新曲をライヴでよくやっているんだけど、それはメジャー・レーベルに対して疑問を投げかけるような曲。メジャーにいると私たちみたいな8分の曲を書いて持っていくと、〈ラジオに合わせた3分半の曲が欲しい〉とかいろいろ注文を付けられたりするんだよね。だったら、それに対しての挑戦ってことで敢えて3分半の曲を自らすすんで作ってみたわけ。ちなみにテーマはセックス。インスピレーションは『パープル・レイン』のセックス・シーンを初めて見た時の印象かな。あと、もう一つのインスピレーションはフランスの女優Isabella Rosselliniの映像作品『Green Porno』。これはYouTubeで見られるよ。全然セクシーじゃないパペットみたいな恰好をしたイザベラが作り物の動物王国の中で動物たちがどうやって子供を産むかとかを説明するファニーで教育的なショート・フィルムなんだけど、実はテーマはセックスで、すごくシニカルで面白い。メインストリームのポップ・ミュージックのテーマって結局ほとんどセックスだから、これはいいなって思って。だから、自分たちなりのセックスの歌を作ってやった感じかな。からかってやろうみたいな気持ちもあるかもね」

 彼ららしい遊び心のあるひねったコンセプトが面白い。では、音楽的にはどういう曲があるのかと聞くとリズム・セクションの二人が答えてくれた。

ポール・ベンダー「サイモンと一緒に書いた長いメロディックな曲があるんだ。シンセとベースで同じノートをひたすら交代に弾いていく曲なんだけど、ずっと交代に弾いていくと曲が逆回転したように聴こえてくるように作ってある。まるで新しい楽器を導入したように聴こえるんだよ」

ペリン・モス「僕は同じ曲でエレクトロニックな要素を担当してるんだけど、自分のパートのインスピレーションはバスタ・ライムス“Gimme Some More”のラップだね。まだ小箱でしかやってなくて、フェスとかでは披露してない。もう少しブラッシュアップしたいね」。すでにこの時点で期待は膨らむ。