三味線という切り口から聴く〈高橋悠治と三味線三夜〉
高橋悠治の三味線を中心とした作品が集められ、披露される。それも〈リサイタル〉である。本條秀慈郎の名を掲げ、客演を招く。こんなにいろいろ作品があったのか!とすなおにおもう。しかも、この列島でつくられ、弾かれ、伝わってきたものと同様、楽器を奏でるだけでなく、なんらかのかたちでことばとのつながりを持っているのが多い。
それぞれは〈くずし〉〈道行〉〈余韻〉と題され、1日目と2日目は昼夜2回公演、3日目は1回きりだが、高橋作品いがいに坂本龍一、杉山洋一の作品、三浦寛也の委嘱作も演奏される(高橋悠治じしんもピアノを弾く)。この何年か、高橋悠治の作品はまとめて演奏される機会が何度かあったが、こうした三味線というひとつの切り口から、というのははじめて。
本條秀慈郎に、コンサートを前にして、いくつか問いをむけてみた。
――高橋作品における三味線の扱い(弾きにくさ、タイヘンさ、含めて)は?
「いわゆる名人芸も必要とされ、“三弦散手”は高橋アキ先生がクセナキスより大変だと仰るほど。コンピュータで作られた難しい作品ですが、御指導頂くと混み合った複雑な〈手(フレーズ)〉も軽く、小気味よく弾いてと仰います。段ものの中にマクラやオクリ、中チラシやハルフシ、冷泉といったフシが含まれ古典の幅広さを交えて、三味線という楽器が持つ多様性も用いられます」
――弾くために必要とされるもの(体力? 知力? 感性? その他?)は?
「そういったものをフルに使って稽古し、後は当日。その日の楽器の歌いたいように任せて演奏する。作曲者の無言の教えからこう感じています」
――いま高橋作品を演奏するのは?
「この時代と今の自分において、面白さや可能性を見出せずにいます。この演奏会は自身の救済と、洒落た言葉・音遊びへの回帰こそ活路。そういった提示から次の創造に繋がればと期待しています」
――本條さんにとっての高橋悠治という作曲家は?
「先生であり、メンターであり、甘えてしまうような。私が音楽をするうえで御師匠さんのような支心。皆さまもそうかと思われますが、そこにいらっしゃるだけで不思議な感覚をおぼえます」
高橋悠治と三味線、でおもいをはせてしまうのは、2007年に亡くなった名手・高田和子のこと。交友のなか、作曲家は演奏家と楽器と〈とも〉に、音楽を、作品を、みはるかした、とおもう。高田さんは、いつか、こうしたかたちでリサイタルを夢みたことがあっただろうか。本條秀慈郎は、そのみはるかす先で、どう、弾くだろう。
LIVE INFORMATION
微かに…高橋悠治と三味線三夜
本條秀慈郎連続三味線リサイタルvii~ix
作曲・ピアノ:高橋悠治
第7回三味線リサイタル
「くずし」第一夜
2021年11月6日(土)東京・神宮前 hall60(ホール ソワサント)
(昼夜2回公演)
客演:義太夫三味線/鶴澤三寿々
■昼
開場/開演:13:30/14:00
■夜
開場/開演:17:00/17:30
第8回三味線リサイタル
「道行」第二夜
2021年11月27日(土)東京・神宮前 hall60(ホール ソワサント)
(昼夜2回公演)
客演:柳川三味線/林美音子
■昼
開場/開演:13:30/14:00
■夜
開場/開演:17:00/17:30
第9回三味線リサイタル
「余韻」第三夜
2021年12月18日(土)東京・神宮前 hall60(ホール ソワサント)
開場/開演:17:00/17:30
客演:高橋悠治(ピアノ)