2. Liz Phair “Hey Lou”
天野「2位です。リズ・フェアのニュー・シングル“Hey Lou”。2019年の“Good Side”から1年4か月ぶりの新曲で、メディアでは〈約2年ぶり〉と報じられていたので〈もうそんなに経ったっけ?〉とびっくりしてしまいました」
田中「“Good Side”は当連載で紹介しましたよね。そのときも話したとおり、90年代を代表するシンガー・ソングライターである彼女は、現在のシーンで活躍する女性SSWたちに強い影響を与えている存在です」
天野「まさに、リズ・フェアっていま話題の〈わきまえない女〉なんだと思うんです。セックスについてなんでもかんでも生々しく歌ってしまう、という。ぜひ名盤『Exile In Guyville』(98年)を聴いてほしいです」
田中「そんなリズ・フェアの新曲は、曲名からもわかるように、2013年に亡くなったルー・リードへのトリビュートが込められたものです。アコースティック楽器のふくよかな音色を活かしたロックンロールになっていて、そのあたりもルー・リードの音楽が念頭にあったのかな。さらに、パペットを使ったカヴァー・アートやミュージック・ビデオを観てもらえればわかるのですが、彼の妻ローリー・アンダーソンへの敬意も含まれた一曲。〈ルー&ローリー〉に捧げられているんですね」
天野「偉大なロックンローラーのルー・リードについては説明不要だと思いますが、ローリー・アンダーソンは知らない方がいるかも。彼女は現代音楽、実験音楽の文脈における電子音楽のパイオニアで、パフォーマンス・アートやマルチ・メディアのアーティストとして広く活動しています。アヴァンギャルドな要素をポップに持ち込んだ先駆者であり、『Big Science』(82年)などアヴァン・ポップの名盤を遺していますね。2018年にはクロノス・クァルテットとのアルバム『Landfall』をリリースしていました。ルー&ローリーはとてもNYらしい、NYという街を象徴するアーティストですね」
田中「Pitchforkが指摘しているとおり、“Hey Lou”の歌詞には『Big Science』収録曲でローリーの代表曲である“O Superman”への言及やアンディ・ウォーホルの名前が出てきます。プレス・リリースには『2人の音楽レジェンドの人生を想像させる曲です。彼らの結びつきは、ロック・バンドへのインスピレーションとロマンを貫き通す好奇心の源をもたらしてくれました』とリズ自身の言葉がありますね」
天野「“Hey Lou”は次作『Soberish』からのシングルとのこと。いつまで経ってもなかなかリリースされず、なんと11年ぶりのアルバムになってしまいました。今年こそリリースされることを祈っています」