Page 2 / 4 1ページ目から読む

自然と流れ出てきたアルバム

 いつも通りの2年を費やした期間でこだわったポイントについての説明はこうだ。

 「今回はどれもまったく時間をかけずに作った曲で、200曲を作った。1か月かけて仕上げたものもあれば、半年かかったものもあるし、20分で出来た曲もある。10年やってきてわかったのは、ファンが好きになってくれる曲のほとんどは短時間で作られたものだってことだ。僕たちも苦心することなく、自然と流れ出るように出来た曲だね。今作ではコンセプトとして、そうやって自然に書けた曲だけを収録できるかを目標としていた。20もの違ったヴァージョンを作ってみることなく、最高の1ヴァージョンだけを作って収録するってことだね。それを目標にしたアルバムで、タイトルはそういう意味での〈エナジー〉だ。もちろん曲そのものもアップリフティングでポジティヴでエナジーに満ちてはいるけれど、僕とハワードにとっては、スタジオで湧いてきたアイデアとチャネリングする瞬間の、最初にどうやってそのアイデアを得たのかは自分でも説明できない――そういうエナジーのことを言っている。どこからともなく湧いてきた音楽やアイデアの流れを楽しんでいて、そういう状況で作業できた日は最高なんだ。だから、どの収録曲もすごく楽しく作れたよな、と振り返れるアルバムを作れて嬉しいよ」。

 そんな充実作『ENERGY』の本編は11曲で構成(+後述のEP『Ecstasy』などがボーナス収録)。今回も制作は基本的にガイとハワードだけで行われたという。

 「ハワードは歌詞とメロディー、ベースラインやコードを書いていて、音楽理論やハーモニーに長けている。そこに、起用したシンガーが彼らの考えた歌詞やメロディーも提供してくれる。ハワードはスタジオでそれに打ち込み、その反対側では僕がビートやプロダクション、サウンド、曲構成を手掛けて、ハワードたちがやっていることにも意見を言う。僕はどこに何を持ってくればいいかというアレンジが得意で、一方でハワードはアイデアをたくさん出すから、そこから好きなのを選んでくれ、という感じで作業する。個人的にはハワードはシンガー・ソングライターで、僕はプロデューサーってところだね。だから、2人で必要なことすべてを賄えるんだよ。今回は2人ともさらに腕を上げていると思う。ハワードのコードやメロディー、ベースラインなんてこれまででいちばん良いし、僕自身のプロデュース力も上達していると思いたいね」。

 作り方が変わらないからこそ、作品を進化させるのはアイデアの質にかかってくる。今作におけるチャレンジや新しいアプローチはどういったものだったのか。

 「EPではもっと多様なことを試してはいるけれど、今回はこれまでアルバムでトライしていなかった新しいジャンルに挑戦してみた。ブリック・バッシーとファトゥマタ・ジャワラというアフリカ系のアーティストを2人起用しているんだけど、2人とも英語ではなく違った言語で歌っていて、これは初めての試みだ。あと、アミーネとスロウタイを起用していて、ラッパーの起用もディスクロージャーとしては初めてだ。個人でラッパーの作品を手掛けたことはあったけれどね。新しい世界に足を踏み込んで、ハウス・ミュージックではないジャンルも試している」。