年齢はほぼ同じ。周囲のミュージシャンは重なっており、さらにブラック・ミュージックの要素を採り入れつつ独自の日本語ポップスに昇華するという作家性の面で共通する部分もありながら、なぜか一度も顔を合わすことのなかった2人の音楽家がいる。それが、本稿の主役である両者――Keishi TanakaとKan Sanoだ。
2000年代にギター・ポップ・バンド、Riddim Saunterのヴォーカリストとして活躍し、以降はシンガー・ソングライターとしてのキャリアを順調に積んでいるKeishi Tanaka。バークリー音楽大学ピアノ専攻ジャズ作曲科卒業というアカデミックな出自を持ち、キーボーディスト/プロデューサーとしてKIRINJIやCharaら名だたるアーティストに貢献、自身の2016年作『k is s』も高い評価を受けたKan Sano。現在は向井太一やTENDREといった共通の知人も多いはずだが、両者の歩みが重なることはなかった。この日までは。
そんな2人の初めての交流を記録したのが、この対談である。Keishi Tanakaは5月8日(水)に『BREATH』、Kan Sanoは5月22日(水)に『Ghost Notes』とそれぞれニュー・アルバムのリリースを控えたタイミングでの初見となった。文字通り〈はじめまして〉の2人ゆえ、初々しい雰囲気が微笑ましくも、そのフレッシュさが各人のミュージシャンとしての本質へとストレートに迫ることができたのではないか。
対話の最後では、コラボレーションの約束を交わし合ったKeishi TanakaとKan Sano。その実現をいまから期待してしまうのは、気が早すぎるだろうか。


ダニー・ハサウェイ版“What's Going On”、最高じゃん!(Keishi Tanaka)
――お2人が先ほど撮影のときに持っていらっしゃったレコードは?
Kan Sano「僕はマイルス・デイヴィスの『Directions』ですね。ジャズを聴くきっかけになった人で、10代の頃ずっと聴いていたんです。いまだに好きですし、マイルスを選んでおけば間違いないなと」
――なかでもそのレコードを選んだ理由は?
Kan Sano「ジャケがカッコよかったから(笑)。70年代のマイルスがいちばん好きで、音楽もファッションも全部がいちばんカッコよかったときなんじゃないかな」
――Keishiさんは?
Keishi Tanaka「僕はマクファデン&ホワイトヘッドっていうソウルの2人組のレコードです。よくDJでかける盤なんですよ。ビズ・マーキーがサンプリングしたことで結構有名になったんですけど、僕は原曲をかけることが多くて」
――お2人は今日が初対面とのことで。最初に自己紹介がてら、これまでのキャリアを教えてもらえますか?
Keishi Tanaka「(急に改まった様子で)僕は田中啓史と言いまして、北海道出身で……どっから言いましょう(笑)? 20代はRiddim Saunterというバンドをやっていたんですけど、2011年に解散して、それからソロになりました。
実は僕とKan Sanoさんって年が1歳しか違わないんですよ。それもあって、20代の頃のKan Sanoさんがどういうことをしていたのかが気になったんです。ファースト・アルバム(『Fantastic Farewell』のリリース)が2011年ってことは、30歳くらいの頃の作品ですよね?」
Kan Sano「そうですね。20代の頃は音大に留学していて、日本に帰ってきたのが22歳くらい。僕はもともとピアニストなので、サポートとしていろいろな人のライヴを手伝ったり、ホテルのバーみたいな場所でピアノを弾く仕事をしたり。そういうことをやりながら、自分のデモを海外のインディー・レーベルに送っていました。何度かコンピに入れてもらったりはしたんですけど、アルバムを作るまでは時間がかかって」
Keishi Tanaka「最初から海外に目を向けていたんですね」
Kan Sano「そうですね。最初はもう完全に海外志向で、日本のシーンのことは全然知らなかったんです。その後、30歳手前くらいから、いまもライヴや作品に参加させてもらっているCharaさんやUAさんと知り合って。それから日本のシーンでも本格的に活動するようになったって感じですね」

――Kan Sanoさんが音源を作りはじめた当初に影響を受けていたミュージシャンは?
