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サウンド・シティーでの試行錯誤を経て生まれた名盤

『Rumours』はLAの北のサン・フェルナンド・ヴァレーにあるサウンド・シティー・スタジオでレコーディングされている。同スタジオはニルヴァーナの『Nevermind』がレコーディングされたことでも知られ、2013年にはデイヴ・グロールが同スタジオの歴史を追ったドキュメンタリー映画「Sound City」を制作した。フリートウッド・マックは同スタジオを拠点にして、試行錯誤を重ねながら、アルバム『Rumours』を作り上げたようだ。

2013年の映画「Sound City」トレイラー

“Dreams”はスティーヴィー・ニックスの曲で、様々なアレンジが試されたが、シンプルな方向に音を削ぎ落とし、最終形に辿り着いたらしい。SACDで聴いてみると、CDよりも音場が広く、快い空間性がある。サウンド・シティー・スタジオのルーム・サウンドや、あえて隙間の多いアレンジを選択したフリートウッド・マックのメンバーの狙いが感じられる。

 

カップルの破局を反映、特別な磁力を持った“Dreams”

フリートウッド・マックにはジョン・マクヴィーとクリスティン・マクヴィー、リンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスという二組のカップルがいるバンドだった。だが、この『Rumours』の制作時、どちらも破局を迎えていた。気だるい“Dreams”は実はそれを反映した歌だ。

〈彼らは言う、女なんて来ては去っていくもんさ〉とスティーヴィー・ニックスは歌う。彼らが誰かというのは、その前の一節で示されている。

プレイヤーズは演奏している時だけ、あなたを愛します

スティーヴィー・ニックスとクリスティン・マクヴィーの立場から、一緒に演奏する時だけしか、愛を示さなくなった男性メンバー達を皮肉っているのが、この曲なのだ。“Dreams”では、その男性メンバー達は極めてシンプルな演奏に徹している。あたかも、やる気がないような。だが、それがこの曲に絶妙なニュアンスを与えているのだ。バンド・サウンドの不思議。発表当時はそこまで売れる理由が分からなかった曲だが、40年以上が過ぎても、何か引っかかる、特別な磁力を感じるのがこの“Dreams”だ。

『Rumours』の10曲中の7曲はスティーヴィー・ニックスかクリスティン・マクヴィーの曲。女性陣がバンドの主導権を奪い取ったアルバムでもあった。それが巨大なヒット作となり、バンドは黄金時代を迎えることになる。

 

SACDで聴く贅沢な体験

オリジナルのLPはキャピトル・スタジオでマスタリングされていたが、現在、発売されているSACDは2011年に名匠、ボブ・ラディックがリマスタリングしたものだ。リズムの骨格をがっしりとさせつつ、ヴォーカルやギターは繊細に処理されていて、オリジナルLPよりは現代的な響きもある。今、このアルバムをSACDを聴き返すのは、贅沢な経験になると思う。

 


RELEASE INFORMATION

FLEETWOOD MAC 『噂(SACDハイブリッド)』 Rhino/ワーナー(2011)

リリース日:2011年9月14日
品番:WPCR-14171
仕様:SACD/CDハイブリッド
価格:3,353円(税込)
※5.1chサラウンド&ステレオ音声収録
※通常のCDプレーヤーでも通常のCDとして再生することが可能です
※CDレイヤーの音源は高音質ステレオ音声をダウン・コンヴァートした音源を採用し、既存のCDとは異なる音源となります

TRACKLIST
1. Second Hand News(セカンド・ハンド・ニュース)
2. Dreams(ドリームス)
3. Never Going Back Again(もう帰らない)
4. Don’t Stop(ドント・ストップ)
5. Go Your Own Way(オウン・ウェイ)
6. Silver Springs(シルヴァー・スプリングス)*Bonus Track
7. The Chain(ザ・チェイン)
8. You Make Loving Fun(ユー・メイク・ラヴィング・ファン)
9. I Don’t Want To Know(アイ・ドント・ウォント・トゥ・ノウ)
10. Oh Daddy(オー・ダディ)
11. Gold Dust Woman(ゴールド・ダスト・ウーマン)
12. Songbird(ソングバード)