ジャズ・ピアニストでありながらメタラー、そして大のBABYMETALファンである西山瞳さんによる連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は待ちに待ったBABYMETAL回です。先週9月9日にリリースされた映像作品『LEGEND - METAL GALAXY (METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW)』について、BABYMETAL愛たっぷりに語っていただきます! *Mikiki編集部
BABYMETALに何か動きがあるたびにこの連載に書いていますが、前回4月はついに、何の動きもないのに連載1回分費やしてしまいました。それほど飢えていたのです。なんせ、2020年は1月に幕張メッセで感動的なコンサートがあったばかり。次はどうなるの!?というところにコロナで海外ツアーも軒並みキャンセル。これからどうなるの?と、飢餓感マックスですよ。
ということで、今月は9月9日に発売された新しい映像作品について書きます!
やっと! 書けるネタが! きた!!!
しかも素晴らしい映像作品が!!
今日は!多めです。
ということで、9月9日に映像作品『LEGEND - METAL GALAXY (METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW)』と、CDアルバム『LIVE ALBUM LEGEND - METAL GALAXY [DAY1]』、『LIVE ALBUM LEGEND - METAL GALAXY [DAY2]』がリリースされました。
BABYMETAL 『LEGEND - METAL GALAXY (METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW)』 Toy's Factory(2020)
こちらは、2020年1月25日、26日に幕張メッセ国際展示場で行われたライブの映像化&音源化で、私はこれを待っていました。特に映像!
私は2日目のみ、現場に行きました。2019年はSU-METAL、MOAMETALの2人に、アベンジャーズ3人のうち誰か1人が入るという公演体制で、国内、国外ツアーを回っていました。それが、この幕張のライブではアベンジャーズ3人全員参加、バンドは1日目が東の神(日本バンド)、2日目が西の神(海外バンド)と、究極の全部乗せライブ2日間だったんですよ。
注文していたBlu-rayディスクは発売日前日に届いていたのですが、当の私はNetflixで配信開始されたドラマ「コブラ会」にハマっており、それを観終わるまでは落ち着いて観れない……と、少し後回しにしていました。「コブラ会」もメタラー的には素晴らしい内容で、80年代風のハードロック&メタルが頻繁にかかるので、いつかこちらに書くかもしれません。
1週間遅れて映像作品を観たら、後回しにした自分を恥じましたね。想像をはるかに超えた素晴らしさで、「あれ、これでベビメタ終わっちゃわない? 大丈夫?」と不安になるぐらいの完成度の高さ、理想郷に到達した感がありました。
今回は、生々しいライブ・パフォーマンスの記録というよりは、映像作品として完成度を求めたものだと思います。
公演会場は横に広く、横長の巨大スクリーンをダイナミックに使った演出が印象的で、現場ではひたすら圧倒されましたが、会場で感じた視覚効果は、あくまでもその時その時にフレッシュな気持ちや没入感や刺激を与えてくれるもの。それが、ディスクになって編集されて並ぶと、文脈というかストーリーが持たされ、絵巻を見ているよう。もはや総合芸術の趣でした。映像作品という出口まで見据えて、こんな射程での演出だったのねと、改めてBABYMETALというチームに感動しましたよ。
今回の映像作品は、バンドはほとんど映りませんし、カットの切り替えがかなり早い印象です。とにかくBABYMETALの2人を観たい方、バンドも含めたライブ・パフォーマンスを観たい方には、少し物足りなさも感じるかもしれませんが、ショーとしてのヴィジュアルや芸術性や完成度を優先して考えた作りになっていて、そういう面では最高傑作じゃないでしょうか。
個人的にはアベンジャーズの皆さんのお顔がちゃんと映っているのが、ウホッと思いました。だって、2019年にスーパーサブ的に突然出てきて、3人とも完璧で素晴らしい仕事をしていましたから、ちゃんとそのパフォーマンスを観たいじゃないですか。
言いたい感想は銀河ほどあるのですが、ピックアップして書きます。
まずはディスク1枚目、DAY-1。
最初から映像が美しい~!! これはすでに名盤の予感です。カット割りが結構早いなという印象。
私は1日目には行っていないので、“Oh! MAJINAI (feat. Joakim Brodén)”の演出でざわついていたことは知っていましたが、これはパンチある演出ですね……(笑)。ぜひご覧になって下さい。
ライブ初披露の“Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)”は、CDで聴いていた時はアーバンな印象で、アーバン・メタルとか宇多田メタルとか言っていましたけれど、映像では引きで逆光の演出が多く、ヴィジョン演出との効果で非常に世紀末感があり、印象が逆転したと言っていいぐらい変わりました。これから音源で聴く時も印象が変わりますね。
こちらもライブ初披露でしょうか、“Night Night Burn!”のソン・クラーベのリズムに乗ってのダンス、可愛いです!!
