Machine Gun Kelly feat. WILLOW “emo girl”


天野「マシン・ガン・ケリーことコルソン・ベイカー(Colson Baker)のことは、説明不要でしょうか? 2011年の“Wild Boy”のヒットに始まり、カミラ・カベロとの“Bad Things”(2016年)など、ポップラップのヒットナンバーで知られているアーティストですね。エミネムの娘ヘイリーを巡ってエミネムとビーフをするなど、なにかとお騒がせなラッパーでもあります。彼の音楽性はだんだんとロック化していて、2020年にはブラックベアーとの“my ex’s best friend”が大ヒット。いまや、ポップパンクリバイバルの最重要アクトとしておなじみです」

田中「そんなMGKが、3月25日(金)に待望の新作『Mainstream Sellout』を発表。同作からのファーストシングルとして、“emo girl”が届けられました。フィーチャーされているのは、これまたポップパンクリバイバルの重要人物であるウィロー。昨年の“t r a n s p a r e n t s o u l”はかなり話題になりましたよね。この“emo girl”では、そんな2人が爽快なポップパンクナンバーに乗せて、〈ちょっと変わっているけど、気になって仕方ないエモガール〉への思いを歌っています」

天野「ギターのブリッジミュートとかドラムが〈半テン〉になる間奏とかを聴いていると、90年代末~2000年代初頭に連れ戻されたかのように錯覚します(笑)。現在のシーンのキーパーソンであり、MGKとは『Hotel Diablo』(2019年)以来一緒に仕事をしているブリンク182のトラヴィス・バーカーがプロデュースする新作、すごく楽しみですね」

 

Jana Rush feat. DJ Paypal “Lonely”

田中「6曲目はフットワークの新曲を紹介。米シカゴのプロデューサー、ヤナ・ラッシュがDJペイパルをフィーチャーした“Lonely”です。ラッシュは昨年リリースしたアルバム『Painful Enlightenment』が高い評価を受けました。自身のメンタルヘルスの問題を、アバンギャルドなジャズのサンプリングや変則的なビート、インダストリアルなサウンドに投影させた、ものすごく聴き応えのある作品でしたね」

天野「DJマニー『Signals In My Head』、RPブー『Established!』、そして『Painful Enlightenment』と、昨年はジューク/フットワークの変容や進化を印象づける刺激的な作品が記憶に残っています。いずれもプラネット・ミュー(Planet Mu)からのリリースですね。この“Lonely”は、ラッシュが3月25日(金)にリリースするEP『Dark Humour』からのリードシングル。あのオーネット・コールマン“Lonely Woman”(1959年)がサンプリングされていて、どこか不穏で陰鬱なサックスのフレーズが大胆に引用されています。コロナ下における孤独感を反映しているようにも感じました」

田中「フィーチャーされているDJペイパルは、アメリカ出身、独ベルリン在住のジューク/フットワーク系プロデューサー。彼の作風は、ラッシュのダークでメランコリックなサウンドとはかなりベクトルがちがうんですよね。そのせいか、“Lonely”は『Painful Enlightenment』の曲よりもポップでユーモラスな印象を受けました。過激に弾きまくられているシンセサイザーは、ペイパルによるものなのでしょうか?」

 

Ravyn Lenae feat. Steve Lacy “Skin Tight”

天野「米シカゴのR&Bシンガーソングライター、レイヴィン・レネイ。彼女は、スミノやミック・ジェンキンズ、ノーネームといったシカゴシーンの重要人物たちとの共演で知られるようになり、HBOドラマ『インセキュア』のシーズン4に“Rewind”を提供したことが話題になりました。インターネットのスティーヴ・レイシーがプロデュースしたEP『Crush』(2018年)に収録された“Sticky”が代表曲です」

田中「そんなレネイの新曲は、盟友スティーヴ・レイシーをフィーチャーした“Skin Tight”です。レイシーらしい気だるいギターの音色やベッドルーム感たっぷりのプロダクションが聴きどころですが、主役はやっぱりアリーヤなどが引き合いに出されるレネイのセンシュアルなボーカル。〈私を抱きしめて〉と繰り返す歌が、すごく官能的な世界を生み出しています」

天野「〈Skin Tight〉といえば、エロいファンクの代名詞、オハイオ・プレイヤーズですよね。オマージュを感じます。レネイはこれまでに3作のEPを発表していますが、今年はデビューアルバムのリリースに期待したいところ!」