マネスキンが日本にやってくる! 2021年のブレイク後、瞬く間に世界的な人気バンドへと上り詰めたマネスキン。彼らが2022年8月18日(木)に東京・豊洲PITで単独公演を行い、8月20日(土)と8月21日(日)に〈SUMMER SONIC 2022〉に出演する。来日を目前に控えたいま、傑作『Teatro d’ira - Vol. I(テアトロ・ディーラ VOL. I)』(2021年)にボーナストラックやラバーバンドが付属した来日記念盤が発売。さらに、国内未発売だったEP『Chosen』(2017年)とアルバム『Il ballo della vita(イル・バッロ・デッラ・ヴィータ)』(2018年)も同時リリースされた。今回はこれを記念して、音楽ライターの新谷洋子が3作の音楽性を改めて論じた。本邦初パフォーマンスを前に、ぜひこの記事で予習を。 *Mikiki編集部
バンドの喜びが伝わる“Beggin’”収録のデビューEP『Chosen』
〈SUMMER SONIC 2022〉出演を前にした、一夜限りの単独公演は予想通りにソールドアウト。昨年の〈ユーロビジョン・ソング・コンテスト〉優勝をきっかけに世界を席巻しているイタリアンバンドの3枚の作品が、日本初上陸を機に一挙リリースされた。いずれも〈ユーロビジョン〉前のキャリア初期を記録した作品だが、それぞれにカラーが明確なだけに、彼らの成長過程を分かりやすく辿れるのではないかと思う。何しろ、7曲入りのデビューEP『Chosen』がリリースされた2017年末当時の4人のメンバーは、まだ16~17歳。結成から2年ほどが経過し、イタリア版「Xファクター」の11シーズンに出演していた最中に同作を発表している。
エド・シーランやキラーズなどの5曲のカバーと2曲の書き下ろし曲で構成され、ほぼ全て「Xファクター」で披露した曲とあって、この1年のダイアリーのようなカジュアルなノリがあり、バンドアンサンブルもカバーのアレンジも結構荒っぽい。とはいえ、ソウルフルな声を持つフロントマンのダミアーノ・デイヴィッドの存在感はすでに疑いようがなく、一緒にプレイするのが楽しくてたまらない!という屈託ない喜びが伝わってくる上に、4年後にTikTok経由でアメリカでのブレイクスルーシングルとなる“Beggin’”(オリジナルはフォー・シーズンズ)のカバーもここに入っていたわけで、それだけで十分に意義があったと言えよう。
雑食性をポップに表現したファーストアルバム『Il ballo della vita』
またオリジナル曲のひとつは、彼らが「Xファクター」のオーディションで演奏し、デビューシングルともなった表題曲。〈ハーイ、みんな、俺たちはマネスキンだよ!〉と無邪気に始まり、軽快なギターのカッティングでリードするこの曲は、翌2018年秋のファーストアルバム『Il ballo della vita』でフルに掘り下げることになる路線の、まさしくプロトタイプだった。
そう、今度は全編書き下ろし曲を揃えた4人は、ファンキー&メロディックを二本柱とし、かつ英語とイタリア語をミックスして、このアルバムを制作。〈マルレーナ〉という女性を象徴的に配した歌詞のコンセプトはやや不明瞭なのだが、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやマルーン5からフランツ・フェルディナンドまで、グルーヴを前面に押し出したバンドの影響を強く匂わせる楽曲はどれもポップソングとしての完成度が高く、そのレッチリのアンソニー・キーディスやアレックス・ターナー(アークティック・モンキーズ)の影がちらつく、ダミアーノのラップ調ボーカルとの相性は抜群だ。
そして、これはファブリツィオ・フェラグッツォという共同プロデューサー(「Xファクター」にもプロデューサーとして関わっていた人物だ)の貢献に拠るのか、前作のカバーのチョイスから垣間見えた雑食性を、エレクトロニックなプロダクションを用いて消化しているのも同作の特徴で、“Are You Ready?”のレゲトン然り、“Niente da dire(ニエンテ・ダ・ディーレ)”のトラップ然り。“Le parole lontane(レ・パローレ・ロンターネ)”にはどこかメディテラニアンなテイストが伺え、イタリア語詞共々、彼らの出自もまたユニークなキャラクターを与えている。