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『You Could Have It So Much Better』(2005年)

FRANZ FERDINAND 『You Could Have It So Much Better』 Domino/ソニー(2005)

――ではセカンドアルバム『You Could Have It So Much Better』は何点でしょう?

「これも95点。理由は同じで、当時作れたものとしては完璧だけど、次の作品を作るために5点分の〈まだ何かできる〉というスペースが必要だから。この作品の曲は、結構前に書いていたものなんだ。例えば“This Boy”や“Outsides”は、レコードの5~6年くらい前に書いていた。“Fade Together”のピアノのメロディーは15年前くらい。僕は常に曲を書いているから、前に書いていたものを持ってきて使う、ということは、今も変わらずあるんだよ。一方で“Do You Want To”はファーストアルバムのツアーの最後に出来た曲。グラズゴーでの、文字通りファーストアルバムツアーの最終公演の直後に書いたんだ」

――ファーストアルバムへの興奮が冷めやらぬなか、1年後にこの2作目がリリースされたのには驚きました。バンドとして勢いがあるなかで、どういう作品にしようと考えていましたか?

「ファーストアルバムとは全然違うものにしたいと考えていたのを覚えてる。このアルバムは、僕にとってはファーストアルバムよりも断然ロックに聴こえる作品なんだ。バンドのロックの側面を捉えたアルバム。そういう点では、ある意味ファーストアルバムよりもハイエナジーだと言えるかもしれない。あと、“Walk Away”や“Fade Together”みたいな曲は、ファーストでは聴けなかった新しいサウンドだと思うね。“Eleanor Put Your Boots On”もそうだな。より内省的で、バラードっぽいと思う」

2005年作『You Could Have It So Much Better』収録曲“Walk Away”
 

――デビュー作が成功をおさめたぶん、セカンドへのプレッシャーは大きかったと思います。あなたたちが連続して傑作をものにできたのは、どうしてなのでしょう?

「僕は、2枚目のアルバムが作るのに難しいレコードだとは思わないな。20枚目のほうが絶対難しいと思うから(笑)。昔はよくセカンドアルバムがいちばん大変なんて言われてたけど、それは違うと思うよ。全然難しくなんかなかった。

そのとき自分がどんな状況にいるか次第なんじゃないかな。当時を思い出すと、ファーストを出したあとツアーに出て、スタジオに入って曲を作れないのがものすごくフラストレーションだった。曲を書くエナジーやアイデアはたくさんあるのに、それに時間を使えないことが歯がゆくてたまらなかったんだ。作りたいという気持ちとアイデア、試したいことがある限り、作品は出来ていくんだと思うね」

Photo by Joe Dilworth
 

――あなたたちの楽曲のリミックスは優れたものが多いですが、特にファースト~セカンド期のものは、エレクトロの時代と呼応して数々のフロアバンガーが生まれましたよね。自分たちでも特に気に入っているリミックスといえば?

「僕はエロール・アルカンの“Do You Want To”のリミックスが好きだった。あれは最高だったし、あのリミックスは当時をすごく捉えていると思うから。エレクトロの世界のキングであるエロールとギターワールドが一つになった、最高にクールな作品だと思うね。もう一つは、ジャスティスの“The Fallen”のリミックス。まるで僕がラップしてるみたいに聴こえるのがクールで、曲を全然違うものに作り変えたところがおもしろいと思った」

2005年のシングル“Do You Want To”収録曲“Do You Want To (Erol Alkan's Glam Racket)”
 

 

『Tonight: Franz Ferdinand』(2009年)

FRANZ FERDINAND 『Tonight: Franz Ferdinand』 Domino/ソニー(2009)

――サードアルバムの『Tonight: Franz Ferdinand』。このアルバムについては?

「これも95点。理由はこれまでと同じ」

――個人的に、このアルバムはバンドの最高傑作のひとつであり、未来においてさらに評価されるべき作品だと感じています。前2作とは意識的に異なるアプローチをした作品だと思いますが、制作当時はどういう音楽に感化されていたのでしょう?

「このアルバムを制作していたとき、僕たちはアフリカ音楽をたくさん聴いていたんだ。“Send Him Away”、“Twilight Omens”、“Lucid Dreams”のビートを聴くと、それがわかると思う。このレコードのサウンドは、明らかにヨーロッパやアメリカのリズムが薄くなっている」

――あなたたちにしては珍しく7分を超える長尺曲の“Lucid Dreams”は、サイケデリックディスコとでもいうべきアルバムのハイライトのひとつです。この曲をあなた自身はどのように評価していますか?

「僕もその曲はアルバムのハイライトなんじゃないかなと思う。アルバムバージョンは7分もあって、エレクトロニックなエンディングもダイナミック。バンドにとってこれまでにやったことのない新しいサウンドである部分も気に入っているしね」

2009年作『Tonight: Franz Ferdinand』収録曲“Lucid Dreams”
 

――制作方法の面では、前2作とどのように違っていたのでしょう?

「このレコードは、曲をセクションでわけ、それぞれのセクションを何度も何度も長いことジャムをして、そのセクション同士を組み合わせて曲を作っていった。どのセクションもすごくリズミックで、すごく実験的なアプローチだったね。

サウンド面でも実験的だった。例えば“What She Came For”では、ギターが他の空間からいきなりこちらの空間に突然入ってくるようなサウンドを作りたくて、マイクを吊るして天井からスウィングさせ、ギターの前をマイクがスッと通っていくようにした。それもあって、あの曲はまるで自分がギターのアンプの前を揺れ動いているように聴こえるんだよ。このアルバムをプロデュースしてくれたダン・キャリーは実験的なサウンドがすごく得意なんだ」

――そのダン・キャリーは、多くの新人バンドを輩出しているレーベル、スピーディー・ワンダーグラウンドを運営し、今やUKインディーミュージックのキーパーソンといえる存在ですが、現在の彼についてはどう見ていますか?

「最近の彼も、活躍しているよね。素晴らしいバンドをたくさん手がけていると思う。彼は本当に最高のプロデューサーでもあり、人間としても最高なんだ。それにダンは、ミュージシャンを育てるのがうまいし、現場にいる皆をポジティブにしてくれる。彼は、取るに足りないように見えることにもきちんと向き合って、そこから素晴らしいものを生み出すことができるプロデューサーなんだよ」

――ダン・キャリーが腕を振るった『Tonight』のダブアルバム『Blood: Franz Ferdinand』(2009年)も自分のお気に入りの一枚です。『Blood』は『Tonight』のどのような側面を強調した作品と言えますか?

「僕もあの作品は大好き。最高のアルバムだよね。『Blood』で、ダンは確実に『Tonight』のダークで邪悪な側面をとらえている。あのレコードのサウンドは、すごく卑劣に聴こえる。そこがとても魅力的なんだ。“Twilight Omens”のダブバージョン“Backwards On My Face”は素晴らしいし、“What She Camr For”を使った“Feel The Pressure”もすごく良い。本当にクールなアルバムだと思うよ」

2009年作『Blood: Franz Ferdinand』収録曲“Backwards On My Face”