©Justen Williams

説明不要なニューオーリンズのアイコンが強烈にエネルギッシュで力強い新作を完成! 困難な時代に立ち向かうべくアップリフティングなミクスチャー・ファンクが鳴り響く!

 トロイ・アンドリュース名義での初作『Trombone Shorty’s Swingin’ Gate』(2002年)からちょうど20年……先だってのグラミー席巻でさらに絶賛の輪を大きくしているジョン・バティステ『WE ARE』に参加してグラミーも受賞したトロンボーン・ショーティが、タイムリーに新作『Lifted』を完成させた。奇しくも同じ『WE ARE』に名を連ねたPJ・モートンとタリオナ“タンク”ボール(タンク・アンド・ザ・バンガズ)も前後して新作を届ける賑やかな状況だが、そういった同輩が飛躍する土壌を構築してきた一人がトロイであることは言うまでもない(NOCCAで共に学んだバティステもトロイ率いるオーリンズ・アヴェニューで活動していた)。

TROMBONE SHORTY 『Lifted』 Blue Note/ユニバーサル(2022)

 そんな現行ニューオーリンズのアイコンに相応しく、ブルーノートに籍を移した前作『Parking Lot Symphony』(2017年)以降の5年間もトロイの動きはいよいよ活発だった。オーリンズ・アヴェニューを従えた自身のライヴ活動を軸に、マーカス・ミラーやベティ・ラヴェット、U2、マイク・フィリップス、ラクー・ミジク、ノーマニ、リンゴ・スターら幅広い面々とスタジオ入りし、ソウル・レベルズやダンプスタファンクといった地元勢とも積極的にコラボしている。そのなかで完成した今回の『Lifted』は母親のロイス・ネルソン・アンドリュースに捧げられた作品でもあり、ジャケを飾るのも彼女が幼いトロイ少年をリフトしている印象的な写真だ。

 「彼女は最近亡くなったけど、その直前まで僕にインスピレーションを与え続けてくれたんだ。だからこのアルバムのジャケットには、彼女がセカンドラインで僕を支えている写真を載せている。彼女は僕の人生を一段上に引き上げてくれたんだ」。

 そんな背景も関係あるのか、困難な時代に立ち向かわんとするパワフルな楽曲群は、これまで以上に本人の逞しい歌唱を軸にしたソング・オリエンテッドな出来映えとなった。プロデュースはレディ・ブラックバード作品でも絡んだクリス・シーフリード(アンドラ・デイ、ロイヤル・コンセプト他)が前作から続投。トロイとオーリンズ・アヴェニュー独自のバイユー・ファンクをよりロック風味の濃いダイナミックなガンボへと大胆に昇華している。

 骨太な歌声とソリッドな演奏が強力なミクスチャー・ファンクの表題曲やエレガントなポップ・ソウル“Forgiveness”あたりからは、かつてトロイをツアー・バンドに抜擢したレニー・クラヴィッツを想起する人も多そうだ。一方ではスマートなブルーノ風味のアップタウン・ファンク“Might Not Make It Home”もあったり、ゲイリー・クラークJrのハードなギターが唸る“I’m Standing Here”や、ルイジアナはラファイエット出身のCCM系シンガーであるローレン・デイグルを迎えてゴスペル流儀でメッセージを届ける“What It Takes”などゲストとの絡みも快調。それら多彩な楽曲に頼もしく共通するのはバンドのエネルギッシュなグルーヴとライヴ感に他ならない。

 「これまででいちばんライヴ感を反映できた作品だと思う。本当にリラックスしてフェスのステージでやるみたいに演奏するようメンバーにリクエストしたんだ」。

 今夏にはタンク・アンド・ザ・バンガズやビッグ・フリーダら豪華なNOLA仲間を迎えての〈The Voodoo Threauxdown〉開催も発表済み。その熱いステージを直接は体感できずとも、『Lifted』は聴く人の気持ちをグッと上向きにしてくれるはずだ。

トロンボーン・ショーティの近作。
左から、2011年作『For True』(Verve Forecast)、2013年作『Say That To Say This』(Verve)、2017年作『Parking Lot Symphony』(Blue Note)

 

左から、ゲイリー・クラークJrの2019年作『This Land』(Warner Bros.)、ローレン・デイグルの2020年作『Look Up Child』(Centricity)

 

トロンボーン・ショーティの参加した近作を一部紹介。
左から、ソウル・レベルズの2019年作『Poetry In Motion』(Mack Avenue)、ラクー・ミジクの2019年作『HaitiaNola』(Cumbancha)、マイク・フィリップスの2020年作『Pulling Off The Covers』(SoNo)、ジョン・バティステの2021年作『We Are』(Verve)、レディ・ブラックバードの2021年作『Black Acid Soul』(Foundation Music)、リンゴ・スターの2021年作『Change The World』(UMe)、ダンプスタファンクの2021年作『Where Do We Go From Here』(The Funk Garage)