オリジナル・アルバムで振り返るKAKUBARHYTHMの15年(その2)

MU-STARS BGM LP KAKUBARHYTHM(2009)

サンプリング・オリエンテッドな前作のテクスチャーを踏襲しつつ、打ち込みによってより自由に組み上げたトラックを展開するセカンド・フル・アルバム。ダフト・パンク流儀のエレクトロも煌びやかなハウスも取り揃えており、ブレイクビーツに取り憑かれた者ならではのダンス・ミュージック解釈が楽しい。  *澤田

 

YOUR SONG IS GOOD B.A.N.D. KAKUBARHYTHM/ユニバーサル(2010)

南国ダンスな面のみならず、パンキッシュな側面も打ち出した前作『THE ACTION』の勢いを引き継ぎつつ、各メンバーの音楽的趣向を多角的に描き出したメジャーからの3作目。ジャケに表現されているように、拡散しつつあったバンドの方向性をそのままパッキング。バンド史上もっとも振り幅の広い作品となった。  *大石

 

イルリメ 360° SOUNDS KAKUBARHYTHM(2010)

アッパーなテクノにフロア実況の如きリリックを乗せた“WE ARE THE SOUND”、シティー・ポップ的な意匠による“トリミング”のセルフ・カヴァー、KIRIHITOをサンプリングしたメロウ・ファンク“HELLOWME-LLOW”ほか自由に拡散する5曲入り。以降のイルリメは(((さらうんど)))など新たなスタイルの活動へ。  *澤田

 

キセル KAKUBARHYTHM(2010)

音数をギリギリまで絞り、エレクトロニックな要素も融合。余白の部分を含めて音は細部まで丁寧にデザインされ、リラックスしたなかにもピンと張り詰めた緊張感が心地良い、KAKUBARHTYMからの第2弾。穏やかな雰囲気が漂うサウンドの向こう側で、歌がゆっくりと立ち上がる。エマーソン北村、伊藤大地(SAKEROCK)らも参加。 *村尾

 

SAKEROCK MUDA KAKUBARHYTHM(2010)

メンバーそれぞれのソロワークが忙しさを増すなかで制作された4枚目のフル・アルバム。1曲目に置かれたタイトル曲を筆頭に、ストレートでライヴ感溢れるバンド・サウンドが印象的な仕上がりだ。4人が裸になり、SAKEROCKという銭湯に浸かりながら大声で歌っているような開放感に満ちている。 *村尾

 

鴨田潤 「一」 KAKUBARHYTHM(2011)

楽曲の端々からシンガー・ソングライター志向を覗かせていたイルリメが、本名名義で放ったギター弾き語り作品。日常を細やかに、時にユーモアを交えて描き出した16曲はURCの諸作などに通じる趣もあるのだが、ギターの鳴らし方が独特ゆえか〈フォーキー〉とも形容しづらい不思議な味わいの一枚だ。 *澤田

 

二階堂和美 にじみ KAKUBARHYTHM/Pヴァイン(2011)

僧侶の資格も持つシンガー・ソングライターが広島の実家に戻り、家族や近所付き合いのなかで生まれた〈歌〉との新たな向き合い方。そのひとつの形が本作だ。歌謡曲、民謡、ジャズ、シャンソンなど多彩なスタイルの曲と、表情豊かで奔放な語り口を通じ、大衆音楽の持つ力強い生命力を現代に甦らせた名盤。 *村尾

 

cero WORLD RECORD KAKUBARHYTHM(2011)

いまや日本のインディー・シーンを超えた存在感を示す3人組の初作。初期の細野晴臣やはちみつぱいあたりのサウンドをモダンな雑食性と音響センスで拡張した、色彩豊かな宅録チェンバー・ポップを展開。〈非現実としてのエキゾ〉を追求し、各楽曲の物語が絡む重層的な語り口で架空のシティーを描いた。 *澤田

 

(((さらうんど))) (((さらうんど))) KAKUBARHYTHM(2012)

鴨田潤とTraks Boysが結成したバンドの初作。80sシンセ・ポップ風のサウンドに鴨田のロマンティックな詩情と無二の歌唱を乗せ、正攻法の日本語ポップスを志向した。佐野元春のカヴァーなどシティーな装いがまず目を惹くが、オリエンタルだったりアシッド調だったりの多様な味付けも楽しい。 *澤田

 

cero My Lost City KAKUBARHYTHM(2012)

瑞々しい音世界を描き出した前作『WORLD  RECORD』が話題を集め、各所からの期待が膨らむなか発表された2作目。このコンセプト・アルバムで綴られているのは、空想と現実がせめぎ合う物語。あらゆる音楽的語彙が駆使されており、急激な成長を続けるバンドの姿も生々しく映し出されている。 *大石

 

(((さらうんど))) New Age KAKU-BARHYTHM(2013)

砂原良徳との共作曲や、荒内佑(cero)と澤部渡(スカート)の提供曲も賑やかに詰め込まれた2作目。華麗な転調、煌びやかなギター・カッティング、ソウル由来のグルーヴといった聴き手の心を沸き立たせるエッセンスを的確な采配で盛り込み、前作以上に精緻なポップ・ミュージックを作り上げている。 *澤田