サッチモことルイ・アームストロングのトリビュート盤というと手垢の付いた印象を受けるが、ニューオーリンズ(NOLA)の音楽大使とでも言うべきドクター・ジョンが同郷の大先輩に捧げるとなれば話は違う。コンコード移籍作となる『Ske-Dat-De-Dat:The Spirit Of Satch』は、サッチモの代表曲や隠れ名曲をドクターの歌とピアノを軸に10組以上のゲストと共演カヴァーしたもの。ドクターの人懐っこいダミ声はもとより、ニコラス・ペイトン、テレンス・ブランチャード、ウェンデル・ブルニアス、ジェイムズ・アンドリュースといったサッチモの魂を受け継ぐNOLA出身の名トランペッターが、かの地の陽気さと哀愁を表現する様に思わず膝を打つ。
加えて、ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマが重厚なハーモニーを奏で、知性派MCのマイク・ラッドがファンキーなリズムに乗り、ボニー・レイットやシェメキア・コープランドがブルージー&ジャジーなドクター節に彩りを加える。アンソニー・ハミルトンやNOLA出身のレディシは深みを湛えて黒人霊歌を聖唱。NOLAの街を練り歩くパレードのようなダーティ・ダズン・ブラス・バンドとの“When You're Smiling”で故人を明るく偲ぶラストまで、見事に筋の通った快作となった。
▼関連作品
左から、ニコラス・ペイトンのニュー・アルバム『Numbers』(Paytone)、ボニー・レイットの2012年作『Slipstream』(Redwing)、レディシの2014年作『The Truth』(Verve)、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドの2012年作『Twenty Dozen』(Savoy Jazz)
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