ハコイリ♡ムスメ
ハコいっぱいに季節の彩りを詰め込んで全国デビュー!
女優志望の女の子たちが集まって2014年夏にスタートし、今年4月からは年少メンバーの3名を加えて活動中のハコイリ♡ムスメ(通称:ハコムス)。カヴァー曲をレパートリーの中心とするコンセプトはアイドルネッサンスにも通じる点ながら、ハコムスが歌うのは、おニャン子クラブ、乙女塾、チェキッ娘など、主に80~90年代の純情可憐なアイドル・ポップ。メンバーの親世代が慣れ親しんだような、現代のアイドル・ソングとは世界観の異なる楽曲をパフォーマンスしながら、彼女たちは可憐さと個性を磨き上げてきました。そして今回、音楽ライターの南波一海が主宰するタワレコの新レーベル=PENGUIN DISCから初の全国流通盤となるシングル“ハコいっぱいのプレゼント”をいよいよリリースです!
――ステージでカヴァーしているのは、ふだん聴いているような楽曲とは違う世界観を持ったものばかりですよね。
鉄戸美桜「ハコムスを始めるまでは聴いたことのない曲ばかりだったんですけど、親が車で昭和の曲をよくかけていたので、雰囲気はすぐに受け入れることができました」
我妻桃実「どこか懐かしいというか、馴染みやすいっていうか、身体のなかにすんなり入ってきました。80~90年代のアイドル・ソングってテンポもそこまで早くないし、伝えたいことを直接的な表現で言葉にするのではなく、聴いてる人にその意味を噛みしめてもらうような、そういう曲なんだなって」
神岡実希「歌詞を聴きながら情景を想像できるのも楽しいし、当時の曲は、ヴォーカルもあまり整えすぎず、歌っている人のそのままが収まっている感じがするところもイイなあって思います」
阿部かれん「すごく可愛いって第一印象でした。可愛いものをさらに可愛らしく歌ってる、〈THE アイドル〉っていう感じですよね。可愛さを究めるみたいな意味で王道のアイドルだなって思うし、ハコムスがめざすのは、そういう〈アイドルの原点〉なんだなって思っています」
吉田万葉「キュンキュンしちゃうような曲がいっぱいあるんですけど、最初はあまり可愛く歌えなかったんです。まだ子どもの声なので、そういう歌に向いてないのかなって。でも、レッスンしていくうちに、可愛らしく柔らかい歌い方も覚えてきたので、どんどん好きになりました」
星 里奈「振付を入れてもらって、歌って踊ってるうちに、身体でだんだん曲の良さとか物語の深さがわかってきて。踊っていて楽しいですし、いまのアイドルさんの曲よりも当時のアイドルさんの曲に馴染んじゃってます」
井上姫月「私はアイドルが大好きで、乃木坂46さんがホントに大好きなんです。なかでも“ガールズルール”みたいな明るい曲が好きだから、80年代とか90年代のアイドルの曲を最初に聴かせてもらったとき……おとなしい曲が多いなって思ったんです(笑)。苦手かな?とも思ってたんですけど、ちゃんと聴きはじめたら〈いい曲!〉ってなりました」
――今回のシングル“ハコいっぱいのプレゼント”に収録されている曲はすべてオリジナル楽曲ですけど、やはりそういった往年のアイドル・ソングの世界観を受け継いだものになっていますよね。
姫月「まず、〈ハコいっぱい〉って可愛いなあって。題名を見ただけで、ハコの中身はなんだろう?って思いました。歌詞もいまはあまり使わないような言葉が出てきて」
桃実「〈センチ〉なんて言葉を聞いただけでキュンときちゃいますよね」
姫月「最初聴いたとき、〈センチ〉って何cmなんだろう?って。季節が短いっていう意味なのかな?って」
かれん「(笑)。あと、〈おしゃべり会〉とかね。いまだと〈女子会〉って言うんだろうけど、〈おしゃべり会〉って可愛い」
里奈「本当の〈箱入り娘〉が使ってそうな言葉」
実希「馴染みのない言葉が歌詞に出てくると嬉しくなります」
姫月「私こんな言葉知ってるんだよって、友達に自慢したくなる(笑)」