Kan Sano「10代の頃に聴いていた音楽の影響がいちばん大きかったです。ソウルやジャズ、ネオ・ソウル――ブラック・ミュージックがやっぱり多いですね。ディアンジェロやエリカ・バドゥ、70年代のダニー・ハサウェイとかロイ・エアーズとか、そういうものを10代の頃いっぺんに聴いていたので、その影響はいまだに大きいのかなと思います」
――Keishiさんがそうしたソウルと出会ったのは?
Keishi Tanaka「僕は高校の後半くらいかな。もともとはスカやレゲエを聴いていて、なかでもラヴァーズ(・ロック)とか、メロディーに重きを置いているものが好きでした。そうした好みもあって、スティーヴィー・ワンダーとかマーヴィン・ゲイとかの有名なソウルも聴くようになって。
その後、ダニー・ハサウェイ版の“What's Going On”を聴いて、〈これなんだ? 最高じゃん!〉となったことを覚えています。僕はマーヴィン・ゲイ版以上にダニー・ハサウェイ版の“What's Going On”が好きなんですよ」
Kan Sano「僕もあっちのほうが好きですね」
自分が弾いたものを素材として自分に提供する感覚(Kan Sano)
――ほぼ同世代でソウル・ミュージックへの愛情も共有されているにも関わらず、いままで絡みがなかったというのはおもしろいですね。お互いにどんなイメージを持たれていました?
Keishi Tanaka「なんか……天才ですよね」
Kan Sano「いやいやいや(笑)!」
Keishi Tanaka「そこは間違いないでしょう! 最近でこそ、特に若い子には1人でいろんな楽器を操るミュージシャンが結構いると思うんです。最初からパソコンで音楽を作れるというか。でも僕が20代のときは、全部の楽器を弾いて、自分1人で音源を作るっていう人は周りにいなかったから」
Kan Sano「そうですよね。僕もそうでした」
Keishi Tanaka「Kan Sanoさんは同世代でそれをやってきた人なわけですけど、いつからそうしているのかってのは興味あります」
Kan Sano「20歳くらいからDTMっていうか、打ち込みを始めて1人でデモを作っていたんです。バンドもやっていたんだけど、音源を作るのはなぜかいつも1人で。いろいろな楽器を少しずつ弾けるようになっていくうちに、すべて1人でやるようになって」
――そのほうが自分が思い描いているものに仕上げられるからですか?
Kan Sano「それがいちばんデカいですね。他人に頼んで自分が思うサウンドに近づけてもらうより、自分でやっちゃうほうが早いですから」
Keishi Tanaka「(小声で)天才(笑)。でも、その感覚はわかります」
Kan Sano「あと単純に友だちがいないので、あんまり頼める人がいない(笑)」
――でも他のミュージシャンからは頼られまくりじゃないですか?
Kan Sano「僕が他人に頼んでも自分で編集しまくっちゃうんで、それ前提で受け入れてくれる人じゃないと、ちょっと難しいだろうなっていうのもあります。ミックスも自分でやるから、〈自分が弾いたものを素材として自分に提供する〉みたいな感覚なんですよね」
自分のなかに息づいているネオ・ソウルを一つの形にしておきたかった(Kan Sano)
――Kan Sanoさんが新作『Ghost Notes』のミックスで大切にしたポイントは?
Kan Sano「〈あんまり音を詰め込みすぎないように〉というのをいちばん考えていました。前作(『k is s』)は音数多めだったので、もうちょっとスカスカ感というのか、全部の楽器がなるべく聴き取れるような音作りにしたいなって」
――それによって、歌も含めて各楽器の音が際立っている気がしました。音と音の隙間にも官能性が宿っているというか。
Kan Sano「20歳くらいの頃に聴いていたネオ・ソウルは自分のなかにしっかり息づいているんですけど、それをちゃんと作品にできていなかったので、今回は一つの形にしておきたいなと思っていましたね。
ただ実際作りはじめると、自分が好きなネオ・ソウルは生音っぽいものが多いので、結局70年代のソウルにも行き着いた感じがあります。70年代っぽいドラムの音色とかが作品に出ているなって」

――Kan Sanoさんがおっしゃっている〈ネオ・ソウル〉っていうのは、ディアンジェロやジル・スコットといったソウルクエリアンズ周辺のミュージシャンたちの音楽ですか?
