ピアノとリスナーのつながりを深める優しき続編

 家で流れるピアノの音色が大好きで、幼少期から自発的に弾き始めて夢中になった。大人になった今、その魅力を「ピアノは音がすぐに減衰し、消えていく儚さにある」と言う。それをより多くの人に伝えたいとの熱意が新作『Piano Love II』に詰め込まれている。

大井健 Piano Love II キング(2017)

 大井健のキャリアはユニークだ。10歳頃からドイツ、英国でピアノを学び、「日本の音楽教育も受けてみたい」との思いから国立音楽大学付属高校へと進学、大学卒業まで「クラシックマニアの人生だった」。転機はオペラユニット、レジェンドの伴奏を務めたことだった。オペラの枠にとらわれない彼らの選曲が新鮮であり、「より多くの方をオペラハウスに誘うためのコンサート」というコンセプトに共鳴し、観客が楽しむ姿に心動かされた。そして、自らもピアノで実践したいとの考えで制作されたのが2015年発表の作品『Piano Love』だった。新作『Piano Love II』は、続編になる。

 「前作からのスローなイメージを踏襲しつつ、ジャンルも時代も多岐に渡る選曲で、鍵盤男子というユニットを組む仲間であり、同世代の中村匡宏君が作曲した《PIANISM》なども演奏しています。この作品でピアノに興味を持ってもらえたら、という思いはもちろんありますが、それ以上に聴いた人が癒されたり、明日への活力が沸いたり、となったら嬉しいですね」

 前作に続き、ショパンドビュッシーがありつつ、ディズニー映画『アラジン』の主題歌やアンドレ・ギャニオンジョージ・ウィンストンのヒット曲を奏でる。

 「ギャニオンとウィンストンは、メロディがとても魅力的で、それをクラシックの作曲家のように壮大かつ複雑に構築していく楽曲構成にはせず、素直にそのまま表現しています。その楽曲をクラシックのタッチで奏でることに、僕自身が新鮮味を感じています。他に倉本裕基さんの《希望の明日へ》も弾いていますが、ピアニスト&コンポーザーの楽曲にはリスナーに寄り添うような優しさがあって、そこが好きですね」

 アルバムの冒頭を飾るのは自らも出演しているスマートフォンのCMのテーマ曲である《VOICES》のピアノソロヴァージョンだ。

 「僕が出演する前からテーマ曲になっているものなので、まず作曲した橋本竜樹さんにピアノ用にアレンジしていただき、さらに今回アルバム用に中村君にリアレンジしてもらいました。ピアノは、88鍵あって、たくさんの音が奏でられる利点が存分に引き出された楽曲であり、CMでもあったと思います。先ほども言ったように、僕はジャンルを越えてピアノの魅力をもっと広めたい。今回のアルバムでそのことに少しでも近づくことができるのなら、とても嬉しく思います」

 


LIVE INFORMATION

Piano Love Concert Tour 2017
○3/14(火)会場:東京オペラシティリサイタルホール(完売)
○4/14(金)会場:電気文化会館 ザ・コンサートホール
○4/23(日)会場:FFGホール
○5/12(金)会場:札幌教育文化会館小ホール
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