Mikiki編集部の田中と天野が毎週お送りしている洋楽連載〈Pop Style Now〉。〈2019年上半期洋楽ベスト・ソング10〉の記事はご覧いただけたでしょうか? 今回はその続編かつ連載の特別編として、タワーレコードの洋楽好きスタッフたちが選ぶ、個人的な〈上半期洋楽ベスト・ソング10〉を掲載します。
インディーからエレクトロニック、ラップ、K-Pop、メタルまで、好みのジャンルも部署もバラバラな9人が選び、コメントを書きました。なお、掲載順は編集部に届いた順なので、特に意味はありません(笑)! それでは、ぜひ記事の最後までお楽しみください(末尾には全曲をまとめたカオスなプレイリストもご用意しています)。 *天野
TOWER DOORS・小峯崇嗣が選ぶ10曲
1. Loyle Carner feat. Jorja Smith ”Loose Ends”
サウスロンドン出身のラッパー、ロイル・カーナーの最新セカンドアルバム収録曲であり、リードシングルでもあるジョルジャ・スミスをフィーチャリングさせた本楽曲。
イントロからジョルジャ・スミスの妖艶で天使のような歌声とシンプルなピアノの旋律。そこへ交わるロイル・カーナーの優しさを包み込んだフローとリリック。初めて聴いたときの衝撃は忘れられません。終始鳥肌がおさまらず、忘れていた温もりを思い起こしてくれるようで、感無量になる1曲でした。
2. Raveena “Nectar”
NYを拠点に活動するR&Bシンガー、ラヴィーナは、2017年にデビューEPである『Shanti』をリリースしたことで注目を集めました。そんな彼女のファースト・アルバム『Lucid』より”Nectar”を選曲しました。
”Nectar”は、煌びやかで浮遊感たっぷりな曲調と、夢見心地な気分を味わえるような彼女の美声に酔いしれる、心地の良い1曲に仕上がっています。アルバムも全体的に、現行のベッドルームミュージックに呼応するようなレトロな雰囲気を感じさせるサウンドで、彼女が作り上げるカラフルで美しい世界観に浸れます。
3. Dijon “Cannonball”
LAを拠点とするシンガーソングライター、ディジョンのデビューEPである『Sci Fi 1』より、”Cannonball”。
全体的にアコースティック・ギターの弾き語りを基調に、彼が儚くも温かさを帯びた声で綺麗に歌い上げる、心にじわじわと感動が広がっていく1曲になっています。現行のエモラップに通じるような部分と、ケヴィン・アブストラクトやzack villereのようにフランク・オーシャンの『Blonde』に漂う空気感を昇華し、新たな音楽シーンを築き始めている若手アーティストの音楽と呼応する作品に仕上がっています。
4. black midi “bmbmbm”
サウスロンドンを拠点に、キング・クルールやアデルなどを輩出した名門ブリット・スクール出身の弱冠19~20歳の4人組バンド。つい先日の6月21日にデビューアルバム『Schlagenheim』をリリースし、話題となりました。
その収録曲より、“bmbmbm”をピックアップしました。彼らがブリット・スクール時代にセッションをして、初めて〈曲と言えるもの〉を完成させたのがこの曲だそうです。
ポストパンクや、マスロック、ノイズ、インダストリアル、ジャズ……どんな音楽にも当てはまるが、そうではない、なんとも形容できない、ビックバンを起こしたかのようなエネルギーが詰まりに詰まった1曲です。
僕自身、イギリスのブライトンにて開催された〈The Great Escape〉にて一足先にライブを観てきましたが、やはり言葉に置き換えることのできない音楽でした。ライブを観ている最中は、脳みそが中でグツグツ煮えたぎるようで、新境地にでも行ってしまうかのような感覚に至りました。
5. Kevin Abstract “Peach”
ブロックハンプトンのリーダー格でもある、ケヴィン・アブストラクトが2016年にリリースした『American Boyfriend: A Suburban Love Story』以来となる、新作セカンドアルバム『ARIZONA BABY』をリリースしました。
個人的に今回のリリースの仕方が面白いと思っていて、最初今年の4月に『ARIZONA baby』として3曲のシングルでリリース。その翌週には『Ghettobaby EP』として3曲追加し、リリース。最終的にその翌週にアルバムとしてリリースしました。
