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インタビュー

ナラ・シネフロ(Nala Sinephro)『Space 1.8』カリブ系ベルギー人音楽家がアンビエントや環境音楽、ジャズを横断した初作

奔放な感受性を持つ若き才媛のデビュー作。名門ワープから出るべくして出た作品。

 名門ワープ・レコーズから、またひとつ同レーベルを象徴する傑作が届けられた。それが若き才媛、ナラ・シネフロの『Space 1.8』。ロンドンを拠点に活動するカリブ系ベルギー人ミュージシャンのデビュー作である。その音楽性は、アンビエントや環境音楽からスピリチュアル・ジャズまでを横断するもので、オブスキュアで茫洋とした音像が実に魅力的だ。

 音楽的ルーツについて訊くと、「幼少時から楽器が周囲にある環境で育った」というナラ。「家の近くに森があって、鳥たちの会話や鳴き声を、美しいメロディやリズムと同様に聴いていた」そうだ。そんな、奔放で型にはまらない彼女の感性は、時としてガチガチの音楽教育に拒絶反応を示すこともあったとか。

 「5歳から音楽をプレイしているんだけど、その時はフィーリングがすべてだった。そして、ピュアな感性を今でも大事にしたいと思っている。一方、音楽を勉強して情報を吸収しすぎることは、時に決まりごとや収め方に繋がってしまう。先生に“この音は使ってはダメだ”と言われて、“なんでダメなの?”と思ったこともよくあったの。ハートでプレイしてたのに、スキルや学習はそれに圧力をかけることもある。ジャズを学んだこともあるし、知識は時に大切だけど、あくまでもツールのひとつとして使っていけたらいいなと思っているわ」

 知識よりも感覚。学習より体験。彼女の感受性をひとことで表すなら、そうなるだろう。あるいは“この人にしてこの音楽あり”と言うべきか。なお、彼女は本作で、作曲、プロデュース、エンジニア、レコーディング、ミキシングのすべてを担当。ペダル・ハープやモジュラー・シンセを奏でてもいる。

 また、アルバムにはサックス奏者のヌバイア・ガルシアを筆頭に、UKの新世代ジャズ・シーンで活躍するミュージシャンも多数参加。棹尾を飾るトラックは、ブライアン・イーノがアリス・コルトレーンをプロデュースしたような、神秘的で壮麗なサウンドが17分強に渡って続く。

 「アルバムでは、自分自身に対して正直で、ルールのない作品を作りたいと思っていた。その為に瞑想をしたり、エゴを捨てるように頑張ったつもり。何かが間違っていたらどうしよう?という考え方も捨てていたし、自分の中に自然に降りてくるサウンドを大切にしていったの」

 ナラは、英国の新聞『ガーディアン』で、2020年の注目すべきミュージシャンとしてその名前が挙げられ、ジャイルス・ピーターソンからも支持されているという。ちなみに、本作が制作された時、ナラは弱冠22歳。前途洋々、という惹句がここまで似合う音楽家も珍しいのではないだろうか。

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