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【Pop Style Now】第65回 トリッピー・レッドのエモ・ラップ話題曲、ブレイズの復活曲など、今週の洋楽ベスト・ソング5

2019年11月15~22日

【Pop Style Now】第65回 トリッピー・レッドのエモ・ラップ話題曲、ブレイズの復活曲など、今週の洋楽ベスト・ソング5

天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野が海外シーンで発表された楽曲から必聴の5曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。いよいよ第62回グラミー賞のノミニーが発表されましたね」

田中亮太「ビリー・アイリッシュとリゾが同じく主要4部門でノミネート。この2人が〈2019年のポップの顔〉だったことに異論を挟む者はいないでしょう! 彼女たちが受賞するのは当然として、伏兵のリル・ナズ・Xがどれだけ食い込むかってところが大きな見どころでしょうか」

天野「今年はボン・イヴェールやアリアナ・グランデ、ラナ・デル・レイ、テイラー・スウィフトなどなど、僕が大好きなアーティストや作品がちゃんとノミネートされていて、ポップ・ファンとしてうれしい(笑)。〈えっ、なんで?〉みたいなノミネートが毎年多かったんですけど、今年はちゃんとシーンからズレていない感じがしました」

田中「授賞式は現地時間で2020年1月26日(日)の開催。その模様は、日本でもWOWOWで生放送されますよ。有休を取って観ましょうね。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

 

1. Trippie Redd “Who Needs Love”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉は新進気鋭のラッパー、トリッピー・レッドの“Who Needs Love”! 亮太さんは今週、〈SOTWナシ〉とまで言っていましたが……(笑)」

田中「そうなんですよ。ピンとくる曲がなくて」

天野「もう! インプットが足りていないんじゃないですかっ!? ポップ・シーンを追いかける連載なのに……。それは置いておいて、この曲はトリッピー・レッドの新作ミックステープ『A Love Letter To You 4』からのリード・シングルです。ミックステープは先週末、リリースされました。彼は、いわゆるエモ・ラップ・シーンを代表するラッパーで、米オハイオ州カントン出身の20歳。トラヴィス・スコットとの“Dark Knight Dummo”(2018年)などのヒット・ソングで知られています。シックスナインや、いまは亡きXXXテンタシオンといったエモ・ラッパーたちとの確執でも悪名が高くて(笑)」

田中「何度か逮捕もされているようですね。それにしても、この〈愛なんてくそくらえ、そんなもの俺はいらねえ〉と繰り返すやけっぱちなラップはすごい。ギターのアルペジオが印象的な、スカスカでダウナーなトラップ・ビートとあいまって、強烈な感じ。まあでも、僕にはこのよさはわからないかな……」

 

2. Braids “Eclipse (Ashley)”

田中「2位はブレイズの“Eclipse (Ashley)”。カナダ、ケベック州モントリオールを拠点にするアート・ポップ・バンドの新曲ですね。フロントウーマンのラファエル・スタンデル・プレストンはブルー・ハワイのメンバーとしても知られています。彼女のビョークやフィーヴァー・レイを彷彿とさせる歌声が印象的なんですよね」

天野「ひさしぶりの新曲ですね。2011年のファースト・アルバム『Native Speaker』のときは、アニマル・コレクティヴがよく引き合いに出されていました。当時はエレクトロニクスを取り入れたサイケデリックでトリッピ―なサウンドが特徴で、ディアハンターのブラッドフォード・コックスも絶賛していましたね」

田中「懐かしいですね。とはいえ以降の彼女たちは、エクスペリメンタルな志向性は変わらずも、ニューエイジやドローン、ポスト・クラシカルのサウンドを採り入れながら、独自の音楽性を磨き上げてきました。この“Eclipse (Ashley)”も、序盤のリリカルなピアノとスケール感の大きなドラムのコンビネーションが素晴らしい!」

天野「ゆっくりと展開していく曲なので、MONOやシガー・ロスなど、ポスト・ロックのリスナーにも聴いてほしい一曲。ちなみに曲名の〈Ashley〉とは、ラファエルの親友であるアシュリー・オブスキュラのことで、彼女と一緒に皆既日食を見た経験から生まれた曲だから、こういうタイトルがつけられているんだとか。ブレイズは来年、4作目となるアルバムのリリースも控えているようです。楽しみですし、ぜひライヴも観たいですね!」

 

3. Summer Walker, Chris Brown & London On Da Track “Something Real”


天野「3位はサマー・ウォーカーとクリス・ブラウン、ロンドン・オン・ダ・トラックのコラボレーション・シングル“Something Real”。クリス・ブラウンは元恋人のリアーナを暴行した問題があるので、連載で取り上げたり、プレイリストに曲を入れたりするのは避けてきたのですが……。とはいえ、サマー・ウォーカーはやはり今年の顔だと思うので、曲の魅力も込みで選んでみました」

