バッティストーニ&東京フィル、新鮮な声で祝うめぐろパーシモンホール15周年
昨年10月、東京フィルハーモニー交響楽団(東京フィル)の首席指揮者に就いたアンドレア・バッティストーニは今年(2017年)でようやく30歳、イタリアきっての若いマエストロである。日本、そして東京フィルとの電撃的な出会いは2012年、24歳の時に起きた。東京二期会がヴェルディのオペラ『ナブッコ』の指揮者として初めて日本へ招き、ピットに入った東フィルと「恋」におちた。翌年からは定期演奏会をはじめとする東京フィル主催公演の指揮台にも頻繁に立ち、関係を深めてきた。
今でも鮮明に覚えているのは、2014年1月の共演。予定していた指揮者だけでなく、ピアニストまでが来日できなくなった急場をバッティストーニ、清水和音が救った時である。曲目は当初予定のままだったが、ガーシュインの《ラプソディー・イン・ブルー》、ドヴォルザークの《交響曲第9番『新世界から』》の2曲を公開の場で振るのは初めて、清水にとってもガーシュインは新しいレパートリーだった。結果は大成功。新鮮な風を吹き込み、グルーヴ感に満ちた演奏を繰り広げた。終演後、清水は「バッティストーニは天才だ、早く常任指揮者か音楽監督にするべきだ」と熱く語っていたが、2年9ヶ月で現実になった。
2015年12月には日本の歳末恒例、ベートーヴェンの《交響曲第9番『合唱付き』》に挑み、日本コロムビアがライヴ盤を制作・発売した。目にも止まらない速さばかりが話題を呼んだのは、バッティストーニとして、心外だったのではないか? 確かに快速だったが、翌年に指揮した《第5番『運命』》ともども過去の名演奏の情報蓄積、ドイツ音楽の王道といった先例にあえて背を向け、作曲家でもある自らの目で一から楽譜と向き合い、かなり深いところまで分析した結果のテンポ設定だ。9作それぞれに、少しずつ異なる実験精神をこめ、交響曲の領域を拡大していったベートーヴェンの創作精神の「熱さ」をはっきり、現代によみがえらせていた。速くても粗くはなく、細かい部分にも血が通っている。
東京都目黒区の公共ホール〈めぐろパーシモンホール〉の開館15周年に際し「あの」、バッティストーニ&東京フィルの「第9」を再び生で聴けるのは、素晴らしい体験に違いない。それぞれがオペラの大舞台で華々しい成果を上げる美声の持ち主で、オーケストラ演奏会でも人気の4人が独唱を担い、公募の〈めぐろ第九合唱団〉と共演する。15年前のオープニングを飾ったのが目黒区在住で芸術院会員だった2人の巨匠、若杉弘(指揮)と園田高弘(ピアノ)によるベートーヴェンだったことを思えば、隔世の感もひとしおである。
LIVE INFORMATION
めぐろパーシモンホール開館15周年記念 めぐろで第九2017
○9/24(日)15:00開演 会場:めぐろパーシモンホール 大ホール
※チケットは完売しました
【出演】 アンドレア・バッティストーニ(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団
ソリスト:髙橋絵理(S)富岡明子(MS)与儀 巧(T)青山 貴(Br)
混声合唱:公募によるめぐろ第九合唱団(合唱指導:泉智之)
【曲目】ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」序曲Op.84 ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 Op.125「合唱付き」
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