余韻と手移り、と題された高橋悠治の新譜。「余韻は音の共鳴と記憶。手移りは響を残したまま、少しづつ指を移していく笙の技法」と本人は説明する。J.S.バッハ、ナッセン、増本伎共子、石田秀実、クロード・ヴィヴィエ、そして本人の曲が並ぶ。2018年、3月2日に行われた同名のコンサートを収録したアルバムだ。豊富な音色、ポリフォニーを紡ぐ独特のリズム、確かに共鳴の記憶を移す手の動きが創る、あたかも影絵を見ているかのような錯覚を覚える曲集である。音楽は前に動いているだけではない、後ろへ後ろへと後ずさりするようにも動いている。終曲のチマローザの、灯火のような余韻が美しい。
高橋悠治 『余韻と手移り』 豊富な音色、ポリフォニーを紡ぐ独特のリズム。影絵を見ているかのような曲集
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