小菅優、佐藤俊介、トゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールト――名手3人が至福の世界へといざなう
室内楽の楽しみは多種多様の組み合わせである。演奏家、作品、楽器の組み合わせ。ベートーヴェンの生誕250年のメモリアルイヤーに、ベートーヴェンを中心としたプログラムで名手3人が多彩なプロを披露する。
ピアノの小菅優の紡ぎ出す音楽は、聴き手を作品の内奥へと近づける。彼女はベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏で高い評価を得、現在はベートーヴェンのすべてのピアノ付き作品を取り上げる〈ベートーヴェン詣〉を行っている。ソナタ全曲演奏を始めるころ、ベートーヴェンに対してこう語っていた。
「以前はベートーヴェンの作品の深さ、文学的、哲学的意味を考えた場合もっと年齢を重ねてから弾くべきだと考えていました。でもソナタ全曲を演奏することによりベートーヴェンの偉大さ、人間らしさ、全体像が見えると思い、いま弾くべきだと判断しました」
ヴァイオリンの佐藤俊介はヨーロッパを拠点にモダン奏法と古楽器(オリジナル)奏法の両方で活躍し、レパートリーもバロックから現代作品まで幅広く演奏している。現在はオランダ・バッハ協会の音楽監督を務めている。
「僕は作品によって楽器を使い分けていますが、パリに移ったばかりのころに当時ベルリン・フィルのコンサートマスターをしていた安永徹さんから紹介された制作家、シュテファン・フォン・ベアのバロックとモダン楽器を使用しています。もう1台、19世紀の作品を演奏するときに使う1846年製のパリで作られた楽器も愛用しています」
このふたりは長年共演を続けている。そこに今回は同じく息の合った音楽仲間、ナチュラルホルンのトゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールトが加わり、多様なプロが実現した。オランダ出身のトゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールトは、ナチュラルホルンの世界的な奏者で、自らアンサンブルを創設したり古楽科の教授を務めて後進の指導にも積極的だ。
そんな彼らが選曲したのはベートーヴェンがホルンの性能を存分に生かし、ピアノとの協奏的で即興的な味わいを醸し出すホルン・ソナタ、変奏曲を得意としたベートーヴェンがモーツァルトの「フィガロの結婚」の主題を元に書き上げた曲に加え、そのモーツァルトのふたつの楽器の音の対話が美しいヴァイオリン・ソナタ、そして3つの楽器がドイツの奥深い森の神秘を幻想的に描き出すブラームスのホルン三重奏曲。絶妙のアンサンブルはまさに至福の世界へといざなってくれる。
LIVE INFORMATION
小菅優、佐藤俊介、トゥーニアス・ファン・デァ・ズヴァールト スペシャルトリオ
2020年5月28日(木)東京・銀座 ヤマハホール
開場/開演:18:30/19:00
出演:小菅優(ピアノ)/佐藤俊介(ヴァイオリン)/トゥーニアス・ファン・デァ・ズヴァールト(ナチュラルホルン)
https://www.yamahaginza.com/hall/event/004177/