美桜「“ハコいっぱいのプレゼント”は初恋の歌になっていて、クリスマスに告白するっていう、それまでのことを描いてるんですけど、初恋ならではのウキウキだったりドキドキだったりっていう感情を込めて歌いました。聴いてても歌ってても楽しくなる曲ですね」
――カップリングの一曲“乙女はびっくり箱”も可愛らしくて。〈ごきげんいかがですか〉で始まって〈こころがトキメく 古き良き時代へ〉で終わる、ハコムスからの〈ごあいさつ〉的な曲ですよね。
姫月「私たちが入ってから初めてのオリジナル曲だったから、特別だし、最初に私が歌うって言うことでも、特別な曲です」
かれん「自分のパートには〈可憐〉という歌詞があるので、そこは愛着が湧きますね」
美桜「途中でセリフが入ってくるんですけど、それは本番前の楽屋での会話をイメージして書いてもらったものなんです」
万葉「“ハコいっぱいのプレゼント”とはまた違った可愛らしさがありますね」
かれん「振付でお人形のようなポーズをするところがあって、びっくり箱というかおもちゃ箱みたいな感じです」
里奈「曲のすべてで〈これがハコイリ♡ムスメ〉っていうのを感じてもらえると思います」
桃実「歌っていて気持ちがすごく明るくなるので、ライヴの最初で歌うのにぴったりだよね」
――カヴァーのセレクトであるとか、独自のコンセプトで個性とアイドル偏差値を上げてきた皆さんですが、当面の目標はどんなことですか?
美桜「AKIBAカルチャーズ劇場でやっている定期公演を常に満員にして、その次は違う会場でもワンマンライヴをして満員にしてみたいなって思ってます」
かれん「日比谷公会堂でやりたいです!」
姫月「大学生とかになってアイドルを卒業しちゃう人もいるけど、ハコムスは乃木坂さんみたいにそれ以上の年齢になってもやれるグループにしたいんです。そうなると、私、あと10年ぐらいアイドルできるの。だから、お姉さんたちにもがんばっていてほしい」
美桜「うん、ありがとう(笑)」
ハコムスが改めて提示するアイドル・ポップの品位
今回が初の全国流通作品となるハコムス。実はオリジナル曲のシングルもすでにリリース済み(現在は入手困難)ですが、それと並んでライヴの核となっているのは、季節ごとにセットリストの変わる往年のアイドル・ソング・カヴァーであります。例えば現時点で披露している〈2016 秋冬曲〉だと、斉藤由貴の“自転車に乗って”(86年)をはじめ、河合その子“午後のパドドゥ”(85年)や福永恵規“風のInvitation”(86年)、ゆうゆ“−3℃”(87年)といったおニャン子クラブの派生曲、また、いまも根強い楽曲支持のあるQlairの“夢見るヴァイオリン”(93年)、さらにはチェキッ娘の“あたしの靴あなたの靴”“大好きな恋”(共に99年)、新しめではアイドリング!!!“レイニィガール”(2009年)といった振り幅で楽曲が選ばれています。
これまでの持ち曲を振り返ってみると、80年代半ばからのおニャン子クラブ系列、90年代前半の乙女塾(CoCo、ribbon、Qlair)、そして90年代後半のチェキッ娘、2000年代のアイドリング!!!といった顔ぶれの楽曲がメインになっている模様。こうした先達に共通するのは、当時メディア主導でコマーシャルな支持を獲得しただけに、レア・グルーヴ感が希薄なこともあって明確に再評価されづらいものたち、という点でしょうか。また、〈ディスコ〉や〈シティー・ポップ〉などを至上とするタイプの〈良曲〉観とはまた視点が異なるため、単に良質のポップスというだけでは見過ごされてきたのかもしれません。
その意味でもハコムスをきっかけとして先達の原曲に触れることもお勧めしたいですし、そこにある品格や奥ゆかしさに何か感じるものがあれば、ハコムスがオリジナル曲でも追求しようとしている歌世界も違って響いてくることでしょう。 *出嶌孝次