シャンソン、フレンチポップの名曲を澄み切った歌で伝える

 ジュリエット・グレコに認められ、ピエール・バルーが主宰するサラヴァからデビューを飾ったフランスの女性シンガー、クレール・エルジエール。最新作『パリ、愛の歌~永遠のシャンソン&フレンチ・ポップ~』は、シャンソンとフレンチ・ポップのカヴァー集だ。数ある名曲のなかから、収録曲14曲を選んだ理由を彼女はこんな風に語ってくれた。

CLAIRE ELZIERE パリ、愛の歌~永遠のシャンソン&フレンチポップ~ RESPECT RECORD(2018)

 「すべてパリの歌であり、愛の歌です。直感に従って選んだのですが、どの曲も私に語りかけてくるんです。曲を聴くと、はっきりと情景が浮かんでくるし、いろんな感情を引き起こす。そういう曲と出会うのは、自分にとって大きな喜びです」

 10代の頃にシャンソンと出会い、その魅力に惹かれていったクレール。《パリの屋根の下》《セ・シ・ボン》《サン・トワ・マミー》など時代を越えた名曲が並ぶがなか、《わが麗しき恋物語》は「いちばん挑戦しがいがある曲」だったとか。

 「この曲には大河物語のように長い時の流れがあるんです。その時の流れを、ちゃんと表現できるのか、というのがチャレンジでした」

 歌う時に彼女が心掛けているのは「言葉(歌詞)に対して誠実に向き合う」こと。自分を表現するために歌うのではなく、「歌を通じて物語を語ることで聴き手とコミュニケートしたい」と彼女は言うが、歌詞に対する向き合い方は、台本と役者の関係と重なるところがある。そんななか、《彼と彼女のソネット》には個人的な想い出があるらしい。

 「ティーンエイジャーの時にリアルタイムで聴いた曲です。私はすっかり忘れていたのですが、母が言うには何度も何度もエンドレスで歌っていたそうです(笑)。30年くらい歌っていなかったのですが、歌った瞬間に10代の頃の感覚が甦ってきました」

 また、昨年亡くなったピエール・バルーが歌詞を手掛けた《男と女》には、バルーへの追悼の想いが込められている。

 「ピエールはスタジオの鍵を私達に渡して自由にレコードを作らせてくれました。レコーディングには8日かかってもいいし、15日かかってもいいんです。ピエールはシンプルで素朴な人。そして、人との出会いを大切にする人でした。私もその精神を受け継いで、これからもいろんな人と出会いたいと思います」

 歌う時は「澄み切った純粋さ」を大切にしていると言うクレール。だからこそ、混じりけなしの歌のエッセンスを味わえる。パリの風景やそこに住む人々の物語がいきいきと浮かび上がる彼女の歌は、名曲が生まれた時の輝きを、時を越えて伝えてくれるはずだ。