Kan Sano「まさにそうですね。エリカ・バドゥの作品やディアンジェロの『Voodoo』(2000年)にはいちばん影響を受けたので」
Keishi Tanaka「最高っすね」
Kan Sano「『Voodoo』のなかでもJ・ディラが絡んでいる打ち込みのプロダクションより、クエストラヴが叩いている曲のほうが当時から好きだったんです。なので、楽器はとにかく生演奏にして、ドラムも叩いて録っています」
Keishi Tanaka「クエストラヴがやってるルーツが好きで、あのサウンドは生ドラムに良さがあるわけじゃないですか。そういう音楽を日本人なりに感じさせれたらと僕も思っていて、だからKan Sanoさんの音楽に興味があるんだと、いま納得しました」
ソウルから影響を受けつつ、日本人のオリジナリティーが感じられる音楽をバンド・サウンドで表現するのが自分らしいかな(Keishi Tanaka)
――Keishiさんの新作『BREATH』もこれまで以上にソウル・フィーリングが強い作品だと感じました。
Keishi Tanaka「そこはバランスを意識しましたね。僕もディアンジェロは好きだし、〈音数を減らして空白を作って〉というサウンドもやりたいんですけど、自分がそっちに振り切るのは違う気がしていて。Kan Sanoさんのように、そういう音楽をやっているカッコいい人はいっぱいいるし。
そこに自分を寄せていくのではないんだけど、でもそういう音楽のフィーリングも伝えたい。そのバランスのいちばん良いところをやりたいなと思っていました。この時代に寄りすぎない絶妙なところというか」

――現代的なサウンドをそのまま反映させるのではなく、フィーリングとして醸しだすという。たとえば“Show Respect”や“This Feelin’ Only Knows”などのゴスペルっぽい楽曲からは、チャンス・ザ・ラッパー以降のムードも感じます。
Keishi Tanaka「チャンスもそうですが、2018年の制作中は、サム・ヘンショウの存在が結構デカかったですね。久々にグッときた新譜でした。打ち込みでも良いものをあえて生音でやるところとか、良いバランス感覚を持っていると思うんですけど、影響受けたところもあったなと」
――Kan SanoさんはKeishiさんの『BREATH』にどんな感想を持たれましたか?
Kan Sano「ソウルからの影響はすごく感じました。自分が(ソウルを)好きだから、そういうところに反応するんでしょうけど」
Keishi Tanaka「それは嬉しいですね」
――ネオ・ソウルよりはもっとオーセンティックなソウルですか?
Kan Sano「そうですね。さっきTanakaさんはマーヴィン・ゲイよりダニー・ハサウェイの“What's Going On”を好きだと言ってましたけど、それはすごくわかるんです。ダニー・ハサウェイのほうがバンドのサウンドで表現しているっていうか、バンド込みの表現になっている気がするんです。マーヴィン・ゲイのオリジナル・ヴァージョンは極論、彼だけでも成立している。バンド込みで音楽を捉えているところがTanakaさんらしさなのかなって」
Keishi Tanaka「ブルー・アイド・ソウルのように黒人ソウルから影響を受けつつも、聴いて日本人のオリジナリティーが感じられる音楽を意識しています。それをバンド・サウンドで表現するのが自分らしいかなって」

――Keishiさんの前作『What's A Trunk?』(2016年)はコラボレーションを中心に据えていたのに対し、今回はバンド・メンバーを固定していますね。バンドとして音を作り上げようという意識があった?
