メタラーのジャズピアニスト西山瞳さんによるメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回のテーマは、ジャーマンメタルの先駆者スコーピオンズです。結成60周年記念ライブ盤『Coming Home Live』のリリースも控えているなど、現役で活動しつづける超ベテランのベストアルバム『From The First Sting』から彼らの魅力に迫ります。 *Mikiki編集部

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SCORPIONS 『From The First Sting』 BMG(2025)

 

スコーピオンズの結成60周年記念ベストアルバム『From The First Sting』がリリースされました。古いアルバムから最新アルバムまで満遍なく収録されており、入門にもとても良いベスト盤です。

私自身もスコーピオンズはウリ・ジョン・ロート(ギター)在籍時を中心に聴いていたため、ディスコグラフィを眺めていても未聴のものが多くて、名盤『Blackout』もNHORHMをきっかけに聴いたぐらいです。このベスト盤で勉強しよう!と思いながら最後まで聴き、スコーピオンズはずっとスコーピオンズなんだなと、そんな物凄く平凡な感想を持っているところです。

60年ですからね。60年間、メンバーが変わったとしてもバンドが続き、〈ずっとスコーピオンズ〉という感想を持つほどストロングな音楽性、ファンに期待されることをずっとやり続けながら進化していくって、途方も無い道のりです。

 

ヘヴィメタルの名曲をジャズピアノトリオでカバーするNHORHMを始めて、ピアノで弾いても魅力的で、ジャズアレンジをしやすくて、しかもジャズアンサンブルをできそうなメタル曲を探しまくっていましたが、最もピアノで弾いて違和感がない曲が多いバンドが、スコーピオンズでした。

音楽の3要素には〈リズム、メロディ、ハーモニー〉がありますが、メタルの場合、通常リズムが真っ先に耳に飛び込んでくることが多い中、スコーピオンズはしっかりメロディとハーモニーが飛び込んできて、しかも曲の中で大きな変化があります。

通常、メタルのコピーをするとなると、自分の好きな範囲のバンド群を対象にしますが、私の場合、NHORHMのために(特に好きではないバンドも含め)広範囲を対象として楽曲のアウトラインを採取するということをしていました。採譜とかコピーとは書かず、〈採取〉と書いたのは、主に構成、リフ、メロディをメモしていく方法で、演奏のためではなく分析のために書き残しているからです。ちゃんとした譜面に起こすのは、曲を決めてから。

そのように広くメタル曲の構造を採取していると、歌メロディは、大雑把にですが、ワンフレーズ内でインターバルが跳躍するものは少ないです。メタルの面白い部分は、ギターリフやリズムの速さや重さなど別の部分であることが多く、そちらの個性の方が大事にされる傾向があります。しかし、歌はサビでとんでもない高音になったり、甲高いシャウトが入ったりするので、全体に音域が狭いわけではないですね。

メタルよりも古いハードロックの方が、歌メロは綺麗で跳躍も多く、ピアノで演奏するのには向いています。ハードロックのリズムの部分を先鋭化したのが、ヘヴィメタルだったりするので、当然のことですが。

 

スコーピオンズはどうかというと、私自身は、ギターリフより歌メロの方が先に思い浮かぶ。とにかく歌メロがダイナミックで、美しくて、頭に焼き付けられます。

ベスト盤収録で初めて聴く最近の曲も、その、歌がガバッと頭の中に飛び込んでくるインパクトが、聴き馴染んだ昔の曲たちと全く変わらない。このベスト盤2枚分、最初から最後までの31曲を聴き、凄い強度でそれをやり続けているバンドなのだと、改めて思いました。

〈スコーピオンズはずっとスコーピオンズ〉の原因は、勿論、クラウス・マイネがずっといるということが大きいです。メタルバンドのフロントマンである歌手がデビュー作からずっと変わらないというのは、結構珍しいかもしれませんね。

 

そのクラウス・マイネの歌唱力とクリアな歌声の要素も大きいですが、根本的に歌メロを何より大事にしているバンドなのだと感じています。

NHORHMのCDを制作している時、スコーピオンズは歌メロが綺麗なためカバーできそうな曲がありすぎて、悩みに悩み、個人的に思い入れもある”The Sails Of Charon”(邦題:カロンの渡し守)を選んでNHORHMの3枚目に収録しました。

この曲は、私が高校生の時ですが、イングヴェイ・マルムスティーンがカバーしており、そのバージョンで知った曲です。この不思議な雰囲気が強烈で、イングヴェイのバージョンを何度も聴くうちに本物も聴きたくなり、スコーピオンズとウリ・ジョン・ロートに出会いました。(イングヴェイに感謝)

歌より先に始まる長い長いギターソロ、癖になるギターソロの音選び、やっと入ってくる歌がまた演劇的で風変わり、エンディングもなんだか不思議な終わり方。

勿論、このベスト盤にも収録されています。

ウリ・ジョン・ロートについては、一度書きました。

 

