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インタビュー

PIZZICATO ONE『前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン』小西康陽が語る、来るべきものの前夜を記録した特別な実況盤

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僕にとってのライブ盤

 今回のライブ盤を聴いて、ひとつ確信したことがある。

 シンガー・ソングライターのレコードには2種類ある。ずっと職業的な作曲家として裏方をやってきた人が一生に1枚か2枚だけ自作を歌ってアルバムを出すパターン。もうひとつは、シンガー・ソングライターとしてひたすら自分の言葉とメロディーを自身で歌い、活動を続けていくパターン。多くの人はこのアルバムを前者だと思うかもしれないが、ずっと自分自身のことを歌う曲を作ってきた小西康陽は、後者だ。僕はそう確信した。

 「自分のソングライティングについて言えば、若い頃から変わってないほうが大きいかな。昔からこういう曲ばかり書いてたんだなと思うし。全然そういうつもりで作った曲じゃないのに後から聴いてみたらその後の人生を予言してたなと思うこともすごく多い。(カヒミ・カリィに提供した)“私の人生、人生の夏”って曲の歌詞にある、〈神様が私をお試しになる〉って今のことだよな、って思いますしね」。

 このライブ・アルバム、小西康陽があえてリリースするのだから、緊張感みなぎるアート作品のような性格をイメージする人もいるかもしれない。だが、その予想はいい意味で裏切られる。このアルバムでの小西は曲間のMCや客席のくつろいだ雰囲気への応対も含めて、とても人間的で、まさにライブ(生)そのものだ。

 「僕にとってライブ盤って、曲のアンサンブルとMCの魅力が切り離せないものなんですよ。実は本番では、このレコードに入ってる10倍くらいしゃべってるんですけど(笑)。音楽だけ入ってるライブ盤って正直つまんないんですよ。人生で最初に聴いたライブ・アルバムはフォークル(ザ・フォーク・クルセダーズ)の『当世今様民謡大温習会』(68年)で、あれってほとんどしゃべりじゃないですか。ああいう楽しさがライブ盤には欲しいなと思ってるんです」。

 さらに、小西が自分にとってのライブ・アルバムの理想として挙げたのが、小坂忠とフォージョーハーフの『もっともっと』(72年)だった。

 「とにかく、トラックダウンの前も、マスタリングの前も聴き直しました。日本語で作ってるアルバムの理想形ですね。無駄がないし、優しいし、奥行きもある。すべてがすばらしいと思う。小坂忠さんは『ほうろう』(75年)ばかりが評価されるんですけど、自分のなかでは完全に『もっともっと』が最高傑作なんですよ」。

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