そのアルバム収録の”Peach”は、最近コロムビアと電撃契約し話題にもなったドミニク・ファイクをフィーチャリングしており、全体的に夏の夕暮れを想起させるような爽やかなポップナンバーに仕上がってます。冒頭からファイクの淡い歌声と、シンガロングしたくなる歌メロ。その後から交わるケヴィンの流れるようなラップのフローがとても心地良いです。
中盤から終盤にかけて、ブロックハンプトンのメンバーでもあるJOBAとbearfaceの掛け合いもたまりません。(とくにbearfaceファンにはたまらないです。)
6. Erika De Casier “Do My Thing”
コペンハーゲンを拠点に活動をしているプロデューサー/SSWであるErika De Casierのファーストアルバム『Essentials』より、“Do My Thing”を選曲しました。
90年代のG・ファンクやR&Bテイストを感じさせるメロディと、キャッチーさを兼ね合わせた楽曲に仕上がっています。ミステリアスな曲調の中、ウィスパー気味に発する彼女の清らかな歌声がマッチして、とても心地良いです。
ミュージックビデオの90年代的ダサさがまた面白くていいと個人的に思ってます。ちなみにこのミュージックビデオは、彼女の友人であるSmerzのCatharina Stoltenbergと共作したそうです。90年代のアメリカのヒップホップのMVに影響を受けたそうで、今回はそれを自分のスタイルで作ってみたかったとのこと。
7. Feye Webster “Pigeon”
アメリカのアトランタを拠点に活動する21歳の女性SSW、フェイ・ウェブスターの3枚目のアルバム『Atlanta Millionaires Club』。その収録曲の中でも、”Pigeon”が個人的にツボでした。
初夏の青空の下、爽やかな風で青々とした新緑の木々たちが靡いている目の前で、この曲を聴きながら寝そべってゆったりとした時間を過ごしてみたいです。USインディー風味を程よく感じさせつつ、フォークやジャズ的要素も織り交ぜた素晴らしい楽曲に仕上がっています。
個人的にはライブで彼女のヨーヨーをしている姿を是非この目で見てみたいです。
8. Arlo Parks “Cola”
ロンドン出身の18歳の新鋭SSWのアーロ・パークスのデビューEP『Super Sad Generation』の冒頭を飾る”Cola”。この曲自体は彼女のデビューシングルとして去年リリースされ、話題となりましたが、改めてEPが出たのでピックアップしました。
終始シンプルなベースラインとミドルテンポのドラムを繰り広げながらも、彼女の消え入りそうなほど儚くも美しい声が入り交じり、ダウナー調でメランコリーを感じるR&Bソングに仕上がっています。
black midiと同じく、〈The Great Escape〉でアーロ・パークスの貴重なデビューライブを観てきました。現地の会場はパンパンで、デビューライブとは思えない素晴らしいパフォーマンスを披露していました。
9. Christian Alexander “Summer '17”
イギリスの北部の小さな町、プレストンより現れた、ローファイベッドルームポップを奏でる若き21歳のSSW、Christian Alexander。そのデビューアルバム『Summer '17』のタイトルソング”Summer '17”。
ギターと彼の歌声のみという実にシンプルな曲ですが、個人的にはこの曲に心奪われました。現在各地でシンクロニシティのように、フランク・オーシャンの『Blonde』に影響を受けた若手アーティストが現れています。彼もその一人で、周りには何もコミュニティが存在せず、YouTubeで出会ったタイラー・ザ・クリエイターやフランク・オーシャン、マック・デマルコ、ブラッド・オレンジに影響を受け、自分のベッドルームにてDIYでこのアルバムを作り上げたそうです。
10. Connie Constance “Bloody English”
ロンドンを拠点に活動するさまざまなジャンルを縦横無尽に渡り歩くSSW、コニー・コンスタンスのデビューアルバム『English Rose』の中でも、一番心打たれた楽曲が”Bloody British Me”でした。
