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コラム

マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(my bloody valentine)再臨――4タイトルのリイシューをきっかけに触れる至福の轟音

©STEVE GULLICK

時が流れようとも色褪せることのない美しく壮大な音世界には、いまも至福の轟音が降り注いでいる――名作の再臨をきっかけに触れる、改めまして、あるいは初めましてのマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン

30年も朽ちない生命力

 『Loveless』(91年)のリリースから30年が経った。十年一昔という言葉をそのまま受け入れるならば、30年も経てばもはや大昔である。そんななかで『Loveless』の生命力と影響力、そこに飽くことなく賛辞と賛美が積み重なっていく様子は極めて異例のことに違いない。そんな歴史的な金字塔が節目の周年を迎えたタイミングの2021年3月31日、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(以下MBV)が新たにドミノと電撃契約を発表。UKソニーとの契約が切れてから宙に浮いていたカタログ群、さらには自主リリースの『m b v』(2013年)といったディスコグラフィーがCDとLPフォーマットで一挙リイシューされた。

 言わずもがな、今日のMBVに対する評価は相変わらず絶対的で揺るぎのないものであり、それはいよいよ深まっている。何かと神様が多い昨今においても、彼らへの情熱的な評価は、満場一致で動かし難いもののように思えるだろう。そこに異論を差し挟むつもりは特にないが、非常に興味深く思えるのは、リアルタイムで彼らの音楽に接してきた人以上に、後から発見した世代によって現在のMBV像が積極的に作り上げられてきたように見えることだ。時代性がバラバラに切り刻まれては入り交じって、世界中が記憶の修正を繰り返すのが当たり前の時代になったとはいえ、その別格的な評価の瑞々しさはいまもって凄まじく、彼らのファン・ベースも単なるノスタルジーを共有しているだけのようには思えないのだ。そのフレッシュな期待感が、MBVが存在しない時代にもMBVを長らく生かし続けてきた。バンドが2007年に再始動しても、フェスでたびたび来日を果たすようになっても、また動きが見えなくなっても、彼らの幻想的な存在感は不思議なくらいに位置を変えることなく、少し高い地平に浮かび続けているかのようだ。

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