ベスト盤を聴いて、〈なんで私、こんな良い曲を知らなかったの!?〉と感激したのが、この2曲。

“Humanity”。

スコーピオンズの良さが爆発している……。

クラウス・マイネの歌唱が、艶やかで、寂しくて、力強くて、いや本当に凄いシンガーですね。ギターソロの哀愁と、歌詞の終末感、最後の演出まで、この暗さが好き。

そして、“Rock Believer”。 

なんで私、こんな良い曲を聴いてへんかったんや……。

このベスト盤、最後に〈ロックを信じている〉この曲で締めるのが、素晴らしい。

NHORHMでは、他に“Pictured Life”なども演奏しているのですが、最近の曲もやってみたくなりました。

本当に、メロディが美しい曲が多すぎる!!

 


■SCORPIONS
RELEASE INFORMATION

SCORPIONS 『From The First Sting』 BMG(2025)

リリース日:2025年10月17日(金)

TRACKLIST
DISC 1
1. In Search Of The Peace Of Mind
2. This Is My Song [Live At Rock & Pop, November 9, 1973]
3. Speedy’s Coming
4. In Trance
5. Pictured Life
6. The Sails Of Charon
7. Top Of The Bill [Live]
8. Holiday
9. Always Somewhere
10. Lady Starlight
11. The Zoo
12. No One Like You
13. When The Smoke Is Going Down
14. Still Loving You
15. Rock You Like A Hurricane
16. Big City Nights

DISC 2
1. Rock You Like A Hurricane [Live]
2. Believe In Love
3. Send Me An Angel
4. Wind Of Change
5. Under The Same Sun
6. Still Loving You [Live On Taratata, April 28, 1996]
7. Mind Like A Tree
8. You & I
9. Wind Of Change
10. Always Somewhere
11. Maybe I Maybe You
12. Humanity
13. The Best Is Yet To Come
14. House Of Cards
15. Rock Believer

 

■西山 瞳
LIVE INFORMATION
2025年10月23日(木)大阪 Jazz club GALLON
開場/開演:18:30/1st 19:30/2nd 20:50
出演:西山瞳 “Hirakata” トリオ 西山瞳(ピアノ)、鈴木孝紀(クラリネット)、光岡尚紀(ベース)
料金:1ステージのみ 2,500円/通し 3,800円
TEL:06-6147-3785
オフィシャルサイト:https://gallonjazz.com/

ソロCD『Songs』発売ライブ
2025年11月4日(火)神奈川・横浜 DOLPHY
開場/開演:18:30/19:30 ※2 sets
出演:西山瞳(ピアノ)
料金:予約 3,500円/当日 3,800円
TEL:045-261-4542
オフィシャルサイト:https://dolphy-jazzspot.com/

西山瞳トリオ+3 レコーディングライブ
2025年11月15日(土)東京・渋谷 公園通りクラシックス
開場/開演:18:30/19:00
出演:西山瞳(ピアノ)、西嶋徹(ベース)、則武諒(ドラムス)、鈴木孝紀(クラリネット)、橋爪亮督(テナーサックス)、maiko(バイオリン)
料金:予約 4,500円/当日 4,800円
オフィシャルサイト:http://koendoriclassics.com/

ソロCD『Songs』発売ライブ
2025年11月19日(水)愛知・名古屋 Mr.Kenny’s
開場/開演:18:00/19:30 ※2 sets
出演:西山瞳(ピアノ)
料金:予約 3,000円/当日 3,500円
TEL:052-881-1555
オフィシャルサイト:https://www.mrkennys.com/

ソロCD『Songs』発売ライブ
2025年11月22日(土)兵庫・甲南山手 gallery zing
開場/開演:13:30/14:00 ※2 sets
出演:西山瞳(ピアノ)
料金:一般 3,300円/学生&アーティスト 1,650円
TEL:078-413-4888
オフィシャルサイト:https://www.zing-music.com/

★詳細やその他のライブについては西山瞳のオフィシャルサイトへ

 

RELEASE INFORMATION
西山瞳率いるメタルカバープロジェクトNHORHMの1stと2ndアルバムがリマスタリング&紙ジャケ仕様にてリリース!!

