インタビュー

鈴木慶一 × ゴンドウトモヒコ 対談――破壊的創造を2人で実現させた「MOTHER」サントラのセルフ・カヴァー

鈴木慶一『MOTHER MUSIC REVISITED』

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破壊的でありつつも、同時に慈しみに溢れた“EIGHT MELODIES”は必聴

 コロナ禍でも鈴木が今回のレコーディングに集中できたのは、ゴンドウの献身的なサポートがあってこそなのだ。

ゴンドウ「なるべくスムーズに進むのが一番なので、80年代のレコーディングの音を聴いて、先に構成だけ作っておいたんですけど、実際に出来上がったものは、同じような構成にしなかったりとか、ガラッと変わるものも多かったのでどれもこれも面白かったですね」

鈴木「ひとりじゃ何も出来ないんです。ゴンドウ君がいたり、楽器があったり……。人と物がないと音楽は生まれないです」

 

 こうした環境のなか、レコーディングはアルバムの収録順に行われていった。

鈴木「89年のオリジナルと、どれだけ離れるか。でも反対に、近寄る部分も作りたかったので、オリジナルとの距離のとり方を曲ごとに考えましたね。録音する前に89年版を聴いて、イントロを考えテンポを遅くしたり、それをゴンドウ君にシーケンサーソフトに入れてもらって元曲も取り込み、それをストレッチしてテンポを合わせてもらったのを聴きつつ、オリジナルから離れてみたり。歌詞が英語なので、ロンドンの録音で歌っているキャサリンの発音を聴いて、オリジナルに戻ったり……」

 

 こうして新たなアレンジが施されていくのだが、アルバムを締めくくる『MOTHER』を代表する1曲“EIGHT MELODIES”こそが、やはり今作の白眉となるだろう。ロンドンの録音では、かのマイケル・ナイマンが編曲を務めたが、鈴木のセルフ・カヴァーのテーマは、なんと〈破壊〉だった。

鈴木「ゲームのなかで8小節のメロディーを集めると、最終ゴールに進めるという形になっているので、1小節たりとも同じメロディーを使っていないんです。そのくらいカチッと出来上がっちゃっていて、和音も決まっちゃっているんで、それをどう破壊しようかなと。それでまず、ギター(12本)でミニマルなフレーズを大量にいれようと。そこにフィードバックのギターを4本重ねて、最終的に上野洋子さんのアレンジによる弦のカルテットが加わりました。後はゴンドウ君のミックスの手腕ですね(笑)」

ゴンドウ「録音中、本当にどうするんだろうと思いましたよ(笑)。Billboardでのライヴでもアンコールで演奏したんですけど、その時はリミックスのような、破壊するような演奏をしました。それは最初の狙い通りだったんですね(笑)」

 破壊的でありつつも、同時に慈しみに溢れた“EIGHT MELODIES”は必聴だ。そしてゴンドウを含むゲスト・アレンジャー陣が編曲を担当した、歌のないインストゥルメンタルとなる3曲もバラエティー豊かで実に面白い。

鈴木「ゴンドウ君にはどれがいい?って選んでもらったのが“MAGICANT”でした。熱狂的な『MOTHER』ファンである佐藤優介君(カメラ=万年筆)にも何か頼みたいと思って、89年のアルバムではキリング・タイムがやった“FALLIN’ LOVE AND”をお願いしました。蓮沼執太君は一緒にライヴをしたことがあるんですけど、何か面白いものになるんじゃないかと予感して。いやあ驚きましたね! 最初“SNOW MAN”だって分からなかったぐらいですから(笑)」

 

 驚きと発見に満ちた『MOTHER MUSIC REVISITED』は、ゲームのファンだけに向けた内容でないことはお分かりいただけただろうか。これを機に、鈴木慶一の〈代表作〉のひとつといって間違いない「MOTHER」を再発見する絶好の機会となるはずだ。

 


ゴンドウトモヒコ (ごんどう・ともひこ)
1967年生まれ。インディ・レーベル〈愚音堂〉主宰。日本大学芸術学部卒業後、ボストン大学に留学し、電子音楽とユーフォニウムを専攻。帰国後、95年に高橋幸宏率いるオフィスインテンツィオに所属。トロンボーンやフリューゲルホーン、ディジュリドゥといった生楽器のみならず、エレクトロニクスを駆使した楽曲も構築。LOVE PSYCHEDELICO、THE BEATNIKS、CHARA、UA、くるりなど多数のミュージシャンのレコーディングやライブなどに参加し、CM音楽およびサウンドトラックを制作する。自身が主宰する音楽集団Anonymassや高橋幸宏、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、LEO今井とともにMETAFIVEでも活動。2015年より、Eテレ「ムジカ・ピッコリーノ」の音楽監督を務める。

 


鈴木慶一 (すずき・けいいち)
1951年生まれ。あがた森魚、はっぴえんどなどのサポートや録音セッションを経験したのち、72年に〈はちみつぱい〉を結成。日本語によるロックの先駆的な活動を展開する。その後ムーンライダーズを結成し76年にアルバム『火の玉ボーイ』でデビュー。バンド活動の傍ら多くのCM音楽、アイドル、演歌など幅広い楽曲提供とプロデュースを行う。「MOTHER」「MOTHER2」などのゲーム音楽にも関わり、その影響力は大きい。北野武監督の「座頭市」「アウトレイジ 最終章」で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を、今敏監督の「東京ゴッドファーザーズ」でシッチェス国際映画祭最優秀音楽賞をそれぞれ受賞。俳優としての顔も持つ。

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