ロンドンのじとじとした曇り空を表現したかのようなダークな雰囲気で、キング・クルールのようにジャンルを凌駕するとてつもない才能を感じる楽曲です。時折聴かせる彼女のラップのフローや、ソウルフルで掠れた声もクールでたまりません。
またこのアルバムの1曲目をザ・ジャムの”English Rose”のカバーで始めるあたり、センスの塊にしか感じません。
経理部・本田昇平が選ぶ10曲
一応順位振りましたけど、順不同です(笑)。
1. Billie Eilish “bad guy”
聴く側のジャンル嗜好とかお構いなしにズカズカ入ってくるレベルのポップスターって久々です。
2. Thom Yorke “Twist”
ひんやりとしたヴォーカルチョップ、カットアップされたリズムに浮遊感のあるシンセとトムのヴォーカル、今回も最高です。
3. KH “Only Human”
Four Tetの変名、Nelly Furtadoネタ。いいです。
4. Tyler, The Creator “GONE, GONE / THANK YOU”
達郎さんサンプリングとか、最高だなって。
5. Vampire Weekend “2021”
細野さんサンプリングとか、最高だなって。
6. James Blake feat. Moses Sumney & Metro Boomin “Tell Them”
James Blake とMoses Sumneyなんていいに決まってます。
7. O Terno feat. Shintaro Sakamoto & Devendra Banhart “Volta E Meia”
坂本さん参加で不気味さの増したラテンムード歌謡って感じでいいです。
8. Francesco Tristano feat. U-zhaan “Pakuchi”
軽やかな東京スケッチ集の中で、特にこのU-zhaanとの曲が好みでした。
9. Underworld “Listen To Their No”
UW節炸裂、この突き抜け感は唯一無二。
10. SebastiAn “Thirst”
曲はもちろん、MVがすごくいいです。
情報システム1部・望月貴が選ぶ10曲
(もちメタル)
1. Avantasia “The Raven Child”
Hansi Kürsch(Blind Guardian)が静かにオープニングを飾り、ライブでは若干イジられ気味のJørn Landeのド迫力ボーカルが結局全部持っていくというAvantasiaファンからしたら堪らない10分越えの大曲。パフォーマンスも曲展開も文句なし!
2. Dream Theater “Barstool Warrior”
今作は全体を通してJohn Myungのベースの音抜けが良く特にこの曲ではそれが顕著。3:40過ぎのスローパートでは崇高なメロディの下でセンス抜群のフレーズを奏でて曲の格式を高めているのが聴きどころ。ここへきてDTの名作誕生。
3. Devin Townsend『Empath』全曲
バンド形式から解き放たれ、やりたい放題した作品といった印象。いつもの咆哮の後に重厚な女声クワイア、強力なブラストビートの後に突然EDM。時にシンフォニック、時にブラックメタル。〈Empath〉とは〈共感〉のことらしいので、ちゃんと共感できたら勝ち!
4. Majestica “Above The Sky”
SabatonのTommy Johanssonがバンド名をReinXeedからMajesticaに変更して奏でる今どき珍しいどストレートなメロディックスピードメタル。まだまだネタ切れ感無し! 引退して大工になったはずのUlrich Kuschが参加してるのが嬉しい。
5. Myrath “Wicked Dice”
疾走感のある曲が続いた後に来る重くてミドルテンポのこの曲がお気に入り。AdagioのKevin Codfertがプロデュースしているからかどこか〈クサさ〉がチラホラ顔を出しているのも寧ろ高評価。
6. Children Of Bodom “This Road”
『Are You Dead Yet?』の頃に戻った!! 特にオープニングを飾るこの曲は文句無しにカッコイイ。新加入のDaniel Freybergの影響も感じられ、個人的にはリズムセクションの二人のタイトさアップが高評価!