NHORHM 『New Heritage Of Real Heavy Metal』 APOLLO SOUNDS(2024)

リリース日:2024年12月4日(水)
品番:APLS1510R
価格:2,750円(税込)

TRACKLIST(曲名 / オリジナルアーティスト)
1. In the Dead of Night / U.K.
2. Walk / Pantera
3. Man On the Silver Mountain / Rainbow
4. Skin Oʼ My Teeth / Megadeth
5. Fear of the Dark / Iron Maden
6. Upper Levels / ANGRA
7. 悪夢の輪舞曲 / BABYMETAL
8. Demonʼs Eye / Deep Purple
9. The Halfway to Babylon / 西山瞳
10. Green-Tinted Sixties Mind / Mr. Big

■メンバー
西山瞳 piano
織原良次 fretless bass
橋本学 drums

■ゲストミュージシャン
小田朋美 vocal track 4
馬場孝喜 a. guitar track 5
市原ひかり trumpet track 8
橋爪亮督 sax track 10

 

NHORHM 『New Heritage Of Real Heavy Metal II』 APOLLO SOUNDS(2024)

リリース日:2024年12月4日(水)
品番:APLS1612R
価格:2,750円(税込)

TRACKLIST(曲名 / オリジナルアーティスト)
1. Kings Of Metal / Manowar
2. Speed / Loudness
3. All Over The Nations / Helloween
4. Decadence Dance / Extreme
5. Beyond The Realms Of Death / Judas Priest
6. Iron Man / Black Sabbath
7. Mystery Of Babylon / 西山瞳
8. Over The Hills And Far Away / Gary Moore
9. The Gift Of Music / Dream Theater
10. THE ONE -Live Version- / BABYMETAL (Bonus Track)

■メンバー
西山瞳 piano
織原良次 fretless bass
橋本学 drums

■ゲストミュージシャン
田中充 trumpet track 4
宮崎隆睦 a. sax  track 4
橋爪亮督 t. sax track 4
池田雅明 trombone track 4

冠徹弥(from THE 冠)vocal   track 4

 

西山瞳 『Echo』 MEANTONE(2024)

リリース日:2024年10月2日(水)
品番:MT-13
価格:3,190円(税込)

TRACKLIST(全曲 西山瞳作曲)
1. Echo エコー
2. West World ウエスト・ワールド
3. Ants アンツ
4. Arrakis アラキス
5. Raindrops レインドロップス
6. Cobalt Blue コバルト・ブルー
7. River リバー

■メンバー
西山瞳 ピアノ、作曲 Hitomi Nishiyama piano, compose
西嶋徹 ベース Toru Nishijima bass
則武諒 ドラムス Ryo Noritake drums
鈴木孝紀 クラリネット Takanori Suzuki clarinet (except 5)
橋爪亮督 テナーサクソフォン、フルート Ryosuke Hashizume tenor saxophone, flute (except 5)
maiko バイオリン maiko violin (except 5)

2023年7月12-14日 群馬県高崎市TAGO STUDIO TAKASAKIにて録音
録音・ミックス・マスタリング:松下真也(Piccolo Audio Works)
FAZIOLI F278使用 ピアノ技術:越智晃(Fazioli Japan Co., Ltd.)
写真:和田高広(ライトアンドプレイス湿板写真館)

 

西山瞳 『Songs』 MEANTONE(2025)

リリース日:2025年10月1日(水)
品番:MT-15
価格:3,520円(税込)

TRACKLIST(全曲 西山瞳作曲)
1. Bye For Now バイ・フォー・ナウ
2. Blue Nowhere ブルー・ノーウェア
3. Pescadores ペスカドーレ
4. Changing チェンジング
5. Standing There スタンディング・ゼア
6. SAKIRA サキラ
7. Just By Thinking Of You ジャスト・バイ・シンキング・オブ・ユー
8. Wright Flyer ライト・フライヤー
9. Bye Bye Blue Fish バイ・バイ・ブルー・フィッシュ
10. You Are Not Alone ユー・アー・ノット・アローン
11. Aprilis アプリリス
12. Fall フォール
13. Keys キーズ
14. This I Promise You ディス・アイ・プロミス・ユー
15. Blue And Blue ブルー・アンド・ブルー
16. Remains To Be Seen リメインズ・トゥ・ビー・シーン

西山 瞳 ピアノ、作曲 Hitomi Nishiyama  piano, compose

2025年4月28日 東京都豊島区MERCY MERCYにて録音
録音、ミックス、マスタリング:春日洋
FAZIOLI F156使用
ピアノ技術:越智晃(Fazioli Japan Co., Ltd.)
デザイン:吉岡渉

 


PROFILE: 西山 瞳 

1979年11月17日生まれ。6歳よりクラシックピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I’m Missing You』を発表。ヨーロッパジャズファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、〈横濱JAZZ PROMENADE ジャズ・コンペティション〉において、自身のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めて〈ストックホルム・ジャズ・フェスティバル〉に招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『Parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、〈インターナショナル・ソングライティング・コンペティション〉(アメリカ)で、全世界約15,000のエントリーのなかから自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコードのジャズ総合チャートで1位、HMVの総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自身のレギュラートリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『Shift』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカバーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、ヤング・ギター誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズの両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。自身のプロジェクトの他に、東かおる(ボーカル)とのボーカルプロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグバンドへの作品提供など、幅広く活動。〈横濱JAZZ PROMENADE〉をはじめ、全国のジャズフェスティバルやイベント、ライブハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさが共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。