1960年代後半といえば、ジャズの世界ではハードバップの時代は過去のものになりつつあった頃。ジャズ・ロック、ソウル・ジャズ、フリー・ジャズetc。アルフレッド・ライオンがブルーノートを売却したのもこの頃。多くのミュージシャンが活動の場をヨーロッパに求めていったが、アメリカより人種差別が少ないこととも無関係ではなかった。ジャズ史のおける“知られざる時代の記憶”ともいうべき発掘音源がこの『ジャズ・レジェンド・イン・ヨーロッパ・シリーズ』。世界初登場音源もあり、非常に貴重なアーカイヴである。
その第一回目のリリースの主人公はソニー・ロリンズ、デクスター・ゴードン、ハンク・モブレーのテナーマン3人。いずれもブルーノートにリーダー作を残すツワモノたちだが、今回のライヴ音源は言ってみれば“ブルーノート”後の彼らのキャリアの一途と見て聴いてみるのも面白い。
ソニー・ロリンズ盤は68年にコペンハーゲンのテレビ局で収録されたライヴで、そのフル音源としては初のリリースになるもの。《フォア》《グリーン・ドルフィン》《セント・トーマス》の3曲を演奏しており、時に10分超えに及ぶ力演も聴かせている。デクスター・ゴードン盤は67年スウェーデン、69年デンマーク、71年オランダでの自身のオリジナルをメインにしたパフォーマンスで日本初登場。メアリー・ホプキンのポップ・ヒットのカヴァーも披露しているのが興味深い(それがアルバム・タイトルに)。ハンク・モブレー盤は68年デンマークのクラブ“モンマルトル”でのライヴで世界初登場音であり、《ブルー・ボッサ》など、ハードバップ魂に満ちたプレイを堪能できる。
3枚に共通しているのは、そのリズム・セクションがケニー・ドリュー、ニールス・ぺデルセン、アルバート・ヒース(一部別ドラマー)のトリオであるということ。未発表ライヴ・ネタは非公式を含めればその埋蔵量はまだまだ無限大、今後のリリースも楽しみ。