7. Enforcer “Die For The Devil”
イントロにDef Leppard。次にAnvil+NWOBHMで、最後にLAメタル風味を追加して完成。とりあえずかっこいい!
8. The HU “Wolf Totem”
Dream TheaterのJordan Rudessがインスタで投稿していたのを見て、即チェック。モンゴルのバンドということで馬頭琴や、トブショールが登場。さらにボーカルはホーミーをフィーチャーしていて、ひたすら重くシリアスな雰囲気のミッドテンポの中ににどことなく感じるモンゴルの雄大さがなんとも言えない世界観を形成している。
9. Whitesnake “Slide It In (US Mix 2019)”
昨年のMegadethの1stリマスターに匹敵する素晴らしい出来。US Mixのタイトル曲は、John Sykesの華やかなギター効果で改めてこのバンドのカッコ良さを認識。さらにNeil Murray、Jon Lord、Cozy Powellと、ラインナップが渋滞。
10. Paul Gilbert “Love Is The Saddest Thing”
ここ最近のソロ作品の中では久しぶりに〈お?〉ってなる。アルバム全体的にレイドバックした大人のリラックス空気感の中で4曲目のこの曲はテクニックとメロディのバランスが絶妙で、聴いていて心地よい。
情報システム1部・小峰隆由貴が選ぶ10曲
1. Two Door Cinema Club “Satellite”
2. Dan Bremnes “Scars”
3. Cody Dear feat. Jada Banks-Mace “Promposal”
4. James TW “You & Me”
5. Rukhsana Merrise “Today (PJ Morton Version)”
6. Lizzo “Juice”
7. The Strumbellas “I'll Wait”
8. Mac Ayres “Better”
9. Dan + Shay “Speechless (Acoustic)”
10. James Bay “Bad”
2019年上半期ベスト10って事ですが、もういきなり企画を無視して10曲コンパイルしますよ!
もちろん上半期に出た曲から厳選するけどせっかくなんで若かりし頃によく作った
オムニバステープよろしく全体通して気持ちよく聴ける様にプレイリスト形式で紹介します。
だから順位は気にすんな! でも1位の曲は一番最後ね!
選曲して並べた結果、テーマは〈前向きな1日〉となってます。
まず最初はTwo Door Cinema Clubの曲から。
おどけたオープニングでどこが前向きじゃ!と思うも、早々に強力なフックのサビ来て一気にテンションMAX。気づいたら手拍子。ほらもう前向き。
つぎ、Dan Bremnesは曲調や声からイケメンが溢れ出してます。
声が爽やかってずるいよな。(←後向き)
続いてはアーバンなシティポップに寄せてCody Dearの一曲。
この曲に出てくるアーティスト名を聞いてイイねとなる人推定多数。
みんな夜通しマイケル聴いてたよね!
そしてJames TWの〈君と僕の歌〉。
ずっと一緒に居たいんだよね。うん前向き。
つぎのRukhsana Merriseで〈A面〉終了です。ピンとくるアナタ、同世代です。
一旦ここでスロー目の曲を入れとくんですよ。えぇ、王道です。
しかもPJ Mortonとのデュエットで明日のために今日を生きると。
これを前向きと言わずして何と言う。
さぁ、もう〈B面〉ですよ。トップはLizzo。
この人、ライブで見たら本当面白い。
自分の体型をむしろ武器にしてる。そう、前向き。
そろそろ仲間を呼んでシングアロングしたくないですか?
