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――息子のギャン(Gyan)さんと一緒に演奏する機会も多いですが、彼には父として音楽教育をほどこしましたか。

「直接彼に教えたことはありません。幼い頃やってみましたが、私から教わることを彼は拒んだのです。彼がまだ子供の頃、とてつもない音楽の才能を持っていることに私は気づきました。だから、彼のやりたいようにやらせたんです。私たちはこれまで何年も一緒に演奏してきたので、互いになんらかの形で影響しあっていると思います。ギャンのギターは極めて繊細で、常に、よりエモーショナルな効果を得られるようなアプロウチで演奏されます。私はそこが特に気に入っているんです」

――今年10月には、一昨年中止になったクロノス・クァルテットの日本公演も実現しそうです。神奈川県立音楽堂で演奏されるあなたの曲“Sun Rings”は、一昨年、クロノスと日本の合唱団〈やえ山組〉の遠隔(データのやりとり)コラボ・ライヴの映像が作られました。観ましたか。

「まだ観ていませんが、素晴らしい映像だったとクロノスのデイヴィッド・ハリントンから聞きました。今秋の公演も同じ合唱団だそうなので楽しみです。あと、旧友の一柳慧さん(神奈川芸術文化財団芸術総監督)に会うのも楽しみです。来日してからまだ彼と会えていませんが、私たちはずっと昔から仲間なんです」

――今現在、取り組んでいる仕事について教えてください。

「日本に来てからはクロノス・クァルテットのプロジェクト〈50 For The Future〉のための作品や、〈America/Beautiful〉プロジェクトの曲(“America The Beautiful”の変奏曲)を書きました。最新作はバング・オン・ア・カンのクラリネット奏者エヴァン・ジポリンに書いた曲です。今はクレア・チェイスというフルート奏者のための作品を準備中です」

 


テリー・ライリー(Terry Riley)
1935年生まれ。米国の現代音楽家。シャスタ・カレッジ、サンフランシスコ州立大学、サンフランシスコ音楽院で学ぶ。その後、カリフォルニア大学バークレー校に入学、セイモア・シフリンと共に作曲法を学び、修士の学位を得た。彼に最も大きな影響を与えた教師はパンディット・プラン・ナート。1960年代には〈徹夜コンサート(All-Night Concert)〉を行う。ラ・モンテ・ヤングらと即興演奏を行なうなかから、1つの音型を反復するという技法を開発し、ミニマル・ミュージックを創始。“In C”(1964年)はミニマル音楽を一気に有名にした。インド音楽をはじめ、各地の民族音楽と積極的な関わりを持った新たな世界を構築している。また、長年にわたりクロノス・クァルテットとの関係を保つ。2017年には、フアナ・モリーナ、ジェフ・ミルズとのツーマンならびに単独公演を東京で行い、大きな話題を呼んだ。

 


寄稿者プロフィール
松山晋也(Shinya Matsuyama)

1958年生まれ。音楽評論家。著書「ピエール・バルーとサラヴァの時代」、「めかくしプレイ:Blind Jukebox」、編・共著「カン大全~永遠の未来派」、「プログレのパースペクティヴ」。その他ムック類多数。

 


LIVE INFORMATION

クロノス・クァルテット テリー・ライリー《サン・リングス》日本初演
NASAがミニマル・ミュージックの巨匠テリー・ライリーに委嘱した、弦楽四重奏、映像、合唱による大作組曲、いよいよ日本初演。2020年の中止から待望の復活!
2022年10月1日(土)神奈川県立音楽堂
https://www.kanagawa-ongakudo.com/d/Kronos2022