Keishi Tanaka「前作の反動もありますね。毎回、〈反動〉がキーワードかもしれない。
たとえばRiddim Saunterを解散したあとのファースト(2012年作『Fill』)からセカンド(2015年作『Alley』)までは、それまでバンドで作っていた反動もあって。さっきのKan Sanoさんの話じゃないですけど、自分1人でアレンジまでやったんですよ。ストリングスやホーンはいまもだけど、全体的なバンド・アレンジを自分のイメージどおりに作っていた。当時はそれが〈ソロ〉というものかなと思っていたんです。
それを2枚やれたから、前作の『What's A Trunk?』ではコラボをやろうと思い、4組(LEARNERS、fox capture plan、Ropes、Tokyo Recordings)とコラボレーションして作り上げた。
その反動で、次はバンドを固めてやってもいいかなとなりました。今回は、いまライヴをやっているメンバーで固定して、このメンバーだからやりたいこと、できることを想像して作っていった感じですね。1曲目の“Breath”も、いまのメンバーの顔を思い浮かべながら作った曲です」
Kan Sano「1曲インストっぽい曲があったじゃないですか? あれはどうやって作ったんですか?」
Keishi Tanaka「4曲目の“How’s It Going? (Skit)”ですね。その次の曲“This Feelin’ Only Knows”はもともとシングルで出していて、ライヴで何回か演っているうちに、ちょっとイントロを付けたくなったんですよね。リハスタでメンバーに4度で転調していくコード進行とビート感だけを伝えて、セッションしながら合わせたんです。ライヴでやってみると調子が良かったので、今回レコーディングしました」
トレンドや流行っているものに関係なく、自分の耳が聴きたがっている音を作りたい(Kan Sano)
――Kan Sanoさんも前作の『k is s』では七尾旅人やメイリー・トッドらをゲスト・ヴォーカリストに迎えていたのに対し、今回はすべてご自身で歌われていて。奇しくも重なり合う部分がありますね。
Kan Sano「いまTanakaさんの話を聞いていて僕も同じだなと思ったんですけど、やっぱり一つの作品を作ると次は全然違うことをやりたくなるんですよ。僕は前作でもミックスや演奏は自分でやっているんですけど、それでも他人と作ったアルバムという感覚は結構強くて。
ライヴでフィーチャリング曲を演奏してると、自分の曲なのにカヴァーをやっているような気持ちになるときがある(笑)。だからリリックやメロディーも全部一回自分だけでやってみたいという想いが強くなったんです」
――前作以降、ますますミュージシャンとして多方面で活躍する機会が増えたと思うんですが、そういった外仕事はご自身の音楽性や新作自体に影響を与えていますか?
Kan Sano「めちゃくちゃあるとは思うんです。ただ、これもさっきのTanakaさんが言われたことと繋がる話で、僕は自分がいるシーンやトレンドからはちょっと距離を置いていたい人なんです。常に一定の距離を保っていたい。その距離感はいつもすごく意識しているし、自覚しています」
――それはどうしてですか?
Kan Sano「やっぱり他人と同じことをやりたくないとか、自分らしいものを作りたいとか、そういう想いが強いからかな。自分が作ったものが結果的に世の中の流れにハマれば嬉しいけど、ハマらなかったとしても自分が納得できれば後悔はしないと思う。後悔しないものを作りたいなっていうことなんですね」
Keishi Tanaka「同感ですね、それ、逆は絶対後悔しますからね。世間に合わせてやっても……」
Kan Sano「そうそう。それで売れればまだいいですけどね。トレンドにがっつり合わせて売れなかったらもう、なんというか……(笑)。誰のために作ったんだってことになりますからね。だからやっぱり、トレンドや流行っているものに関係なく、自分の耳が聴きたがっている音を作りたいんですよね。それが大前提っていうか」
――なるほど。Keishiさんは?
Keishi Tanaka「もうすべて言ってくれました(笑)。僕もホントにそう思いますね。だから、いろいろと自分を変化させている面もあるんです。バンドからソロになったり、最近は事務所を変えたり。
長く同じ場所にいると心地良くなってくるんですよね、一つのシーンにいるとすごくいろんなことがやりやすくなるし、良いことも多いんですけど、どっかでちょっとつまんなくなってくるというか、刺激が足りなくなってくる。
最近、自分にぴったりだなと思った言葉が〈安全圏から出る〉っていうフレーズ。その感覚はいますごくあります。それをすることで自分がまた転がっていけるし、人生を楽しめると思うんですよ」

――その態度は新作のコンセプトとも関わっていますよね。資料にも〈道に迷ったとき、歩き出す方向は無数にある。大事なのは深呼吸の仕方を知っているかどうか〉という文章を寄せられています。Keishiさんにとって深呼吸=〈BREATH〉は、自分がどう進むかを決めるうえで必要な行為であり、だからこそタイトルにしたのかと思いました。
Keishi Tanaka「その文章はアルバムの特典に付けたライナーノーツ用に、1曲目の“Breath”について書いたものなんです。立ち止まっている人に向けて歌った曲なんですけど、出来上がってみたら、どんな人にもこういうことはあるし、全員のこと――自分も含めて――を歌っているなと思えた。〈Breath〉って言葉は(歌詞の)どこにも出てこないんですけど、誰もがしているという意味で〈呼吸〉というタイトルを付けたんです。
今回、初めて曲名をアルバムのタイトルにしたんですけど、それぐらい〈BREATH〉って言葉がアルバムにハマった気がしたので、〈呼吸〉をテーマに仕上げていきました」
聴こえないような、〈ゴースト〉と言われている音こそ重要(Kan Sano)
――Kan Sanoさんのアルバム・タイトル〈Ghost Notes〉にはどんな意味が込められているんですか?
