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1. Fleet Foxes “Sunblind”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉はフリート・フォクシーズの“Sunblind”! 9月22日、秋分の日にほぼサプライズでリリースされたニュー・アルバム『Shore』の2曲目です」

田中「僕はまだ『Shore』をちゃんと聴けていないんですよね」

天野「えっ、今週最大の話題作なのに!? まあ、亮太さんは〈アルバム派〉じゃないですからね。僕はもう、20回くらいリピートしていますよ。めちゃくちゃ素晴らしいです!」

田中「週末に聴き込みます! このアルバムにフリート・フォクシーズのメンバーはロビン・ペックノールド(Robin Pecknold)しか参加していないんですよね。制作は2018年から行われていたようですが、バンドの状況は気がかりです。プレス・リリースによると、制作中にロビンは〈死に直面しても人生を謳歌した人たちにインスパイアされていた〉んだとか。アーサー・ラッセル、ニーナ・シモン、サム・クック、エマホイ・ツェゲ=マリアム・ゴブルーといったアーティストたちが挙げられていますね。この“Sunblind”の歌詞でも、冒頭からリチャード・スウィフト、ジョン・プラインとビル・ウィザーズ、ジュディ・シルとエリオット・スミス、デヴィッド・バーマン……と、この世を去った音楽家たちの名前が挙げられます。Rolling Stone Japanのロビンへのインタビューでも語られているとおり、〈死〉というテーマ、そして〈岸辺(shore)〉というモチーフが重要な意味を持っているようです」

天野「昨年、自殺によって亡くなったデヴィッド・バーマン(シルヴァー・ジューズ/パープル・マウンテンズ)への言及が胸を打ちますね……。他の収録曲に負けず劣らずこの“Sunblind”はとても美しくて壮大、力強い楽曲ですが、死のにおいを強く感じさせます。でも、それは絶望や否定的なものではなく、むしろ生に対する肯定性になっている、というか。アルバムのイントロダクションになっている“Wading In Waist-High Water”はアフリカ系シンガーのウワデ(Uwade)が歌っていて、ハミルトン・ライトハウザーの新作『The Loves Of Your Life』で歌っていた彼の娘たちがコーラスを添えているのですが、その優しくて穏やかな響きは、どこか彼岸から届いてくるかのようです。ロビンの死への想像力が、この“Sunblind”という曲、ひいては『Shore』というレコードを掛け値なしの傑作にしていると思いました。Monchicon!の〈Warm American Water〜Fleet Foxesの新作『Shore』についての覚え書き〉がとてもいい手引きになので、ぜひそちらを読みながら聴いてみてください」

田中「『Shore』のCDとLPは2021年2月5日(金)にリリース。ぜひタワーレコード オンラインでご予約を!」