fhánaのいろいろな音を担当している、kevin mitsunaga(ケビン ミツナガ)です。自分の音楽のルーツはどこにあるのか? この連載の原稿を書く機会をいただくたびに毎度自問自答を繰り返しています。もちろんルーツは一つではなく、さまざまな音世界が折り重なって自己が構築されているのですが、やっぱり大部分を占めているのはしっとりとした浮遊感のあるイージーリスニングな楽曲なんだということに収束します。緻密な音作りが光る、壮大なサウンドスケープはいつだって僕の生活の側にそっと寄り添っていました。そんなわけで、今回はそんな楽曲を紹介します。
まずは1曲目、田所あずさ “箱庭の幸福”。PENGUIN RESEARCHのギタリストである神田ジョンさんが作編曲している楽曲ですね。普遍的なポップスのキャッチーさと、繊細でエッジの効いた音作りが絶妙に調和した大変耳に心地良い楽曲です。ミュージックビデオの完成度も非常に高く、ロケーション、演出、画の美しさなど、非常に丁寧な仕事が窺えます。これはぜひビデオも観ていただきたい。
続いて2曲目、lasahとLemmの共作 “the ghost next door”。美しく繊細なピアノと電子音、そしてポエトリー・リーディングが心地良くパズルのように組み合わされた楽曲。まるで日陰に細く光が差し込んでいるような、憂いと儚さとほんの少しの希望を感じられます。少し前衛的な印象が強めかなと思いきや、サビのメロディーが非常にキャッチーでそのコントラストが絶妙ですね。
3曲目は、上田麗奈 “sleepland”。浮遊感のあるメロディーと美しいストリングスがこれでもかと涙腺を揺さぶってくる楽曲です。作編曲はrionosさん。この方の楽曲はどれも心地良い浮遊感を纏っていて特徴的ですね。なんて言えばいいのか、こういう音像の楽曲って本当に安心します。それは柔らかな抱擁のようでもあり、海中で感じる浮力のようでもある。何も考えず身を委ねていいんだ、と言われている気がします。
さて、いかがだったでしょうか。今回はやや内省的な内容となりましたが、もともとこういうことを考えるのが好きなので非常に筆が進みました(笑)。また次回お会いしましょう! それじゃ、またね!
kevin mitsunaga
サウンド・プロデューサーの佐藤純一とyuxuki waga、ヴォーカリストのtowanaと組んだユニット、fhánaのいろいろな音を担当。fhánaにとって4年ぶりのオリジナル・アルバムとなる『Cipher』(ランティス)が大好評リリース中! 大盛況の中野サンプラザ公演でスタートしたツアー〈fhána Cipher Live Tour 2022〉は7月の新潟~大阪~名古屋へと続いていきます。詳細は〈http://fhana.jp/〉にて。