Kan Sano「〈ゴースト・ノート※〉ってもともと音楽用語で、楽器(の演奏)によく使う言葉なんです。アメリカの言葉だけど、ちょっと日本っぽいニュアンスを持っている気がして、昔から好きな言葉なんですよ。ちっちゃい音、聴こえないような〈ゴースト〉と言われている音に価値を見い出す、そういうものこそ重要なんだっていう考え方を表してもいるんです」
Keishi Tanaka「すっごく〈ぽい〉タイトルですよね」
――その〈ぽさ〉とは?
Keishi Tanaka「プレイヤーだからこそ付けられるというか、付けたくなる言葉だなって。特にKan Sanoさんの音楽にはゴースト・ノートが必要じゃないですか。なので、すごく説得力もあるし」
Kan Sano「やっぱり自分が楽器を演奏するので、すごくリアルな言葉なんですよね。実際にリハとかでも使う言葉だし。そういう自分の身の周りにある言葉から(アルバム・タイトルを)選びたかったっていうのもあって」
早くもコラボ・ソングが2曲出来ました(Keishi Tanaka)
――最後に、お2人でコラボするとすればどういう楽曲を作りたいですか?
Keishi Tanaka「お? そういう話をすると進んじゃいますよ、僕の場合(笑)」
――(笑)。
Kan Sano「ぜひお願いします(笑)! 」
Keishi Tanaka「Kan Sanoさんは自分で曲を作って歌も歌っている人だから、僕もすごくやりやすいと思うんですよね。歌に寄り添う力があるから、それはとても魅力的。僕としては自分1人ではしっかりやっていないスカスカのトラックで、〈でも踊れる〉みたいな、Kan Sanoさんが得意なところに僕が歌を乗っける曲をやってみたいですね」
Kan Sano「おもしろそうですね。逆に僕が思ったのは、シンプルに歌とピアノでやってみたいです。Keishiさんの歌はすごく芯が通っていて力強いから、歌とピアノだけでも成立しそうだなって」
Keishi Tanaka「いいですね。早くも2曲出来ました(笑)」


■Keishi Tanaka
バンド、Riddim Saunterの解散後からソロ・アーティストとして活躍を続けるKeishi Tanaka。力強く伸びやかな歌声と詩情豊かな歌詞で人気を誇るSSWが、4作目のアルバム『BREATH』をリリースする。2枚組のベスト・アルバム『CLIPS』に続く待望と言っていい新作には、新たなフィールドへと進もうとするKeishi Tanakaの意志が高らかに表明された楽曲が詰まっている。詩集の発表や文筆業など、音楽に留まらない幅広い活躍をする表現者に〈未来ノ和モノ〉について訊いた。
――未来や世界のリスナー/ユーザーに向けた本作の聴きどころは?
「日本人がやっているとわかる音楽。それはブルー・アイド・ソウルのような考え方なのかもしれない。インプットとアウトプットのバランス。心地よい音楽でありながら、心に残るものをどれくらい仕掛けていけるか。ただ流れてしまう音楽ではなく、奥行きのある音楽。僕の2019年のモードと共に、未来のリスナーには言葉や意味を、世界のリスナーには日本を感じてもらえればうれしいです」
――今後の日本の音楽シーンや世界のシーンの展望について教えてください。
「いまは、今後の音楽シーンをあまり意識してないです。最近は特に変わるスピードも早いし、考えても仕方ないかなという感じ。例えばリリースの方法でも、〈いまならどうするか〉をその度に決断するしかないと思ってます。人も機械もサービスも相性。自分が楽しんでやれることはやれば良い。自分の感覚を信じてやるしかない。音楽シーンがどうなろうと、音楽はなくならない」
――日本人の感性や音楽で優れていると思われる部分は?
