定番ブレイクビーツにしてソウル系サントラの名盤、ジョニー・ペイト『Shaft In Africa』
――では、3枚目のアルバムをお願いします。
田之上「ジョニー・ペイトが手掛けたサントラ『Shaft In Africa』(73年)です。

やっぱりタイトル曲ですよね。このドキドキ感。70年代ブラックミュージック独特の雰囲気が感じられます。あの有名なブレイクビーツ集『Ultimate Breaks & Beats』(89年)にも入っていたド定番で、みんなかけまくってました……っていうところからこのアルバムに入って、ソウル系のサントラを聴き始めました。
2000年代には、ジェイ・Zの“Show Me What You Got”(2006年)でジャスト・ブレイズがうまく使ってましたよね」
田中「このサントラを聴くと勝新太郎を思い出すな(笑)。あと、これはオーケストラが、いかにも映画音楽らしいというか」

――映画のオープニングで流れるフォー・トップスの“Are You Man Enough”も名曲です。
田之上「このイントロの雰囲気もいいのですが、ボーカルが入ると一気にグッときます。
フォー・トップスってモータウンのイメージが強いですが、これはダンヒル/ABC時代の作品です」
――今回フォー・トップスは、ダンヒル/ABC時代の『Keeper Of The Castle』(72年)も再発されました。モータウン時代よりダンヒル/ABC時代のトップスが実は好きという人、自分も含めて結構多いです。
田之上「そうなんですよ! モータウン時代の曲はポップスとしてのイメージも強いですから」
J・ディラ ネタだけじゃない衝撃、エディ・ケンドリックス『People... Hold On』
――では、最後は田中さんです。まず、ソウルとの出会いからお願いします。
田中「もともとはレゲエやダブといったジャマイカの音楽好きで。あの音楽ってカバーが多いですが、最初はレゲエで知ったけどオリジナルはソウルだったりして、レコードを買っていきました。あとヒップホップのネタだったりとか。だから、好きな音楽の中にソウルミュージックがあったという感じですね」
――では、田中さんの推薦盤を3枚お願いします。
田中「1枚目はエディ・ケンドリックスの『People... Hold On』(72年)です。エディ・ケンドリックスで一番好きなアルバム。

このアルバムといえば、ディアンジェロがカバーした“Girl You Need A Change Of Mind“や“Date With The Rain”がトピックだとは思うんですけど、僕は”My People... Hold On“に衝撃を受けて。J・ディラのネタでもありますが、サンプリングして再構築しなくてもニューソウルというか、ネオソウルというか、その雰囲気が出ている気がします。それまで聴いていたソウルとちょっと違うなと思って。
あと、顔もカッコいい(笑)」
――実際にエディ・ケンドリックスは女性ファンが多くて、ケンドリック・ラマーのお母さんもエディのファンで、息子にケンドリックって名前をつけたんですよね。
田中「エディ・ケンドリックスは他のアルバムもムーディーなんですよね。色男っぽい妖しさがあって(笑)。
ニューソウルっぽい感じなんですけど、でもオーソドックスなソウルも入っていて、結構幅広い。このアルバムは裏ジャケットでアフリカを意識しているのも興味深いです」

――表のジャケットではブラック・パンサーを意識してますよね。
田之上「ヒューイ・P・ニュートンでしょうか。ファンカデリックにも同じようなジャケがありましたが、このアルバムは72年だからニューソウル的で、政治的なアルバムでもあるんですよね」
――ディアンジェロ版の“Girl You Need A Change Of Mind“も、100万人大行進をドラマ化したスパイク・リー監督の映画「ゲット・オン・ザ・バス」(96年)のサントラに収録されてましたし。ただこの曲、〈ウーマンリブの運動はもういいから、それより俺のことに目を向けてくれ〉っていう歌で、政治的なのかどうかよくわかりません(笑)。“Date With The Rain”はジェイミー・プリンシプルがカバーしてたりして、ゲイディスコ〜ハウスの文脈で人気が高いです。ともあれ、ディアンジェロ、J・ディラ、ケンドリック・ラマーといったキーワードでも引っかかってくるアルバムでありアーティストなので、そこらへんでピンときた方は手にとって欲しいですね。