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台湾で最も名誉ある音楽賞、金曲奨とは

台湾の音楽を海外へ発信するメディア、Taiwan Beatsの記事〈A Brief Introduction to Taiwan’s Music Awards: The Moment of Glory for Musicians〉(台湾の音楽賞への簡易的手引き:ミュージシャンが栄光をつかむ瞬間)を読むと、金曲奨についてまず以下のような記述がある。

マンダリンのポピュラー・ミュージック界において金曲獎を受賞することは、ファンを増やすことや大きなステージで演奏することと同様に、ほぼ全てのミュージシャンの夢であり、スポットライトを浴びている人のみならず、舞台の裏で働く人も例外ではない。

ここで気になるのが〈マンダリン(Mandarin)〉という言葉だ。〈なんで台湾じゃないの?〉と思う人も多いかと思う。実のところ〈マンダリン〉の定義については漠然としたところも多く、台湾人でさえ理解出来ていないこともあるというので、いわんや日本人をや、である。

周りの台湾人たちによる説明に基づいた僕なりの理解をシンプルにまとめてみると、マンダリンは台湾では〈國語〉(台湾の公用語)を意味する。台湾語(中国福建省をルーツに持つ台湾独自の方言)とは違うので注意が必要だ。中華圏ではMandarinとPopを掛け合わせた〈マンドポップ(Mandopop)〉という言葉があり、台湾のマンドポップは自国のみならず中華圏のポピュラー・ミュージック・シーンを牽引してきた歴史がある。これは僕の推測だが、〈マンダリン〉いう言葉を使っているのはその自負があるからではないだろうか。

実際、金曲奨は台湾のみならず他の国のアーティストであっても応募が可能だ。Taiwan Beatsの編集長Brien Johnによると、〈応募資格を満せば、人種や国籍、使用言語すらも不問で参加が可能〉とのことで、音源が台湾で最初にリリースされ、台湾で登録された企業によって申請されさえすれば、例えシンガポール人やアメリカ人のアーティストであったとしても参加可能だという。

第30回金曲奨授賞式の模様。昨年、Leo王がラッパーとして史上初の〈最優秀男性歌手〉を受賞した

 

金曲奨の仕組み、選考方法

Taiwan Beatsの記事によると、金曲奨とグラミー賞の大きな違いはそのカテゴリーなのだという。グラミー賞が〈ジャンル〉と〈技術〉なのに対して、金曲奨は〈ヴォーカルもの〉 〈インストゥルメンタルもの〉〈技術部門〉の3つに分けられる。これら各カテゴリーがさらに細分化され、例えば〈ヴォーカルもの〉は作詞、作曲、プロデュースと枝分かれしていく。

今年開催される第31回金曲奨の特設サイトのノミネート一覧を見てみたところ、21部門もあった。マンダリン 、台湾語、客家語、原住民言語と、言語ごとに部門が設けられているのも多民族・多文化国家、台湾らしい。

選考過程はおおまかに以下のような流れとなる。

第一選考
・主催者である中華民国/台湾の行政院・文化部(日本の文部科学省相当)が各分野ごとの専門家を50人ほど選出し審査員に任命、応募作品への採点がなされる

第二選考
・第一選考で審査員から与えられた点数の合計点に基づいてランク付けがなされ、上位に残った作品が第二選考の対象となる
・50人から絞り込まれた21人の審査員によるさらなる審査がなされ、ノミネート作品が決定←今ここ

最終選考
・表彰式の朝、第二選考の審査員が再び集まり、詳細な議論をした上で最終的な受賞者の投票を行う

審査員が誰なのかは式典の日まで明かれないという。専門家ファーストで多様な視点を取り入れているところも今どきの台湾らしい。こうみると手間を惜しまず、厳正な審査が行われているということが分かる。