“The One”の時、以前はずっとローブを羽織ってのパフォーマンスでしたが、マントに変わっており、会場で遠目に見てもあまり分からない部分ですが、映像で観ると前は〈使者〉という感じだったのが、完全に〈クイーン〉へ変貌しています。時間の流れと、その間に培った自信や威厳を感じる映像でした。
そしてディスク2枚目、DAY-2が凄かった。
こちらは現場で体験していたはずですが、映像作品になってまた新次元のものを観せてもらいました。
こちらもライブ初披露“BxMxC”は、会場では西の神バンドの轟音の中で、ひたすらドープな体験でした。映像でもそのドープな感じは存分に味わえます。
“ヘドバンギャー!!”のSU-METALの美しさは必見です。やばいです。参りました。この日、巨大スクリーンにSU-METALの目が大写しになる瞬間が結構ありまして、それも少し思い出しました。
何より恐ろしく素晴らしいのが、“Starlight”、“Shine”、“Arkadia”の3曲の繋がりです。
現場で感じた視覚効果は、まだその力の半分ぐらいだったんですね。映像作品として見ることで、視覚効果の威力が凄くて没入感が半端ない。
“Starlight”は最近のライブでも頻繁に演奏していたレパートリーですが、いつものレーザービーム演出が、今日はより強力だなあと会場で思っていたんですね。
続く“Shine”、会場で観ていた時も幻想的でしたが、全員の細かい表情がクローズアップされ、よりエモーショナルに。会場でも泣いて、自宅でもまた泣きました。この日、この曲だけ、さざなみのような拍手が自然発生的に湧き起こって、その現場の皆の気持ちにも感動したことを思い出しました。
そして“Arkadia”で結実。
実はこの日のライブ・レポートは「ヘドバンvol.26」に詳しく書いており、そちらもぜひ読んで頂きたいのですが、この曲だけ今までどのライブで聴いてもバタバタしているというか、めちゃめちゃ良い曲なのですけど曲の情報量が多すぎて、雑然としたライブ会場だときちんと届いていないなと思うことが多かったんですよ。それが、この日が一番音響も演奏もクリアで曲のパワーがライブで発揮されたと思いました。
この“Starlight”、“Shine”、“Arkadia”は、アルバム『METAL GALAXY』でもこの並びなのですが、映像作品になったことで3曲が壮大に繋がり、集大成というかストーリーの最終地点に到達したのだと思える、素晴らしいものでした。これだけでこのディスクを買う価値がありまくりです。
そしてアンコール、アベンジャーズ、神バンド全員揃い踏みのDAY-1“Road Of Resistance”、DAY-2“イジメ、ダメ、ゼッタイ”は、こんなの反則ですよ、泣いちゃいますよ。
現場で「観るところが多すぎて全部その情報量を追えない!! ギャー!! 目があと5セットぐらい欲しい!!」と思いながら必死に目で追いかけていたので、映像でやっと解消されました。
皆いい顔してるんですよ……。
おばさんは幸せです……。
もはや何目線かわからない状態でBABYMETALを見ていますが、とにかくこの映像作品は初めてBABYMETALを観る方も、音だけ聴いたことある方も、買って損はないです!!!
幸せになれます!! 買いましょう!!!
LIVE INFORMATION
9月21日(月・祝・昼)15:00~16:00 Facebookページにてソロ・ライブ配信
9月22日(火・祝・昼)兵庫県・神戸gallery zing(電話078-413-4888)
『Faces』発売ライブ(ヴォーカル:東かおる)
開場:13:30/開演:14:00(2sets)
価格:予約3000円/当日3500円/アーティスト割1500円
※20名限定、ご予約をお願いいたします。
9月25日(金)神奈川県・横浜 上町63(電話045-662-7322)
西山瞳(ピアノ)、吉野弘志(ベース)大村亘(ドラムス)
開演:20:00(2sets)
価格:3000円 ※学割あり
10月3日(土)、4日(日)岡山県・おかやまジャズストリート
橋爪亮督(テナー・サックス)デュオ
詳細はhttp://hitominishiyama.net/
RELEASE INFORMATION
東かおる、西山瞳『フェイシス』9月23日(水)リリース!
2013年作『Travels』に続く、東かおる(ヴォーカル)・西山瞳(ピアノ)共同名義作品の2作目がリリース決定。前作同様、市野元彦(ギター)、橋爪亮督(サックス)、西嶋徹(ベース)という、日本のコンテンポラリー・ジャズ・シーンの最重要メンバーで録音。詳細はこちら。
PROFILE:西山瞳
1979年11月17日生まれ。6歳よりクラシック・ピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I'm Missing You』を発表。ヨーロッパ・ジャズ・ファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、横濱ジャズ・プロムナード・ジャズ・コンペティションにおいて、自己のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めてストックホルム・ジャズ・フェスティバルに招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。
以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で、全世界約15,000エントリーの中から自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコード・ジャズ総合チャート1位、HMV総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自己のレギュラー・トリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『シフト』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカヴァーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、YOUNG GUITAR誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズ両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。
自己のプロジェクトの他に、東かおる(ヴォーカル)とのヴォーカル・プロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグ・バンドへの作品提供など、幅広く活動。横濱ジャズ・プロムナードをはじめ、全国のジャズ・フェスティヴァルやイヴェント、ライヴハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさの共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。