ピアニスト西山瞳が、キャリア初期の楽曲を中心とした16曲のオリジナルをピアノソロで演奏したアルバム『Songs』を発表した。

2004年の自主制作デビュー作『I’m Missing You』以来共作を含めて27作のアルバムをリリースしてきた西山瞳は、その収録曲の大部分が自身のオリジナルだ。デビューから20年が経過し、現在はCDで入手できなくなった作品も多くなったということもあり、自身の楽曲をピアノソロという形で記録しておきたい、という気持ちがあった、という。

愛用のピアノ、ファツィオリF156の美しい音色で淡々と演奏される西山瞳の曲たちには、ヨーロッパ的な洗練された叙情性と、どこか日本的、と呼びたくなるかすかな寂寥感がある。

『Songs』を制作した経緯やジャズとの出会いに始まるキャリア、そして現在と将来のことなどをたっぷりと語ってもらった。

西山瞳 『Songs』 MEANTONE(2025)

 

ファンの想い出も込められた16のオリジナル曲

――『Songs』には、2002年に作曲され、自主制作のデビュー作『I’m Missing You』に収録された“Blue Nowhere”から、2014年作曲で、今回初めて録音した“Bye Bye Blue Fish”までの16曲が収録されていますね。そもそもこの企画は、いつ頃からアイディアがあったのですか?

「けっこう前からやらないといけないな、って思ってたんですよ。ライブとかコンサートでは演奏している曲なのに、もうCDがないっていう状態が続いてたので、宿題みたいな感じで何年か思ってたんです。去年と今年『Dot』と『Echo』を出して一段落ついて、タイミング的には今かな、という感じですね。

あと、ちょうど来年でSpice of Lifeからのデビューアルバム『Cubium』を出して20年なので、区切りという意味でやってもいいかな、っていうのもあったし、私が使っているスタジオのピアノ、ファツィオリがちょうど導入から2年経って、そろそろ楽器が開いてきたから録音しようかなっていうのもありで、たまたまそういうタイミングが重なった感じです」

――選曲はお客様からリクエストを募ったんですよね。

「はい、たくさんのリクエストをいただきました。曲名だけでなく、曲にまつわるいろいろな想い出を書いてくださった方も多くて、それがすごくありがたかったです。やれなかった曲もいっぱいあるんですが、それはまたの機会に、ということですね」

――西山さん、今までに何曲ぐらいのオリジナル曲を書いておられます?

「発表したものだけでも200ぐらいはあるんじゃないかと思います」

――オリジナルをたくさん作るジャズピアニストって、最近は増えてるけど当時の日本にはあまり……。

「はい、20年ぐらい前だとあまりいなかったですね。最初のレコード会社Spice of Lifeのプロデューサーの佐々智樹さんが、ちゃんとオリジナル曲でアルバムを作らせてくれたのは、すごくラッキーなことだったな、と思いますね」

――そうですよね。最初から自分の曲をやろう、という気持ちで始めたということですね。

「そうですね。最初に自主制作したアルバムが、もう全部オリジナルだったから。それはただ単に権利の問題がわからなくて、自分の曲だけでやろうってことになったんですけど。それを聴いてもらって、オリジナルをやるっていうことを大前提として佐々さんが声をかけてくださったんです。

最初から別に何の迷いもなくオリジナルばっかりでしたね。ヨーロッパのジャズを聴いてたら、やる曲がオリジナルばっかりだから、それが普通だ、と思ったんですね」