田中「サマー・ウォーカーはジョージア州アトランタのシンガーですね。10月にリリースされたデビュー・アルバム『Over It』は、いまだにヒット中。特にファースト・シングル“Playing Games”は、ビルボートのR&Bチャートで2位を記録していて、今年を代表する一曲ですね」

天野「そうですね。クリス・ブラウンはヴェテラン・シンガーなので説明は省きますが、ロンドン・オン・ダ・トラックについてはちゃんと紹介しておきます。彼はサマーと同郷、アトランタのプロデューサーで、特に同じアトランタのラッパー、ヤング・サグの楽曲を手掛けていることで知られています。2チェインズの作品もやっていますし、米南部ヒップホップ・シーンを代表する売れっ子ですね。〈We got London on da Track〉というプロデューサー・アタグは、ラップ・ファンなら一度は聴いたことがあるのでは?」

田中「そんな3者のコラボ曲は、バウンシーなヒップホップ・ソウル。トラップ色は抑え目で、90年代後半~2000年代初頭のR&Bを思い出させるような、バウンシーでファットなサウンドです。サマーとクリスの歌の絡まり合いが艶めかしく、サビのメロディーも魅力的。特にビートがなくなって、ギターやシンセサイザーをバックに2人が歌うアウトロなんて、グッときますね」

 

4. Soccer Mommy “yellow is the color of her eyes”


天野「サッカー・マミーの“yellow is the color of her eyes”が4位です。米ナッシュヴィル出身のシンガー・ソングライター、ソフィー・アリソンのソロ・プロジェクトで、2018年リリースのファースト・アルバム『Clean』が高く評価されました」

田中「生々しい手触りを残した音作りと、物憂げな歌声が魅力の傑作でしたよね。今年の1月には来日公演も実施。僕も足を運んだんですけど、ライヴだとアルバムのグランジ―な感じは抑え目で、アーシーでフォーキーな面が強調されていました。ナッシュヴィルという出自がわかりやすかったですよ」

天野「この“yellow is the color of her eyes”は、9月にリリースされた“Lucy”に次ぐ新曲。“Lucy”も『Clean』からの飛躍を感じさせる曲でしたが、新曲は7分強という長尺に挑戦しています。それもすごくいいですね。ドリーミーでメランコリックで、楽器の音がとてもまろやかです。サーストン・ムーアやカート・ヴァイルらとの共演でも知られるハープ奏者、メアリー・ラティモアも録音に参加しているんですね」

田中「僕はベックの『Sea Change』(2002年)に似た雰囲気を感じました。アリソン曰く、彼女の母親への想いがインスピレーションになった楽曲だそうです。切なさや悲しみをなだめるような包容力を持ちながらも、その奥底に、いまにも爆発しそうな激しい感情があるところも『Sea Change』的だなと」

 

5. Maggie Rogers “Love You For A Long Time”

天野「今週最後の一曲は、マギー・ロジャースの“Love You For A Long Time”。彼女はNYのSSWで、今年の1月にグレッグ・カースティンや元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタムなどが参加したファースト・アルバム『Heard It In A Past Life』をリリースしました。一昨年には〈フジロック〉で来日もしていましたね。僕は観てないですけど」

田中「天野くんは以前からマギー・ロジャースへの評価が辛いですよね。アルバムを聴いたときも、〈めっちゃ普通、何も残らない〉みたいなこと言ってたし。僕はウェルメイドなポップ・アルバムとしてわりと好きでしたよ。そんなわけで、天野くんはこの“Love You For A Long Time”を候補曲にあげていたのが驚いたんですよ」

天野「それはただ話題になっていたから……。いや、でもいい曲だと思いますよ。エレクトロ・ポップ色を少し残しながら、そこに生楽器を取り入れてミックスするサウンドを志向したのがうまくいっている、という印象です。ちょっとカントリー・ポップ風の音作りになりましたね。なによりアルバムと比較して、メロディーがしっかり耳に残る!」

田中「〈フフフーフフフー〉というコーラスにも胸が躍りますね。ロジャースは〈この曲はあらゆる形の愛についての楽曲。新しい愛を感じるときと同じくらい活き活きとしたサウンドにしたかった〉と語っていますが、こうしたポジティヴィティーはいまの時代にすごく貴重かなと。なんだかウキウキしてきました。天野くんは新しい愛、感じていますか?」

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