はい、そこでThe Strumbellas。I'll wait, I'll waitと待つ事さえ前向き。
でも熱が入り過ぎたので、ちょっとクールダウン。Mac Ayres。
あれ? クラクラしてきたかな?てな感じで始まる。
このゆるーいグルーヴで誰もが気づけばスローに前向き。
そのままDan + Shayのお兄さんたちが、明日に向かって幸せな気分にさせるメロディを届けます。(歌詞は無視して前向き)
さて、上半期前向き洋楽プレイリストの閉めを飾るのはJames Bay、涙の前向きラブソング。
前向きになるにはどん底過ぎる、彼女の死を乗り越えるという悲しくも美しく前へ進もうとする男の歌。
あぁ、もう涙が止まらない。
皆さんお元気で~。
TOWER RECORDS ONLINE・諏訪貴則が選ぶ10曲
元来の保守的な聴き方に加えて、回顧モードに入ってしまったので、新譜のセレクトにもその影響がでた2019年の上半期。
1. Aldous Harding “Damn”
絶好調オージーシーンが生んだ歌姫(Hatchieでは無い)。Nicoが憑依したかと思うくらい美しい1曲。
2. Cate Le Bon “Home To You”
アヴァンポップ大好き。昨年のコナン・モカシンに続くメキシカン・サマーからのナイスなリリース。
3. Working Men's Club “Bad Blood”
ダサいバンド名と薄っぺらなサウンドだからこその信頼感。シングル1枚で消えても許せるけどヘヴンリーと契約した模様。
4. Crack Cloud “The Next Fix”
ぶっ飛んだザック・ゴンドン(Beirut)がThe Clashをリミックスしたような展開に引き込まれる。
5. Vanishing Twin “Magician's Success”
アヴァンポップ大好きその2。〈まんまStereolabじゃないかっ!〉ていう野暮な意見は言わない約束。
6. Sleaford Mods “Discourse”
おっさん2人がこのトラックを真剣に製作してるところを想像すると倍楽しい。
7. KH “Only Human”
ユアソンのJxJxがラジオで選曲していたのを聴いて一発で気に入ったFour TetがKH名義で発表した曲。Radio Editが好み。
8. Buttechno “Dubber Funk”
彼らしい不穏な音色とタイトルが示す通りのダビーな処理がカッコいい。
9. Solange “Dreams”
私みたいなインディーリスナーからするとSolangeはこちら側の人なんじゃないかと勘違いさえしてしまう。
10. Negative Gemini “Bad Baby”
キアヌ・リーヴスがレーベルTを着るほど(あの写真は本物?)今イケてるレーベルのひとつ100% ELECTRONICAの紅一点。アナログのリリースが今年入ってからだったのでギリギリランクイン。
Mikiki編集部・高見香那が選ぶ10曲
Jay Park “Feng Shui”
BLACKPINK “Kill This Love”
Peggy Gou “Starry Night”
PENTAGON (펜타곤) “신토불이 (SHA LA LA)”
benny blanco, Tainy, Selena Gomez & J. Balvin “I Can't Get Enough”
이달의 소녀 (LOONA) “Butterfly”
Mommy Son, ZiorPark, Wonstein & Kim Seungmin “Noise”
DEAN “Howlin’ 404”
Sisso “Mateso”
SUNMI (선미) “Noir (누아르)”
〈上半期の私をアゲ↑てくれた〉極私的な10曲、順不同です。興味が向き続けているK寄りなラインナップですが、特筆したいのは、東アフリカのストリートで生まれた新進ダンス・ミュージック/カルチャー、シンゲリの代表的プロデューサー・Sisso(シッソ)。速すぎる! 狂ってる!と、日本でもとっくに注目している方もおられますが(ケンモチヒデフミさんとか)、このシンゲリが本当に狂っている。シャンガーン・エレクトロに通じるビート、と言われてますが、もっと速い気がしますよね。現地のライヴ映像を観てみると凄まじい盛り上がりで、高速シンゲリ・ラップする子どもたちの動画とか、シビれます。〈こんなおもしろいものがあるのか!〉と、プリミティヴな気持ちで興奮しております。東京でシンゲリがかかるパーティーとかあるんでしょうか? 身体持つか不安ですが。
