NHK Eテレの音楽教養番組「星野源のおんがくこうろん」で取り上げられ、大きな話題になったジョン・ケージ。1912年生まれ、92年に亡くなったアメリカの作曲家で、現代音楽を代表する前衛/実験音楽家です。ケージの作品といえば、番組で実演もされた衝撃作“4分33秒”が取り上げられがちですが、もちろん彼の音楽はそれだけではありません。そこでintoxicate編集部が、ケージ入門に最適なおすすめ作品10選をご紹介。「おんがくこうろん」で興味を持った方も、現代音楽を聴いてみたい方も、ここからケージの世界に足を踏み入れてみては? *Mikiki編集部
実験音楽、そして“4分33秒”というショッキングな作品の作曲家という肩書きがケージの名を広めたとしても、彼の音楽に触れる本当の機会を作ったかというと、大分疑問だ。
特に初期の作品には、確かにその当時の音楽のあり方とは異ってはいても、彼独特のチャーミングな雰囲気の作品が多数ある。特に初期の弦楽四重奏の断片化されたダイアトニックの響きの中にひょっこりキノコのように生えてくる旋律は、ユーモラスである。始終よく笑い、人を笑わせていたケージの笑顔同様素敵だ。プリペアード・ピアノの作品も可愛いものが多い。そういえば“チープ・イミテーション”のポツポツと短音でつまびくピアノも、キノコのようだ。
そんな聴き方を本人が許してくれるどうかは疑問だが、今も演奏家が愛してやまないケージの素敵な音楽を、実験などというミステリーやホラーめいた印象から解放しよう!
Jan Williams & Maelstroem Percussion Ensemble『John Cage: Imaginary Landscapes』
JAN WILLIAMS, MAELSTROM PERCUSSION ENSEMBLE 『John Cage: Imaginary Landscapes』 hat ART(1995)
歴史的に、ターンテーブルを楽器として初めて扱った作品、“Imaginary Landscape”。ここからニューヨークのストリートと実験音楽が繋がっていく。
Martine Jostem, Ami Flammer, Jean Michaut & Dominique Alchourroun『John Cage: The Number Pieces, Vol. 1』
MARTINE JOSTE, AMI FLAMMER, JEAN MICHAUT, DOMINIQUE ALCHOURROUN 『John Cage: The Number Pieces, Vol. 1』 Mode(1995)
晩年、演奏者の人数を示すタイトル、ナンバーピースを作曲する。中でもこのレコーディングの最後では、ヴァイオリン、オシレーター、ピアノとレインスティックの、まるで砂時計の砂の時間をサウンドにしたようなクワイエットな時間が固定される。
高橋悠治『ケージ:プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード』
高橋アキ『危険な夜 – 高橋アキ プレイズ ジョン・ケージ』
打楽器アンサブルをステージに配置できないという理由で思いついたプリペアード・ピアノ。ピアノが打楽器アンサブルのように響き合う。
John Cage『Cheap Imitation』
エリック・サティの楽曲を断片化しチャンス・オペレーションによって再構築した作品。本人がとつとつと演奏するピアノの短音が美しい。
LaSalle Quartet『Lutosławski, Penderecki, Cage, Mayuzumi: String Quartets』
LASALLE QUARTET 『Lutosławski, Penderecki, Cage, Mayuzumi: String Quartets』 Deutsche Grammophon(1987)
渡邉琢磨も影響を受けたケージ弦楽四重奏初期作品のひとつ。
Irvine Arditti & Stephen Drury『John Cage: The Works For Violin, Vol. 4』
IRVINE ARDITTI, STEPHEN DRURY 『John Cage: The Works For Violin, Vol. 4』 Mode(2001)
ロマンチックなヴァイオリンと鍵盤楽器のための作品集。
John Cage & Joan La Barbara『Singing Through』
モートン・フェルドマンの“Only”のドライかつリリカルな歌唱で絶賛されたジョアン・ラ・バーバラの、もう一つの傑作、ジョン・ケージ声楽曲集。
John Cage & David Tudor『Indeterminacy: New Aspect Of Form In Instrumental And Electronic Music』
JOHN CAGE, DAVID TUDOR 『Indeterminacy: New Aspect Of Form In Instrumental And Electronic Music』 Folkways(1959)
ジョン・ケージ&デヴィッド・チュードア(ピアノ&電子音)。美声で知られた本人のる朗読とチュードアのピアノ、電子音のデュオ。
John Cage『The 25-Year Retrospective Concert Of The Music Of John Cage』
JOHN CAGE 『The 25-Year Retrospective Concert Of The Music Of John Cage』 (1959)
キース・ジャレット、マイルス・デイビスのプロデューサーが制作した歴史的コンサートのドキュメント。初期の代表作が会場の空気をさらに痺れさせる。