ロマンティックなイマジネーションを掻き立てる都会の蜃気楼

 太陽が海の向こう側に沈みはじめ、優しい風が灼けた肌を心地良く撫でる。何かを狂わせてくれる夏という名の魔法は、夕暮れになってもまだ、覚めない。宵闇に任せて、これから男と女は――そんなロマンティックでアダルトなイマジネーションをも掻き立てられるのは、きっとその情熱的で艶やかなグルーヴのせいだろう。

SPARKLING☆CHERRY Mirage FLY HIGH(2018)

 SPARKLING☆CHERRYが4年半ぶりに届けた『Mirage』は、夏にうかされたメロウなハートに火をつける魔法がそこかしこに仕掛けられたアルバムだ。〈Light Mellow〉シリーズの監修で知られる音楽ライターの金澤寿和がプロデュースした『Mirage』は、杉真理や村田和人などを手掛けてきた土橋一夫がディレクターを担い、同じく彼らを手掛けてきた安部徹がエンジニアで参加という、70~80年代にかけての都会的センスを持ったポップスをクリエイトしてきた面々。サンバ・フレイヴァーのタイトル・チューンを幕開けとした全10曲の中には、一昨年に他界した村田和人と共に作りかけていた楽曲を彼の盟友だった杉真理と完成させ“フリンジデート”といった感慨深いナンバーもあり、鉄壁のバンド・アンサンブルから繰り出されるクロスオーヴァーなサウンドスケープと、ソウルフルかつクリスタルな煌めきを放つcherryの歌声によって豊潤なグルーヴが次々と生み出されていく。濱田金吾をパートナーに迎えたスウィートなデュエット・ナンバー“ENDING”を聴き終わったあとの名残惜しさたるや。YAZAWA的に言えば、碧く燃える海のように罪なやつ。