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コラム

野平一郎&堀正文&堤剛による夢のトリオの凄まじい演奏を東京文化会館〈プラチナ・シリーズ〉で目撃せよ

ベートーヴェンの〈使徒〉野平一郎が企てた〈ものすごいピアノ・トリオ〉――堤剛、堀正文とともに東京文化会館プラチナ・シリーズ第2回で実現へ

 開館60周年を迎えた東京文化会館が〈奇跡の音響〉〈至高の室内楽会場〉とされる小ホールに、大ホールを埋める力のある大物アーティストを招き、他ではなかなか聴けない〈珠玉のコンサート〉を生む〈プラチナ・シリーズ〉。2021/2022年シーズン第2回は作曲家でピアニスト、指揮者の野平一郎(1953~)がプロデュース、自ら共演者を口説いたという〈日本が誇るレジェンド・トリオ〉が出現する。NHK交響楽団元ソロ・コンサートマスター(現名誉コンサートマスター)の堀正文(1949~)がヴァイオリン、芸術院会員でサントリー芸術財団代表理事・サントリーホール館長、霧島国際音楽祭音楽監督などの要職を兼務する堤剛(1942~)がチェロと、確かにものすごい(すご過ぎる?)顔ぶれで、今まで〈ありそうでなかった〉のもうなずける。

 ミニマムは無伴奏からマキシマムは室内オーケストラまで無数の室内楽編成の中にあって、ピアノ・トリオ(ピアノ、ヴァイオリン、チェロの三重奏)はかなり特異な存在といえる。長い時間をかけてアンサンブルを練り上げる弦楽四重奏(カルテット)、両者の相性が出来を大きく左右する二重奏(デュオ)などと違い、3人とも1枚看板のヴィルトゥオーゾ(名人)が簡単な打ち合わせ、リハーサルだけで個性をぶつけ合っても、それなりにサマになってしまうからだ。古くはアルトゥール・ルービンシュタイン、ヤッシャ・ハイフェッツ、グレゴール・ピアティゴルスキーの〈3,000ドル・トリオ〉、カーネギーホール85周年記念ガラ(1976)のヴラディーミル・ホロヴィッツ、アイザック・スターン、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチの一期一会などが記憶に残る。日本でも堤と海野義雄(ヴァイオリン)、中村紘子(ピアノ)がCBSソニー・レコード(現ソニー・ミュージック)の発案で通称〈三千両トリオ〉のツアーを組み、ベートーヴェンやチャイコフスキーなどの録音も残している。

 野平のアイデアの面白さは〈濃い顔ぶれ〉にとどまらず、自身も含め、一般には〈ベートーヴェンのスペシャリスト〉と思われていないが、実はかなり〈深入り〉してきた3人を結びつけた点にある。野平は作曲の先輩、諸井誠が2010年に立ち上げ、〈ベートーヴェンとその音楽を深く研究し、遍く普及させ、ベートーヴェン受容史に新たな一頁を加えることを目的〉とする日本ベートーヴェンクライス(*)の第2代代表理事を務め、主催演奏会の企画にも携わってきた。ピアニストとしては「ソナタ全集(第1ー32番)」の録音(ナミ・レコード)を完成。2021年3月19日の「東京藝術大学音楽学部作曲科教授 野平一郎退任記念演奏会」では、32曲のソナタの断片を散りばめ、サラウンド効果を発揮する電子音と立ち向かう2003年の自作“ベートーヴェンの記憶”を弾き、作曲でもベートーヴェンへの強い傾倒を明らかにした。

 堤が最初に手ほどきを受けたチェロ奏者で指揮者、教育者の齊藤秀雄はドイツ留学でユリウス・クレンゲル、エマニュエル・フォイアマンらに師事、帰国後もヨーゼフ・ローゼンシュトック(指揮)の影響を受けるなど、バリバリのドイツ派だった。米国での教職の長かった堤がドイツ語も達者に話すことは、あまり知られていない。今回の演奏会のメイン、“ピアノ三重奏曲第7番「大公」”をソニーの〈三千両トリオ〉だけでなく練木繁夫(ピアノ)、徳永二男(ヴァイオリン)とともにマイスター・ミュージックに再録音しており、実は、得意中の得意のレパートリーだ。

 堀は旧西ドイツのフライブルク音楽大学を卒業、1974~1979年にヘッセン州立ダルムシュタット歌劇場の第1コンサートマスターを務めた。帰国と同時にN響コンマスに就いてから定年までの35年間、ヴォルフガング・サヴァリッシュ、ロヴロ・フォン・マタチッチ、オトマール・スウィトナー、ホルスト・シュタインらドイツ語圏(マタチッチはクロアチア人だが、ウィーン少年合唱団出身)の巨匠指揮者たちと、数え切れないほどのベートーヴェンを演奏した。N響ではコワモテの印象もあったが、古希(70歳)を過ぎた今はとみに柔和な表情となり、“ヴァイオリン・ソナタ”全10曲中、とりわけ可愛らしい“第5番「春」”でみせる新境地にも期待がかかる。決して〈混ぜるな危険〉の3人ではない、と断言する。

*日本ベートーヴェンクライス
https://sites.google.com/view/beethovenkreis/

 


野平一郎(Ichiro Nodaira)
1953年生まれ。東京藝術大学、同大学院修士課程作曲科を終了後、フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に学ぶ。間宮芳生、永富正之、アンリエット・ピュイグ=ロジェ、ベッツィー・ジョラス、セルジュ・ニグ、ミシェル・フィリッポ他に師事。作曲・ピアノ・指揮・プロデュース・教育など多方面にわたる活動をおこなう。現在、静岡音楽館AOI芸術監督、東京藝術大学作曲科教授を2021年3月退任、同年4月より東京藝術大学名誉教授、東京音楽大学教授。

堀正文(Masafumi Hori)
1949年生まれ。ドイツ・フライブルク音楽大学へ留学。74年よりダルムシュタット国立歌劇場管弦楽団の第1コンサートマスターに就任。以来ドイツを中心にヨーロッパ各国でオーケストラ活動はもとより、ソロ、室内楽などに幅広く活躍した。79年9月NHK交響楽団にコンサートマスターとして入団。ソロ・コンサートマスターとしての重責を果たした。数多くのソロリサイタル、N響室内合奏団をはじめとする室内楽に幅広く活躍している。また桐朋学園大学などで後進の指導にあたるなど精力的な活動を繰り広げている。

堤剛(Tsuyoshi Tsutsumi)
1942年生まれ。61年アメリカ・インディアナ大学に留学し、ヤーノシュ・シュタルケルに師事。63年よりシュタルケル教授の助手を務める。同年ミュンヘン国際コンクールで第2位、ブダペストでのカザルス国際コンクールで第1位入賞を果たし、以後内外での本格的な活動を開始。現在に至るまで、名実ともに日本を代表するチェリストとして、日本、北米、ヨーロッパ各地、オーストラリア、中南米、アジアなど世界各地で定期的に招かれ、オーケストラとの協演、リサイタルを行っている。

 


LIVE INFORMATION
Music Program TOKYO
プラチナ・シリーズ第2回 野平一郎・堀正文・堤剛 ピアノ・トリオ
~日本が誇るレジェンド・トリオ~

2021年11月20日(土)東京・上野 東京文化会館 小ホール
開場/開演:14:20/15:00
出演:野平一郎(ピアノ)/堀正文(ヴァイオリン)/堤剛(チェロ)

■曲目
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調 Op.24「春」
シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D821
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 Op.97「大公」

https://www.t-bunka.jp/stage/10898/

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