インタビュー

WOLFGANG MUTHSPIEL 『Driftwood』

ECMならではの〈ジャズ〉×〈ギター・トリオ〉

WOLFGANG MUTHSPIEL 『Driftwood』

 オーストリア出身の鬼才ギタリスト、ウォルフガング・ムースピールのこの新作のすべては、アルバムタイトルに凝縮されているのかもしれない。『Driftwood(流木)』というタイトルは彼曰く「ウッドベースとドラムから生まれる木の響きと、水のように流れる私のアコースティックギター。これらが一体となったサウンドからイメージが浮かんだ」のだそうだ。ECMにおける初リーダー作となった本作の音楽を、彼自身による解説をガイドにして掘り進んでみよう。

WOLFGANG MUTHSPIEL Driftwood ECM(2014)

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 ECMはキャラ立ちのはっきりしたメロディと躍動感あふれるグルーヴのどちらにも重心を定めず「音色と響き」を追求してきた、他とは一線を画すレーベルなのは周知の通り。本作はそのレーベルカラーと彼の音楽美学がガッチリと噛み合った幸福な作品と言うべきだろう。

 「一音一音のそれぞれの響きに私たちトリオの音楽性が凝縮されているんだ。3人がどういうやり方で演奏し、音楽の中でどんな会話が行われているか。このアルバムでは、“響き”がそれらを感じ取る鍵になっているんだ」。例えて言うならば、たくさんの食材を煮て作るスープの上澄みの、複雑な旨味のようなものだろうか。

 隠し味として使われるムースピールのエフェクトを多用したエレクトリックギターも、深い味わいをよりいっそう際立たせている。

 「クラシックバッハ、故郷の伝統音楽の影響が今もあって、それらをベースにこのアルバムを作っているんだけど、エレクトリックギターをシンガーのように伸びやかに歌わせることでサウンドを多層的にできたよ」

 だがそうした“究極の一音”にたどり着くには、至高のシェフの技術が不可欠なのは言うまでもない。ギタートリオ編成の本作のために迎えたメンバーは、ともに世界最高峰の音楽家であり、多方面からリスペクトを受けているラリー・グレナディアブライアン・ブレイド

 「彼らと演奏している時、感謝の思いしかない。だから、私たちはいつもお互いをよく聴いている。良い演奏は常によく聴くことから生まれるものだしね。素晴らしいチームだと思っているよ」

 トリオが生み出す、流木の情景を思わせる豊かなサウンドには、彼ら自身がお互いを惹きつけてやまない包容力がある。じっくりと耳を傾けることで、彼らがレコーディング中に感じた音の絆の中に自然に加われる。この響きに身を委ねよう。

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