「歌詞。日本語にしかない美しい言葉、表現がたくさんある」
――そういったなかで、Keishi Tanakaさんはどう存在していきたいですか?
「作っているときは自分のため、完成したものは誰かのため。僕の音楽はそうありたいと思っています。なので、自分を含めた人の気配みたいなものを無視することなく音楽を発表し続けていけたらなと。未来を生きる人に、2010年代の和モノとして今作が聴き続けられていたらうれしいですね。そういう音楽をこれからも残していきたいです」
■Kan Sano
ヒット作『k is s』から約2年半、キーボーディスト/プロデューサーのKan Sanoから遂に新作『Ghost Notes』が届けられた。シングル “DT pt.2” “Sit At The Piano”がストリーミング・サーヴィスで200万回再生を突破するなど、追い風が吹くなかでのリリースだ。一方、Charaのツアーでバンドマスターを務め、絢香らシンガーの楽曲を多数制作するなど、昨年はその名を聞かない日はなかったほど。ドラムからベース、ギター、トランペット、ヴォーカルまで、あらゆる楽器を操る稀代の音楽家に〈未来ノ和モノ〉というテーマの質問に答えてもらった。
――未来や世界のリスナー/ユーザーに向けた本作の聴きどころは?
「邦楽にも洋楽にも聴きたい音楽が見つからず、自分の居場所が無いと感じてる人にこそ聴いてほしい。
共感原則に基づいていないパーソナルなポップスを作りたかった。自分自身がそういう音楽を聴きたかったから。何かと生きづらい世の中だけど音楽を聴いている時くらいは自分の世界に浸っていたいし、自由でいたい」
――今後の日本の音楽シーンや世界のシーンの展望について教えてください。
「日本でもストリーミングが普及してきてアーティスト活動の選択肢と可能性が増えたことはうれしいことなのですが、その一方で世間一般の価値観や見えない同調圧力、大量消費社会に常日頃違和感を感じてる自分にとって、世間と自分との距離はますます拡がっているように感じます。日本と海外の距離も随分と離れてしまった。才能のある人はどんどん海外に出て行くし、このままでは日本の文化は痩せ細り、奥行きの無いものになってしまうと危惧してます。いま日本で活動するアーティストは自分のやりたいことをやりきる強固な信念と行動力が必要だし、そんな彼らをサポートする人やシステムも必要です」
――日本人の感性や音楽で優れていると思われる部分は?
「余白に意味や価値を見出せるところ。
物に魂の気配を感じたり、擬人化して感情移入したりできるところ」
――そういったなかで、Kan Sanoさんはどう存在していきたいですか?
「ミュージシャンとしてはアメリカの音楽に多大な影響を受け留学もしましたが、根本の部分では日本で培った感性に基づき創作してます。そしてその感性は世界に胸を張って示せるものだと思ってます。80歳まで現役で活動することを目標にしてるので、これからも地道に頑張っていきます!」
Live Information
Keishi Tanaka BREATH RELEASE TOUR
6月9日(日)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
6月21日(金)神奈川・横浜 F.A.D
6月27日(木)京都 MUSE
6月28日(金)広島・福山 Cable
6月29日(土)香川・高松 TOONICE
7月7日(日)福岡 INSA
7月24日(水)栃木・宇都宮 HELLO DOLLY
7月25日(木)宮城・仙台 enn 2nd
8月2日(金)三重・四日市 Club Chaos
Kan Sano Ghost Notes Tour 2019
6月7日(金)大阪・心斎橋 CONPASS ゲスト・アクト:中村佳穂
6月8日(土)愛知・名古屋 Live & Lounge Vio ゲスト・アクト:Shin Sakiura
6月13日(木)佐賀 Loretta
6月14日(金)長崎 Club BETA
6月15日(土)熊本 LIVE & DINING 酔ing
6月16日(日)福岡 kawara CAFE & DINING -FORWARD-
6月22日(土)東京・渋谷 WWW
6月29日(土)石川 金沢21世紀美術館 シアター21