左から、Anders Jormin(ベース)©Steven Haberlein、Jon Fält(ドラムス)©三田村亮、松永誠剛(ベース)©浅田政志、Giovanni Guidi(ピアノ)©Roberta Paolucci

静けさの次に美しい音の中で過ごす

 2023年9月29日、ハンブルクの街に佇むコンサート・ホール、エルプフィルハーモニーにはECMレコードの創設者であり、コントラバス奏者であり、プロデューサーのマンフレート・アイヒャーの80歳を祝うために世界中から30名を超える音楽家たちが集いコンサートが開催されました。

 〈静けさの次に美しい音〉と云うECMのコンセプトの通り、民族音楽からジャズ、現代音楽など音楽のカテゴリーに隔てられることなく、人類の文化の結晶のような音楽が満員の聴衆を包みこみ、静けさの次に美しい音が空間と人々の心を満たしていました。バックステージではパンデミックを経て、音楽家同士の再会や新たな出会いも生まれ、新しい音楽が生まれる息吹も感じる、笑顔に溢れた時間が流れていました。

 今年、創立55周年を迎えるECM。キース・ジャレットの『The Köln Concert』は日本の天気予報でも流れているほど親しまれていますが、1969年に録音されたアブドゥーラ・イブラヒムの『African Piano』など当時、インターネットやストリーミングがない時代には出会うことの難しかった世界の音楽への入り口の役割も担ってきました。〈自分が知らないこと、まだ知らない響きの探究〉から生まれるECMの作品を聴いて育った世界各地の音楽家たちにとって、子守唄のように共通の音楽的ルーツになっている音楽もあります。また、ジャズや現代音楽だけでなく、ヤン・ガルバレク、キース・ジャレット、ティグラン・ハマシアンなどの作品にみられるように北欧やアルメニアの聖歌や古謡などを取り上げた作品も発表されていて、それは西洋文化の源流を探り、東洋と西洋の文化の交差点を見つける、もう一つのコンセプトの側面を持っています。

 そんなECMと日本とのコラボレーション・コンサートが東京で開催されます。ボボ・ステンソン・トリオをはじめECMの名作の数々を支えるコントラバス奏者アンダーシュ・ヤーミーンによる新プロジェクトとECM最新作を発表したばかりの〈トイ・ピアノ〉から音楽を始めたジョヴァンニ・グイディによる二本立てコンサート。日本が初演となるプロジェクトです。検索しても出てこない、まだ聴いたことのない音楽との出会いを楽しんで頂けたらと思っています。そして、今回のコンサートを通じてECMの哲学と日本との交流が広まり、西洋と東洋の交差点から音楽が発展していくことを願っています。ただ、静けさの次に美しい音を求めて。

 


LIVE INFORMATION
ECM Artist in concert TOKYO

2024年11月21日(木)東京・有楽町 I’M A SHOW
開場/開演:17:00/18:00

■出演
第一部
ピアノソロ:ジョヴァンニ・グイディ(ピアノ)

第二部
トリオ:アンダーシュ・ヤーミーン(ベース)、ヨン・フェルト(ドラムス)、松永誠剛(ベース)

https://imashow.jp/schedule/991/