洗練された演奏と心地良いハーモニーを織り上げるLAのトリオが臨んだ新たな境地。初めて多くのゲストを迎えた魅惑の『Starfruit』はかつてない美しさに溢れていて……

 「いま自分たちがこうなっているなんて10年前には想像もしてなかった。ファースト・アルバムはこの3人がとにかく自分たちが作りたいものを形にしたいという思いで作って、そしていまこうしてムーンチャイルドとして活動して生活できているなんて、改めて考えると本当にものすごいことだと思う」(アンドリス・マットソン)。

 2011年の結成から10年。LAのUSCソーントン音楽学校で出会ったアンバー・ナヴラン、アンドリス・マットソン、マックス・ブリックの3人組、ムーンチャイルド。結成の翌年には初作『Be Free』を自主リリースし、2015年の2作目『Please Rewind』以降は英トゥルー・ソーツから定期的に良品を届けているのは言わずもがな。近年はラプソディ“Nobody”やジャロッド・ローソン“I’ll Be Your Radio”をプロデュースし、アンバー個人でもR+R=NOWやバスティ・アンド・ザ・ベースへの客演、キャサリン・ペンフォルドの制作を手掛けるなど外部との繋がりも拡大している彼らが、待望の5作目『Starfruit』をリリースした。

 「このアルバムは私たちにとって大きな節目の作品という気がする。皆がそれぞれの楽曲に魔法をかけて、音楽を新鮮で特別な場所へ導いてくれた」(アンバー)。

 10年という区切りを意識して作ったわけではないものの、他のアーティストを多数フィーチャーするという初の試みは、シーンに共振する仲間を増やしてきた彼らにとって、節目に相応しいチャレンジと言えるのかもしれない。制作はコロナ禍でライヴ活動がなかった時期に進められたそうだ。

 「通常アルバムの制作はツアーの合間になんとか時間を作るという感じだったから、今回はすごくありがたかった。恐らく参加ゲストについても、コロナ禍でスケジュールが空いていたのかもしれないよね。そういう意味での影響もあったかもしれない」(アンドリス)。

 「もともと私が自分のプロジェクトをやる時に参加してほしいアーティストたちに声をかけていて。バンドでも次の作品でゲストを招こうというアイデアが出て、〈それならもう候補がいるよ〉って、私の〈声をかけたい人リスト〉をベースに進めていった感じね」(アンバー)。

 アルバムには、アンバーが縁深いジャムラ周辺のラプソディとムームー・フレッシュを筆頭に、レイラ・ハサウェイやアレックス・アイズレー(アーニーの娘)、タンク・ アンド・ザ・バンガス、シャンテ・カン、ラッパーのイル・カミーユ、サックス奏者のジョシュ・ジョンソンといった面々が名を連ねている。アンバーの「特に黒人の女性アーティストに参加してもらいたかった」という意志も反映した人選だが、曲そのものの成り立ちはさまざまだという。

 「〈この部分でMCがラップするといいんじゃないか〉みたいに、ゲストの参加を念頭に書いた曲もあった。一方で例えば“Tell Him”はレイラ・ハサウェイに送る前に書いたものだった。だから曲ごとに違う」(アンドリス)。

 際立った変化として全体から感じられるのは、これまでオルタナティヴと評されてきた一面よりもソウル的な洗練が前に出ていることだろうか。なかでもアレックス・アイズレーが歌唱する“You Got One”とラプソディ参加の“Love I Need”などはトリオの持ち味とゲストのフレイヴァーが融和して特に素晴らしい成果を上げている。3人もコラボを経て感じるものは大きかったようで、ここを起点とした新たな変化にも今後は期待したくなるところだ。

 「他のシンガーが自分では絶対に思いつかないような、本当に素晴らしいことをする姿を目の当たりにするっていう過程はすごく楽しかったし、自分の創造するうえでのマインドが開かれたと思う」(アンバー)。

 「個人的には、今回のコラボレーションによって世界への扉が開かれたという感じかな。一緒にやるのが夢っていうアーティストがまだたくさんいる。そういう扉が開かれた気がするね」(アンドリス)。

『Starfruit』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、レイラ・ハサウェイの2017年作『Honestly』(Hathaway)、シャンテ・カンの2017年作『Sol Empowered』(Atlanta)、ラプソディの2020年作『Eve』(Roc Nation)、5月13日にリリースされるタンク・アンド・ザ・バンガズのニュー・アルバム『Red Balloon』(Verve)

 

左から、ムーンチャイルドの2015年作『Please Rewind』、2017年作『Voyager』、2019年作『Little Ghost』(すべてTru Thoughts)、キャサリン・ペンフォルドの2019年作『Sweetest Thing』(Justin Time)、ジャロッド・ローソンの2020年作『Be The Change』(Dome)、バスティ・アンド・ザ・ベースの2020年作『Eddie』(Arts & Crafts)