Mikiki編集部・天野龍太郎が選ぶ10曲
〈PSN〉の上半期ベスト・ソング10は、洋楽シーン(そんなものがあるとすれば、ですが)全体を見渡しつつ、バランスを考えて選んだつもりです。そこで取り上げていないものを優先しながら、外しちゃったら嘘になる、と感じた曲だけはあえて重ねて選んでいます。ただブラック・ミディは特別すぎるので、選外としました。ラテンもK-POPも選べなかった……。
1. ドクター・ジョンのセカンド・ライン
自分でスタッフのみなさんに〈今年の洋楽ソングを選んでください〉と頼んでおきながら、いきなりルールを無視しました。ごめんなさい。ただこれが今年聴いた音楽のなかで、いちばんよかったものなので。6月6日にこの世を去ったドクター・ジョンの、ニューオーリンズでの葬儀のパレードの様子です。底抜けに明るくて楽しげなのに、観ているとなんだかうるっときちゃいます。
The Dr. John second line in New Orleans yesterday. pic.twitter.com/OJO38S1QCj
— Dust-to-Digital (@dusttodigital) 2019年6月8日
2. 21 Savage feat. J. Cole “a lot”
2018年末の曲(ビデオは2月に公開)なので、これもちょっとルール違反なんですが、今年繰り返し聴いたラップ・ソングがこれ。リリックがすばらしいんです。〈何人の黒人が死んだ?(たくさん)〉。痛ましい一曲です。
3. Lil Uzi Vert “Free Uzi”
4位のビヨンセがメイズのカヴァーで、3位のこれはG・ハーボのビートジャッキング。ポップ・ミュージックのダイナミズムを感じます。ここでのウージーのラップは、間違いなく2019年のベスト。
4. Beyoncé “Before I Let Go”
詳しくは〈PSN〉の上半期ベスト・ソング10のテキストをお読みください。忘れられない一曲ですが、太すぎる声と遅れ気味なノリのラップがビヨンセらしくて、ちょっとおもしろいんですよね。
5. slowthai “Nothing Great About Britain”
4位に同じですが、ロンドンのアンダーグラウンドの音をまるごと飲み込みながら、パンクとしか言いようのないスピ(リ)ットを2019年の英国に吐きかけたのがスロウタイだと思います。
6. Big K.R.I.T. “K.R.I.T. HERE”
〈PSN〉でも取り上げました。伝統と革新がせめぎ合ったビートがすべてで、〈K.R.I.T.こそがサザン・ヒップホップのキング!〉って言いたくなります。
7. T.I. “Fuck Nigga”
〈ブラックフェイス・セーター〉を売り出して、レイシズムだ、と糾弾され、不買運動が起きたグッチ。にもかかわらず、元ボクサーのフロイド・メイウェザーは〈俺はグッチを買うぜ〉とガン無視。T.I.が〈ふざけんじゃねえよ〉とキレたのがこの曲です。ザ・ゲームの“West Side”もそうなんですが、中堅どころのラッパーが気を吐いている曲を聴くと、最高な気分になりますね。
8. SOPHIE “Is It Cold In The Water? (Flume & Eprom Remix)”
ミックステープ『Hi This Is Flume』から。ラスティの『Glass Swords』(2011年)を初めて聴いたときの興奮を思い出させてくれました。音こそがすべて。
9. Weyes Blood “Andromeda”
10曲中唯一のインディー・ロックです。これも連載で取り上げましたが、ベストのほうには入れられませんでした。じわっと広がるサウンドスケープに、聴き手を誘惑するような歌とメロディー。うっとりします。
10. Polo G feat. Lil Tjay “Pop Out”
最後にヤングなラッパーの曲を。シカゴのポロ・Gとブロンクスのリル・ティージェイのヒット・ソングです(ビルボード・ホット100で11位)。最近はNBA・ヤングボーイの“4 Sons Of A King”とYBN・オールマイティ・ジェイの“Disappear”をよくYouTubeで聴いています。
