(左から)ティム・ドイル(パーカッション)、ジェイク・ロング(ドラムス)、シャーリー・テテー(ギター)、ヌビア・ガルシア(サックス)、アマネ・スガナミ(キーボード)、トゥイム・ディラン(ベース)
Photo by Sonni Rossi

現代UKジャズ・シーンを牽引するバンド〈Maisha〉がデビュー!

 現行のUKジャズシーンをサポートしているレーベルBrownnswoodがリリースしたコンピレーション『We Out Here』は、アシッドジャズやクラブジャズから連なるUK独自のジャズの大枠を示した重要作と言っていいだろう。そこに収録されていたマイシャはシーンを体現するバンドのひとつ。サウスロンドンのSSWジェイミー・アイザックのバンドでもドラムを叩くジェイク・ロングがリーダーとなり、今やシーンの顔ともなった女性サックス奏者のヌビア・ガルシアがフロントを務め、ヌビアと共に女性のみのジャズバンドのNérijaを構成するギタリストのシャーリー・テテー、ジョルジャ・スミスのサポートなども務めるアマネ・スガナミといったジャズシーンとサウスロンドンのポップ/R&Bシーンを結ぶ人脈が集結している。

MAISHA There Is A Place Brownswood/BEAT(2018)

 彼らが奏でるのは、スピリチュアルジャズ × アフロビートなサウンド。スピリチュアルジャズ部分は90年代からUKのジャズDJたちにより神格化されてきたファラオ・サンダースを核に、アリス・コストレーンなどのチル要素も加えたもの。アフロビート部分はフェラ・クティを核にしたファンク成分は薄目でハイライフ色が濃い目に残るスタイルのアフロビートとでも言うべきか。

 USのジャズシーンでは見ない70年代型スピリチュアルジャズの様式があり、ヌビアのサックスソロも同時代のUS現代ジャズとは全く異なる70年代的なコルトレーン・フォロワー型。US現代ジャズから見ればリヴァイヴァル的であり、UKジャズから見れば自国に根付くUSへの憧憬を示す定型とも言える。ただ、冒頭の“Osiris”のテーマやアレンジは明らかにカマシ・ワシントン風で現代のUSを強烈に意識しているが、リズムは限りなくループ的で変化を無くしダンサブル(=DJユース的)に仕上げている部分は実にUK的で、USとUKの文脈の交差具合が特徴で、そこにアフリカンやカリビアンの移民2世や3世たちの出自を想起させる要素も鳴っている。あらゆる意味でイギリスの文化を反映している作品だ。