Page 2 / 3 1ページ目から読む

誰もがハッとする曲を

 夜から朝、そして、静から動へ。生楽器の比重が高まったことで、その楽曲は飛躍的に躍動感を増し、アクティヴな印象を受ける。

 「“Runaway”はTAARくんと制作を進めていくなかで、もっと、ブラック・ミュージックの要素が欲しいという話になり、ペトロールズの(三浦)淳悟さんにベースを弾いてもらった曲です。私と淳悟さんは地元が近くて、以前から親交があり、TAARくんもLeyonaさんの楽曲制作で淳悟さんと一緒にお仕事していて、この曲は3人が一堂に会した初めての機会になりました」。

 ドライヴするベースのグルーヴ感が楽曲を引っ張る“Runaway”は、音楽活動を続けていくなかでiriとプロデューサー/プレイヤーの関係性が深まり、有機的に機能していることを象徴するダンス・トラック。WONKの荒田洸と紡がれる甘美なソウル・バラード“miracle”と、SANABAGUN.の澤村一平とOKAMOTO'Sのハマ・オカモトが旗振り役を務めた“Coaster”では、プロデューサー/プレイヤーから誘われる形で行った自然発生的なレコーディングも経験している。

 「プレイヤーの方たちとスタジオに集まって、みんなでワイワイ話しながら、セッション的に曲を作りたいと思っていたところに、一平くんとハマくんから〈一緒に曲を作ろう〉というお誘いがあったんです。ただ、そこまで時間がなかったので、LINEのグループで〈低音の鳴りがナチュラルな曲をやりたいねって〉っていう話をしながら、みんなでアイデアのやり取りをしました。そして、雛形となるトラックをもとにスタジオで楽器を入れていったんですけど、トラックに入ってる音を生音に差し替えると音質やバランスが変わって、曲の印象もガラッと変わってしまうんですよ。だからギリギリまで作業して、その仕上がりには満足していますし、それ以上にいい経験になりましたね」。

 枠組みにとらわれず、実践と実験を重ねたことでもたらされたiriの新境地。その充実した成果は、ケンモチヒデフミによるトラップ・ビートにReiのハードでファンキーなギターをフィーチャーした“Freaking”に渦巻く混沌としたエナジーが物語っている。

 「これまで〈ストイックでクール〉とか〈チルでエモい〉みたいに言われたりもして、自分としては違和感があったんです。そんな時に、曲名は今もわからないんですけど、メタルとトラップを組み合わせたトラックで女の子がラップしている曲を聴いて、今までのイメージとはまったく関係ない、誰もがハッとする曲を私も作ってみたいと思ったんです。そこでパンチの利いた歪み系のギターを同世代の誰かにお願いしようと考えたとき、真っ先に思い浮かんだ事務所の1個上の先輩でもあるReiちゃんをはじめ、私とそれぞれ繋がりのあるケンモチ(ヒデフミ)さんと(三浦)淳悟さんが加わったらおもしろいだろうなって。レコーディングでは落としどころがどうなるかわからない実験を存分に楽しみましたし、歌詞もサウンドの勢いを借りて、自分がいつも隠しているところ、自分のダメな一日を思わず見せてしまったという(笑)」。