TOWER RECORDS ONLINE・青木正之が選ぶ10曲
1. Peggy Gou - Starry Night
2. Johnny Utah - Honeypie
3. Tame Impala - Borderline
4. Nightmares On Wax feat. Kuauhtli Vasquez & Wixarika Tribe “Back To Nature (Ricardo Villalobos Back To Earth Mix)”
5. Moodymann “I'll Provide”
6. YG feat. Tyga & Jon Z “Go Loko”
7. Flava D “Return To Me”
8. Toro Y Moi “Ordinary Pleasure”
9. Baltra & 박혜진 Park Hye Jin “Ahead Of Time”
10. Denzel Curry “RICKY”
2019年上半期、印象に残ってよく聴いたのがこちら。アジアのアーティストや女性アーティストの活躍が目につきましたが、その中で抜きん出ていたのがペギー・グー。オーソドックスで伝統的なハウス・トラックながら、彼女のヴォーカルが入った途端マジックが起こり魅力が倍増。決して歌が上手い訳ではありませんが、気負いのない歌唱がなんとハマることか! そして何気なくYouTubeで再生して病みつきになったのがジョニー・ユタ。マック・デマルコに通じるこの2分半の脱力ポップ・ソングはサビの中毒性がヤバイです。続くテーム・インパラは空間に広がるシンセに、ケヴィン・パーカーのファルセットが溶け込む桃源郷のような曲。音の響きだけなら気持ちいいけど、歌詞は成功からくる代償なのか辛い状態が推し量れる内容で切ないんです……と、ここまでが頻繁に再生した3曲です。
残す7曲も素晴らしく、ナイトメアズ・オン・ワックスを淡々としながら15分の呪術的なミニマル・ハウスへと料理したリカルド・ヴィラロボス、ぶっ飛んだキックの音と曲構成にらしさを発揮したムーディーマン、マリアッチ要素を入れつつどこかクールで凄みを効かせるYG、初公式ドラムンベース曲となったUGKの女帝フレイヴァ・D、ディスコ/ブギーにシフトして開放的になったトロイ・モア、ニューヨークを拠点とするバルトラと韓国ソウルで活躍する才女Park Hye Jinのコラボによる内省的なハウス、父親から教えを力強くラップするデンゼル・カリー、どれも病みつきになるイイ曲で甲乙つけ難い!
Mikiki編集部・田中亮太が選ぶ10曲
1. Powder “New Tribe”
2. Kasper Marott “Drømmen Om Ø (Forever Mix '19)”
3. New Jackson “The Night Mail”
4. Peggy Gou “Starry Night”
5. Bambounou “Temple”
6. Cherushi “Nobody's Fool (Vocal Version)”
7. Sascha Funke & Niklas Wandt “Lobotomie”
8. K-Lone “Sine Language”
9. Octa Octa “Loops For Healing”
10. Agrippa “Spice Raiders”
この半年、そういや夢中になって聴いていたのはエレクトロニック・ミュージックばかり。というわけで、自分がいたダンスフロアに良い瞬間を作ってくれた曲や、一緒に夜遊びしてくれる友だちがオススメしてくれた曲を中心に選びました。上位はテクノ/ハウスの〈THE アンセム〉といった感じですが、リスナーとして熱心に追っているのは、いわゆるベースと言われるようなサウンド。特に5位にチョイスしたバンブーヌーをリリースしているXL傘下のレーベル、ホワイティーズのカタログには、昨年からやられっぱなしでした。エクスペリメンタルでパンキッシュで、インディー耳で聴いても最高です。クラブ・ミュージックの新たな潮流を追っていく連載をMikikiで企画できないかな……とは考えているところ。