2年ぶりのアルバムは、AOR調のアンサンブルと自身のヴォーカルによるポップソング、ストリングスをフィーチャーしたロマンティックなインスト、エクスペリメンタルな電子音楽といったスタイルも質感も異なる楽曲が混在する作品となった。それらの要素を1曲のなかに投げ込んだような“デカダン・ユートピア”がひときわ鮮烈な印象を残す。バラバラでいて、全編に通底するノーブルな佇まいがこの作家ならでは。

 


現代音楽作曲家: 網守将平の2ndアルバムは極めてポップで上質な音に満ちている。近年ではEテレ「ムジカ・ピッコリーノ」の音楽制作に携わるなど、現代音楽の世界に留まらずその活動領域を拡大し注目されている作曲家なだけに、その作風には様々な期待が寄せられるだろう。空想音楽というコンセプトの下に全11曲が収められた本作は作風・曲調という言葉では括れない“多岐”性に満ちていた。80年代テクノポップを匂わせるかと思えば、甘くも美しいストリングスが顔を出す。耳に残るメロディとちょっとシリアスな電子音響が共存し、ポップさの皮の下に何かがある。そんな深読みをしたくなる楽しい音楽だ。