喪失感と哀切の滲んだ前作を経て、この10作目は不安定で不寛容な時代に、確かなものを見い出すような言葉が印象的だ。たおやかで透徹した歌声と、ピアノを軸にわずかな音数で心象を豊かに描く様は不変ながら、ときに柔らかな電子音を纏い、オーケストラルに音を重ねる差し色の入れ方も鮮やか。西岡恭蔵“Glory Hallelujah”のカヴァーは生きとし生けるものへの讃歌として、静かに強く鳴り響く。