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彩りと勢いを見せるポッセ・カット

 楽曲自体は2016年の主催イヴェント〈AVALANCHE 6〉をきっかけに制作され、Soundcloudにラフ・ミックスが公開されていたもの。SIMI LAB(RIKKI、MARIA、DyyPRIDE、OMSB、JUMA、USOWA)にTHE OTOGIBANASHI'S(in-d、BIM)、そしてPSG(PUNPEE、GAPPER)の10名がマイクを回すオールド・スクール作法のディスコ・ラップだ。個々が軽快なフットワークで迫るなか、残念ながら先頃グループ離脱を表明したDyyPRIDEの参加も意義深いものだと言えるだろう。

増田「もともとポッセ・カットが好きで、SUMMITでもいつかやりたいとは思ってましたけど、きっかけはOMSBのビートですね。『Think Good』のリリース・パーティーを2年前にUNITでやったんですけど、そのスタジオのリハの時にOMSBが新しいビートをかけてて、今回のこのトラックを耳にしたんですよね。その時にピンときたというか、どんな色のラップも合いそうだと思って。〈これ、誰にも渡さないで〉っていうのだけ言ってたよね?」

OMSB「そうっすね。厳密に言えばビートはもっと前からあって、2014年に石川で掘ったレコードを使ったのは覚えてます」

増田「基本的にテーマはなくて……レーベルの人間が〈レーベルを讃えろ〉なんて言うのも恥ずかしいんで(笑)、普段はみんなストイックに音楽やってるから、こういう時くらい〈遊びで楽しもう〉ぐらいの軽いノリでそれぞれのカラーを出してもらえたらいいなと思ってました」

OMSB「おもしろくまとまったかなと思いますね。一応プロデューサーってことでやらせてもらったんですけど、意見を出してくれる奴もけっこういたし、そういう作り方をすること自体があんまなかったんで、勉強にもなったというか」

 シングルにはC.O.S.A.とBLYY(CLAY、AKIYAHEAD、Dzlu、DMJ、alled、DJ SHINJI)、TWINKLE+が主役となる〈吐血MIX〉も収録(OMSBも新録ヴァースで参加)。表題がポッセ・カットの古典である大神“大怪我(輸血MIX)”へのオマージュであることは言うまでもないが、こちらは総じて雄々しい語り口が黒光りし、DJ SHINJIの無骨なスクラッチもカッコいい出来映え。レーベルの備えた彩りと勢いを2ヴァージョンに渡って賑やかに見せつける仕上がりとなった。

 この後には周期的にもそろそろ新しい展開が期待されるSIMI LABメンバーたち、BLYYやTHE OTOGIBANASHI'S、そしていまもってSUMMITからのアルバム作品を届ける気配のない(?)PSG組に至るまで、各々の次なるリリースを期待せずにはいられない。多くの山々にそれぞれの峰がそびえるシーンであるが、少なくともひとつの頂上がここにあるのは間違いないだろう。

 

SUMMIT前夜の作品。

 

OMSBとBimが客演しているJAZZ DOMMUNISTERSのニュー・アルバム『Cupid & Bataille, Dirty Microphone』(TABOO)、PUNPEEとGAPPERが客演しているMELのニュー・アルバム『LIGHTS ON THE PLANET』(THE OTHER COLONY)

 


SUMMIT作品を語るうえで欠かせないのが独特のヴィジュアル。その世界を作り出す一人がSIMI LABのメンバーでもあるMA1LL(写真)だ。クルーやレーベル作品に加え、OKAMOTO'Sらのアートワークを手掛け、APPLEBUMのアイテムデザインなども手掛けている。また、映像面ではCreativeDrugStore所属のHeiyuuが要注目。OTGの諸曲はもちろん“Theme Song”のMVも彼の作品だ。

 


Reaching the SUMMIT

★Pt.2 VaVa『low mind boi』
★Pt.3 C.O.S.A.『Girl Queen』
★Pt.4 CDで追うSUMMITのディスコグラフィー