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フィリップ・ベイリーの作品と重要な関連盤

RAMSEY LEWIS Sun Goddess Columbia(1974)

モーリス・ホワイトの師匠にあたるシカゴの鍵盤奏者がソウル・チャート首位をマークしたジャケ通りのゴールド・ヒット盤。モーリス制作によるEW&Fマナーの2曲にはフィリップも歌とコンガ演奏で参加し、特に表題曲は彼の美しいスキャットが楽曲の情緒を神秘的に印象づけている。この聖なるムードは新作中でグラスパーが制作した“Sacred Sounds”の源泉にあるものだろう。 *出嶌

 

KINSMAN DAZZ Kinsman Dazz/Dazz Expansion(2012)

後にモータウンから“Let It Whip”(82年)でブレイクするオハイオ出身のダズ・バンドが、前身バンド名義で放った初期2作にはフィリップが関与。特に78年のデビュー作ではEW&Fのラルフ・ジョンソンと制作やアレンジなどに関わり、EW&Fのマナーでグループのダンサブルでジャジー(=ダズ)な持ち味を引き出している。ファルセットはフィリップそのもの。 *林

 

STEPHANIE MILLS For The First Time: Expanded Edition Motown/BBR(1975)

ミュージカル出身の実力派シンガーがブレイク前に残したこのアルバムの本編……ではなく、拡張リイシュー盤に丸ごと収録された82年作『Love Has Lifted Me』(録音は70年代半ば)にて、フィリップは“Love Is Everywhere”をプロデュース。後にダズ・バンドを躍進させるレジー・アンドリュースのアレンジでメロウなステッパーに仕立てている。 *出嶌

 

FREE LIFE Free Life Epic/PTG(1978)

フィリップと同郷のデンバー出身者を含み、スー・アン・カーウェルの兄カール(後に101ノースへ)がリードで歌う9人組。この唯一のアルバムでは制作に加えて大半の曲を書いたフィリップの色に染まり、ラリー・ダンも迎えてEW&Fのアーバン・サイドに寄ったファンクやスロウを放つ。“Wish You Were Here”はEW&F版“Can't Hide Love”マナーが光る逸品。 *林

 

SPLENDOR Splendor Columbia/ソニー(1979)

後にモータウンからソロ・デビューするボビー(ロバート)・ナンを中心とした男女混成グループ唯一のアルバム。フィリップがトミー・ヴィカリと手掛けた3作品の中では圧倒的な完成度で、女声リードも活躍するメロウで爽快な楽曲はEW&Fのジョニー・グラハムや名手ジェイムズ・ギャドソンらの演奏も含めて申し分ない。ボビーは後にフィリップのソロ作にも関与。 *林

 

EARTH,WIND & FIRE Raise! ARC/Columbia(1981)

いわゆる黄金期の最後を飾った快作で、“Let's Groove”を収めた一枚としても有名だが、ここではフィリップ自身とグレッグ・フィリンゲインズが共作した“I've Had Enough”に注目。フィリップが初めて共同プロデューサーとして主導したパーカッシヴなディスコ・ファンクの意匠は明らかに『Off The Wall』のマイケル・ジャクソンを意識したもので、ソロ・シンガー的な作りも印象的だ。 *出嶌

 

PHILIP BAILEY Continuation Columbia/ソニー(1983)

EW&F在籍中に放った初ソロ。フィリップ同様ジャズとソウルを跨ぐジョージ・デュークを制作者に迎え、デュークやEW&F一派の助力を得てファルセットを轟かせる。デニース・ウィリアムスとの“It's Our Time”でグループ時代を回顧させながら、NYサウンド風のダンサーやデジタル・ビートのファンクを歌う新旧の折衷具合が絶妙で、幸先の良いソロ始動となった。 *林

 

PHILIP BAILEY Chinese Wall Columbia/ソニー(1984)

制作にフィル・コリンズを迎えたソロ2作目。“Easy Lover”を含み、フィルらしいバタスタしたドラムが畳み掛けるポップ・ロック調の楽曲が中心で、フィリップもソウルの枠を超えて伸び伸びと歌う。一方、EW&Fを意識した快活なファンクやファルセットが活きるバラードは相性抜群。リアル・シング“Children Of The Ghetto”のカヴァーは裏ハイライトだ。 *林

 

PHILIP BAILEY Inside Out Columbia/ソニー(1986)

マドンナやデヴィッド・ボウイで当てた80sポップ職人としてのナイル・ロジャースに全編を託した世俗ソロ3作目。過去作のブラコン~ポップ・ロック感覚を継承しつつシステムのミック・マーフィーらが書いたエッジーな“State Of The Heart”などでアグレッシヴに迫った内容は、結果的にEW&F復活への橋渡しに。ボビー・ナン作のスプレンダー風な曲もある。 *林

 

PHILIP BAILEY Dreams Heads Up(1999)

ルーツのジャズに回帰したヘッズ・アップ第1弾。当時EW&Fにいたモーリス・プレジャーも制作に名を連ね、旧知のジョージ・デューク、ランディ・ブレッカー、ジェラルド・アルブライト、グローヴァー・ワシントンJrらを招いてアーバンに決め込んだ内容は直球のスムース・ジャズだ。EW&F“Sail Away”の再演やヴァン・モリソン“Moondance”のカヴァーも含む。 *林

 

PHILIP BAILEY Soul On Jazz Heads Up(2002)

ジャズ回帰作だが、現EW&Fのマイロン・マッキニーも関与した本盤では、ジャズ名曲も含めてソウル寄りの表現でカヴァー。ジーン・マクダニエルズ作“Compared To What”やEW&F“Keep Your Head To The Sky”を歌うニュー・ソウルとゴスペルの感覚、ジョー・ザヴィヌルやチック・コリアの曲をパーカッシヴなビートで聴かせる内容は、今回の新作に直結するものだ。 *林

 

NATHAN EAST Reverence YAMAHA(2017)

数ある客演作を代表して近年の一枚を紹介。フィリップのコロムビア期ソロ3作すべてでプレイし、EW&Fとフォープレイ相互の盤でも共演歴がある重鎮ベーシストのソロ作。ここでも2曲のEW&Fカヴァーにフィリップが馳せ参じ、メロウな“Love's Holiday”にて“Can't Hide Love”も織り交ぜたコーラスを聴かせる。一方の“Serpentine Fire”はEW&Fの他メンバーも伴って賑やかに。 *出嶌