©Yusuke Yoshinaga

レジェンダリー・ドラマー森山威男が全面参加、次世代へ伝えたい日本のジャズ

 日本のリアル・ジャズのアイコンと、DJ/クラブ文化を介する今の闊達なジャズ観の出会い。KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男の『SUCCESSION』はまさにそうした内実を抱える。インターナショナルに機知と知見に満ちたDJ+の活動をする沖野修也のオーセンティックなジャズ・コンボの新作は、山下洋輔トリオの初代ドラマーを端緒に漢気満載のジャズ・ビートを送り出してきた1945年生まれの逸ドラマーである森山威男が全面的に参加したアルバムだ。

KYOTO JAZZ SEXTET, 森山威男 『SUCCESSION』 ユニバーサル(2022)

 「森山さんは元々ヨーロッパで評価されてきましたが、近年もロンドンのBBEというレーベルからは森山さんの『イースト・プランツ』(1983年)が再発されています。森山さんの再評価がヨーロッパで高まっているのと、メンバーの類家心平が森山さんのバンドでも吹いているということで、これは森山さんに声をかけるしかいないと」

 演目は、森山威男が演奏してきた十八番曲。それらが、今の勢いや機微を介して再演される。

 「もちろん森山さんの叩き出すリズムが好きなのですが、同時にダイナミズムというか、大きな音から小さな音まで、そのヴァリエーションと音の表情が素晴らしい。クラブでかかるジャズは、やはりダンサブルであるのが大前提。ですが、今回選曲するにあたって踊れるものもマストで入れましたが、DJが提案するリスニング・ミュージックとしてのジャズという側面も意識しています」

 また、沖野から森山への賛歌で ある、エスニックでスピリチャルでもある“ファーザー・ フォレスト”も収められた。

 「フェラ・クティと森山威男が共演したらというのが元々のアイデアの発想の原点です。ただ、森山さんにアフロ・ビートを叩いてもらうというのは失礼な話で、最終的にはスタジオで森山さんに好きに叩いてくださいとお願いしました」

 このアルバム表題の意味するところを、沖野はこう説明してくれた。

 「森山さんのスピリットを〈継承〉するという意味で、このタイトルにしました。森山さんが録音中におっしゃっていたのが、ジャズは即興の音楽だし、何よりも予定調和になってはいけない、ということ。インプロヴィゼーション、反予定調和、サプライズを、今作に収めることができたと思っています。このアルバムを通して、若い世代にもこれが日本のジャズなんだよということを伝えられたらと思っています」

 


LIVE INFORMATION

KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男 ~New Album “SUCCESSION” Release Live
2022年5月26日(木)東京・南青山 ブルーノート東京
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/kyoto-jazz-sextet/

FUJI ROCK FESTIVAL ’22
2022年7月30日(土)新潟・湯沢 苗場スキー場
https://www.fujirockfestival.com/