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【IN THE SHADOW OF SOUL】第120回 一本道のワン・ウェイ

【IN THE SHADOW OF SOUL】第120回 一本道のワン・ウェイ

80年代を代表するファンク・バンドのひとつとして、後世の音楽に絶大なインスピレーションを与えてきたワン・ウェイ。まさかの復活アルバムをきっかけに、改めてその不可逆的な軌跡を辿ってみよう!

 ファンク・バンドの歴史を語る時、筆頭に挙がる名前ではないかもしれない。が、〈一方通行〉を名乗るこのデトロイト出身のグループは、ある一曲で特別な存在となっている。その曲は“Cutie Pie”。82年にR&Bチャート4位を記録したキレ味鋭いヘヴィー・ファンクで、Pファンクやザップの曲と並んでGファンク系のアーティストにサンプリングされてきた。近年は、それを踏まえてアンダーソン・パークやマーク・ロンソン、ブルーノ・マーズ、タキシードらが引用、あるいは着想を得たりしている。そうして楽曲の再評価が続く一方、当人たちは四半世紀以上ワン・ウェイ名義のアルバムを出してこなかったが、シックやチェンジが〈ブギー〉と称されるディスコ・ブームに触発されて復活作を出したように、ついに長い眠りから覚めた。新作『#New Old School』が届けられたのだ。

ONE WAY #New Old School Expansion/ディスクユニオン(2019)

 キャリアは長いが、“Cutie Pie”をワン・ウェイの完成形と見るなら、そこに至るまでは進化と改名の連続だった。スタートは70年代前半にデトロイトで結成されたアル・ハドソン&ザ・ソウル・パートナーズ。当時はバンドというよりヴォーカル・グループ的なスタイルで、溌剌とした声のアル・ハドソンをリード・シンガーに据え、アトコから“My Number One Need”などのモダンなシングルを75~76年にリリース。後にADKというプロダクション・チームを組むアル・ハドソン、デイヴ・ロバーソン、ケヴィン・マッコードの3人はこの時点で揃っていた。やがてABCに移籍したグループは、77年の『Especially For You』からは、引き続き後見人のアル・パーキンスをブレーンとし、ギャリー・グレンらの助力も得て、同郷のエンチャントメントやフローターズにも通じるアーバンなソウル・アルバムを出していく。

 ABCがMCAに吸収されるタイミングで発表した79年作『Happy Feet』ではアリシア・マイヤーズを迎え、〈アル・ハドソン・アンド・ザ・パートナーズ〉と改名しているが、女性リードを加えて音楽的な幅を広げていこうという目論見だったのだろう。この時に誕生したのがディスコ調の“You Can Do It”で、同じ年に彼らはその長尺版を別のアルバムに再録して連続性を示しながら、〈ワン・ウェイ・フィーチャリング・アル・ハドソン〉として再出発している。同名義での2作目(80年)からは“Pop It”というダンサブルなファンクと“Something In The Past”のようなスロウが人気を集め、この後シンプルに〈ワン・ウェイ〉と名乗るようになったのは、過去の実績にしがみつかず、80年代ならではの新たなファンクを創造しようという意気込みの表れだったのかもしれない。81年の“Push”や“Pull Fancy Dancer / Pull”はまさに新たなファンク感を提示した曲で、70年代に活躍した人力ファンク・バンドが打ち込み機材の発達によって持ち味を失っていくなか、彼らはエレクトロニクスを活用し、それをバンドの美点とした。現在、ブギー/ファンクの文脈でワン・ウェイの曲が愛される理由もそこにあるのだろう。

 これらの曲、特にファンクにセンスを発揮したのがケヴィン・マッコードだ。彼は、ソロ活動を始めたアリシアに代わって加入したキャンディ(ス)・エドワーズと結婚する一方、アリシアのソロ作でも腕を揮った。そして、アル+デイヴ+ケヴィンの3人は、ワン・ウェイにおけるサウンドメイクの要としてADKを結成。アル・パーキンス夫人のアイリーンと組みながら、軽快にして頑強なボトムのサウンドを作り出し、『Fancy Dancer』(81年)以降の数作でグループのシグネイチャーを確立する。こうして誕生したのが、先述の“Cutie Pie”だったのだ。

 ADKは、地元デトロイトの先輩プロデューサー・チーム、HDH(ホーランド・ドジャー・ホーランド)も意識していたのだろう。外部の仕事にも手を伸ばし、オリヴァー(・チータム)やパーキンスの姉妹であるヴィー・アレン、メンバーのキャンディのソロ作にも関わった。80年代中期にはケヴィンが独立するものの、以降は86年作『IX』にてエウミール・デオダートを招くなどしながらもアル&デイヴが中心となり、バート・ロビンソンの作品もプロデュース。しかし、その後はケヴィン主導の同窓会的なアルバムが出たのみで、ケヴィンやアルのソロ・プロジェクト、2011年にUKから届けられたアリシアのソロ作を別にすれば、バンドとしてのレコーディング活動からは遠ざかっていた。

 今回ワン・ウェイ・フィーチャリング・アル・ハドソン名義で発表した『#New Old School』は、アルとデイヴの主導によるアルバムとしては、キャピトルに残した88年作『A New Beginning』から31年ぶりの新作となる。現在は8人体制で活動しているようで、ヴォーカルのアル、プロデュース/ミックスを担当するデイヴの他には、生え抜きの鍵盤奏者であるジャック・ホール、キャピトル盤にジーネット・マック名義で参加していた女性シンガーのジーネット・ジャクソンらが名を連ねている。ADK周辺で活動していたクレイグ・レーンは、近年スラム・ヴィレッジの諸作に関与している鍵盤奏者だ。また、現メンバーではないが、80年代後期のワン・ウェイを支えたヴァルデス・ブラントリーも演奏やソングライティングに関与してモダンなセンスを注入。ケヴィン・マッコードの名前がクレジットされた曲もあったりする。トークボックスを用い、PファンクやJB関連のサンプリング音源も多用した楽曲は90年代初頭のレア・グルーヴ感覚で70年代ファンクを再現したような趣で、初期ワン・ウェイへのセルフ・オマージュ的な“Let's Dance”もそんな一曲と言っていい。

 Gファンク方面からの再評価に応えたような“We Won't Stop”などではアンプ・フィドラー絡みの女性トリオ、デイムス・ブラウンのテレサ・マーブリーも声を交えており、これはかつてアリシアやキャンディの女声を活かした彼ららしいアプローチとも言える。デトロイト繋がりでは、かつてウォズ・ノット・ウォズに参加していたデヴィッド・マクマレイがサックスを吹いたスムース・ジャズ調の曲もあるが、これやアルがロナルド・アイズレーを真似て歌う“Hard To Walk Away”を含めて、スロウ・バラードが総じてレイト80s~アーリー90sのR&B的なムードなのは一周回って2019年らしい。〈新しいオールド・スクール〉を謳った本作『#New Old School』のタイトルには、オールド・スクールなままでも通用する時代に戻ってきたという意味を込めているのではないか。一方通行……いや、一直線に己のファンク道を歩んできたワン・ウェイなのだ。 *林 剛

アリシア・マイヤーズの2011年作『Peace Of Mind』(Love Town)

 

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